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第11話 続・嘘と真実

嫁騒動もクライマックスでございます。最近はシリアスが続いておりますが、お付き合いのほどよろしくお願いいたします☆

「アリス〜?どこ〜?」

 外の後期を吸いに出たきり1時間たっても戻って来ないアリスを心配し、リアンは中庭に探しに来た。

「あれ・・・?」

 アリスをなだめながら。

 アリスを探して来たらしい男の姿を見つけ。


 あの人・・・どっかで・・・?


 裕馬の視線に気付いたのか、リアンが寄ってくる。

「そこ?」

 ひょこっとリアンが顔を出す。

「・・・?アリス?」

 明らかに様子のおかしいアリスに、リアンは怪訝な顔をし裕馬の方を向いた。

「・・・あれ・・・?君は・・・」


 新たな、嵐の予感・・・。



「リアンさんから一通り離しは聞きました」

 会場の奥のバルコニーで、何やら深刻な話をする一団。アリスはリアンによって部屋へ戻された。まだきっと、泣いているのだろうけれど。一人にして欲しいと言われ、リアンも会場へ戻って来た。

 裕馬はコホンと咳払いをすると、一同を見据えて言った。

「何で泣いてるんですか」

「そのまんまやん・・・」

 小さく双子が突っ込む。

「僕もそれが知りたいんだけど」

 はぁ、とため息をつきバニーが答える。

「今来たばっかで知るかよ!!」

 裕馬はそのバニーの態度につっかかる。

 何だかもう、ピリピリした雰囲気が漂う。

「とにかく、帰りたいんだけど」

 裕馬は苛立ちながらそう言った。こんなところに長居する必要などない。まして男の嫁になるなんて、わけがわからない。

「そんな・・・」

「待ってくれ!裕馬くん!まだ・・・」

 アリスを連れて今すぐ帰ると言う裕馬に、マスターとリアンが声をあげる。

「そうやって・・・!!」

 裕馬は大きな声を出すと一度言葉を切って、感情を抑えリアンに答える。

「そうやってアリスを追い詰めないでください。アリスがそういう選択が嫌いなの知ってるでしょ?リアンさん」

 そのセリフに、リアンはぐっと詰まる。

「・・・どうする?あと3時間だぞ」

 ガーデンがクイーンたちを見やりながらそう言う。

「いーじゃん。別に。アリスが候補からはずれりゃアリスと俺は帰るんだから」

 むしろさっさと時間よたて、と裕馬は思う。

「そうだが・・・」

 

 誰もがこの不測の事態をどうしたものかと考えあぐねる。

「どぉしたの?みなさんお揃いで〜」

 そこへ、相変わらず人をバカにしたような笑みを浮かべたレンが現れる。

「・・・」

 それに対し、バニーは冷ややかに見つめるのみで返事を返さない。

「・・・何だよ。その目は。アリスにはあんな顔するのに」

 チッとレンは舌打ちをする。

「何の用だ?レン」

 イライラした様子でクイーンが口を挟んだ。

「・・・別にィ。アリスはどうしたのさ。い〜っつもあんたらといたじゃん?」

「お前には関係ない」

 含むようなレンをバニーはピシャっとはねつける。レンの目が険を帯びる。

「レン」

 その様子をいつから見ていたのか。ソウが割って入ってきた。

「・・・何だよ」

「・・・あまり悪巧みはするものじゃないよ」

 ソウのその言葉に、全員が一斉にレンを見る。レンは、わずかにたじろく。

「・・・何のこと・・・」

 

 ガンッ

 

 いつものにやけた顔で。ごまかそうとしたレンを。バルコニーの柵に押さえつけたのは・・・。

「バニー・・・!」

 ぎりぎりと、レンを締め上げるその様相は。怒り以外の何物でもなかった。


「アリスに・・・何をした・・・!!」

「何・・・だよ・・・!」

 レンの顔に恐怖が浮かぶ。

「言った方が身のためだと思うが」

 そのバニーに乗じるように。冷たい瞳で、クイーンが言った。

「く・・・す、少し・・・!からかっただけだろ・・・!?」

 最後の強がりで、はっと鼻で笑いながらそう言ったレンの顔を、バニーが容赦なく殴る。

「アリスに、何を言った」

 その顔は。背筋が凍るような冷たさと。怒りをたたえていた・・・。



「ぅ・・・ぇ・・・」

 アリスは止まらない涙を何度もぬぐいながら。枕に顔をうずめた。


 何でこんなに悲しいの?

 何でこんなに涙が出るの?


 もう、何も考えたくない。


 何も信じられない。


 その時、ばたん、と音がして部屋に誰か入って来た。

 その音に、アリスが振り向くと。

「・・・アリス・・・」

 走って来たのか、肩で息をしているバニーがいた。

 バニーを見ると、アリスの頭の中でレンの言葉が反芻する。

「や・・・だぁ・・・」

 アリスの瞳から、さらに涙が流れ出る。

「アリス・・・!レンの言ったことは・・・」

「もう嫌だ・・・!!何も聞きたくない・・・!!」

 アリスは耳を塞ぐ。


 もう、何も聞きたくない。

 何が真実で。

 何が嘘かなんて、わからない。


 そんなアリスを、バニーは抱きしめて自分のもとへと寄せる。アリスの体が強張る。

「アリス、僕はアリスだけを愛してるよ」

 耳元で囁く、優しい言葉。

 それなのに、今はその言葉が刃のように胸に突き刺さる。

「・・・嘘っ・・!!だって・・・レンが・・・!!」

 

 私を本当は愛していないんでしょう?

 私を、利用したいだけなんでしょう?

 ねぇ、お願い。

 もう、私をかき回さないで。

 


「アリスは、僕とレンのどっちを信じるの?」

「だって・・・!」


 誰の言うことが真実で。


 誰が誰を愛しているの?


「信じて、アリス。僕はアリスしか愛していない。レンなんて、抱いてないし、抱く気にもならない。・・・アリス以外に、欲しいものなんてない」

 バニーの腕から逃れようとするアリスを、バニーはより一層強く抱きしめる。

「ふ・・・ぅ・・・」

「ごめんね。アリス。一人で悩ませてしまって」


「大好きだよ・・・アリス」


 バニーは、アリスの耳元で。まるで子どもをあやすように。優しく、優しく、言葉をかけ続けた。



 一方。別室には。裕馬、リアン、マスターがいた。

「アリスは前にもあんなふうに泣いてた」

 裕馬は、ポツリと語りだす。

「親の・・・離婚の時?」

「そうです。アリスは、どっちも好きだったから・・・どちらに付いて行くのかと選択を迫られて。最後まで悩んでた。本当に、見ていて切なかったですよ・・・」

「最終的には母親についていって、その2年後にうちの親父と再婚・・・。ま、うちもバツ1のコブ2つ付きだったけど」

 そう話したリアンに、裕馬以外のみんなが驚く。

「え!?じゃあ、アリスさんとリアンさんて義兄弟なんですか!?」

「そうよ〜。一緒に暮らしたのはほんの数年だけどね。こっち来ちゃったから」

 苦笑しながらリアンはそう言った。

「・・・あんな上体のアリスを・・・あいつに任せといて大丈夫なのかよ」

 裕馬はぶすっと言った。

「大丈夫でしょ。あの子は、誰よりバニーを大切にしてるから」

「・・・んなの・・・わかんねーよ・・・」


 仮にも、アイツは。どんな理由があったとしても。アリスを不安にさせたのだから・・・。


「こっちは終わったぞ」

 ばたんと、扉が開きクイーンたちが入って来る。

「帰ってもらった?」

「あぁ。まぁ、無茶を言うのはいつものことだし、こんな事態だからな。結果は追って報告すればいいさ。結婚しますっつー宣言とともにな。だいたいがこういうことでもないと国の人間と会わないからやってる形だけの式だからな」

 クイーンやガーデンは、来賓を帰して回っていた。もう、12時となっていた。本来ならば、12時ちょうどに、バニーの結婚相手を発表する予定であった。しかし、今回、こんなこととなったためとりあえずお開きという形をとったのだった。

 

「クイーン、あのアホはどないするん〜?」

「海にでも流す〜?」

 あとから入って来たホワイトとブラックは楽しそうに言う。アホとはもちろんレンのことである。今は、トランプ兵により拘束され、別室に換金されている。

「アリスに処分させよう」

 クイーンはしばし考えたあと、そう言った。

「そうだな」

 それがいいだろう、とガーデンも相槌をうつ。

「お話中、すみません」

 そこへ、ソウが入って来た。

 ソウとケイゴはまだ残ってもらっていたのだ。

「すまないな。残ってもらって。で?どうした?」

 クイーンが促すと。

「・・・アリスさんは、どういう決断を下されるのでしょう・・・?」

「・・・もう少し、待ってもらえるかな。ソウ」

 その質問に、リアンが答える。

「ケイゴ、待つよ〜〜!!」

「えらいね。ケイゴくんは。はい、アイス食べる?」

 にこやかお兄さん(お姉さん?)はそう言ってケイゴにアイスを渡した。

「みなさんも、紅茶でも飲んで一息つきましょう」

 


「アリス、落ち着いた?」

「・・・うん・・・」

 アリスの涙は、ようやく止まったようだった。

「アリス、愛してるよ」

 バニーはアリスの目を見て、優しくそう言った。

「僕はね、アリス。アリスがどこの世界の人間かなんて関係なく、アリスに惚れたんだよ」

 一言、一言、バニーは話し始める。

「子どもの頃からの婚約者も、国のことも、僕にとってはどうでもいいんだ。ただ、アリスを愛しただけなんだよ。王家の人間が、外来者を結婚相手に選ぶことが多いのはね、損得なしで一緒にいてくれるからなんだよ」


 国も、権力も、関係なく。

 そこにあるのは、相手を思うその気持ちだけ。


「だから・・・僕がアリスを好きな気持ちは、本当なんだよ」

 バニーのその言葉一つ一つが、アリスから不安を取り除いていく。

「アリスは・・・僕のこと・・・」

 バニーはそこまで口に出してそれ以上は黙ってしまった。

 もし、アリスに嫌いだと言われたら?

 そう考えると、続きが出ない。


 どれだけ相手を思っても、相手から思ってもらえないこともある。

 それに、アリスには、元の世界に家族もいる。友達もいる。


「・・・だよ・・・」

 アリスは、ぽつりと言った。

「・・・え?」

「バニーを信じる。だから・・・ずっと、俺を好きでいて・・・。俺も・・・バニーのことが、好きなんだと・・・思うから・・・」

 今はまだ、断言ができないけど。

 あなたの言葉にこんなに一喜一憂するのは、きっと・・・。

「アリス・・・!」

 バニーは、そのアリスの言葉に思い切りアリスを抱きしめる。

「ずっと、僕はアリスを愛し続けるよ・・・」

 その抱きしめる腕は、かすかに震えていた。

 アリスは、その心地のよい胸の中で、いつの間にか眠りについていた・・・。



 翌日。

 それはもう、超がつくほどいいお天気だった。

「・・・まだ、目、はれてるなぁ・・・」

「しかたないよ」

 鏡を覗いていたアリスの後ろからバニーがひょっこり現れる。

「・・・・!!」

 それだけのことなのに、アリスは赤くなってうつむいてしまう。

「アリス」

 その様子を見ながら、バニーは軽く笑いながら、アリスを呼ぶ。

「な、何?」

 そう言いながら、振り返ると。ちゅっと、バニーに軽くキスされた。

 アリスはゆでだこになりながら口をパクパクさせている。

「クイーンたちが待ってるよ」

 優しく微笑むバニーに差し出された手をとって。アリスとバニーはクイーン達の元へ向かった。この時、アリスは一つのことを、心に決めていたのだった・・・。


                                 〜続〜



 



愛してるを連呼するバニー・・・。ある意味お前はすごいよ!!何とかハッピーエンドの方向ですね!(何とかって・・・?)だんだん愛の国っぷりを発揮してきております。たぶん、嫁騒動は次で終わると思います。続きを楽しみにお待ちください☆

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