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第10話 嘘と真実

もう10話目になるのですね。早いものです。ではでは。嫁騒動の続きをご覧ください。

「アリス、心配したよ。大丈夫?」

 広間へ戻ると、バニーが駆け寄って来た。心配そうに、アリスを見る。

「うん・・・」

 そんなバニーに、アリスは笑顔を向けたが、どこかぎこちない。


 笑顔って、どうしたらよかったっけ。


 俺は、うまく笑えてる?


「アリス!!」

 どん、っと背を押される。後ろを振り返ると、リアンがいた。

「・・・そう固くなりなさんな」

 アリスの表情を見て、リアンは困ったように笑う。

「自然と答えは出てくるよ」

 バニーに聞こえないくらい、小さな声で。

「リアン・・・」

 アリスは、なぜか胸にこみ上げてくるものを感じた。暖かいような、苦しいような。

「それより、気をつけなよ」

 リアンは、笑みを消し真面目な顔をしてアリスに向き直る。

「俺たちとアリスが仲がいいんで、焦ってる奴もいるから」

 ちらりと、リアンが部屋のすみを見やる。その視線を追うと、そこにはアリスのほうを睨むように見つめるレンがいた。レンは、アリスと目が合うと、きびすを返してどこかへ行ってしまった。

「・・・レン?」

「他の2人も、何考えてるのか・・・」

 クイーンの近くで来賓と話をしているソウ。会場を駆け回るケイゴ。

 

 国家としてではないが。

 この世界での地位と、このバニーの妻になるということが大きな意味を持つのだと、少しばかりアリスは感じてきた。

 大きな競り合いもなく、権力抗争もないのは上に立つものの裁量なのでは、と。クイーンの、この世界のトップに立つ王家の物の力なのだと。追随や小競り合いの許されない世界。すべては、己の意思のみが頼りとなる。そんな世界なのではないかと、アリスは感じていた。


 そんなことを、うっすら考えていると。人ごみの中からマスターとガーデンが現れた。

「アリスさん、大丈夫ですか?」

「うん、マスター。もう大丈夫」

 心配そうに駆け寄るマスターに、アリスは笑って答える。

「・・・まだ少し顔色が悪いぞ・・・」

 ガーデンは、アリスの顔を見てするどくそう言った。

「・・・少し、外の空気を吸って来るよ」

アリスは小さくそう言うと、再び会場を後にした。

「・・・」

 その後ろ姿を、切なそうな表情で見つめるバニーに。

「・・・最後の選択だ。邪魔はするなよ・・・バニー」

 リアンは、小さくそう言った。


 あの会場にいるだけで、息が詰まりそうになる。

 

 アリスは、賑わう館をあとにし、涼しい風が心地よく吹く中庭へと出た。

 いまだ、その心は晴れず。

 どうしていいのか、わからず。いっそ、誰かに強制的に決めて欲しいくらいだった。


 最善の、道を。


「こんなとこで、何してんのさ」

「・・・!レン・・さん」

 顔を上げると、木にすがりにやにやと笑うレンがいた。レンは、木から離れアリスの方へ歩み寄る。

「ねぇ、あんたバニーの何なの?」

 レンはアリスの前で足を止め、低くそう言った。

「俺はねぇ、ガキの頃からずーっとバニーの正妻になるって決まってたんだよ」

 だって、彼は婚約者なのだから。

「あんたはさ、遊びなんだよ」

 クスクスと、耳元で不快な笑い声がする。

「好きだとか、愛してるだとか、あんたも言われたんだろ?」

「・・・あんたもって・・・?」

 頭がぐらぐらする。

「俺も言われたんだよ」

 世界が、崩れる音がした。

「ていうか、何で外来者をあんなに熱心に王家の人間が身内に入れようとするかわかる?こっちのことは何も知らないうえに、こっちにきちんとガキの頃からの婚約者がいるにも関わらず・・・」

 お願い、もう、しゃべらないで。

「王家の人間は、外部からの勢力を入れるのが嫌だからさ。権力争いも起きかねない。その点、よその世界から来た人間ならその心配もない。王家の血は守られて、争いも起きない」

 そう、なぜなのか、ずっと不思議に思っていた。

 何で、ぽっと出の俺をみんな受け入れているのか。


 まして。


 一世界の王子の嫁に迎えようなど・・・。


「ただ、それだけなんだよ。あんたの価値は。だから、バニーはお前を嫁にしようとしてんのさ」

 呆然と、レンの言葉を受けるアリスに、レンは笑いながら続ける。

「本当はね。バニーは俺のことが好きなんだぜ?」

 勝ち誇ったような、笑み。

「あんたがいない間に、よろしくヤッてたんだよ・・・」

 シャツのボタンをはずし、眼前につきつけられたのは。

 無数の赤い印。

「俺のことを、本当は。・・・一番に愛してるんだぜ?」


 アリスの頬を、知らず涙が伝う。

 

 その様子を、レンは満足そうに見据えるとアリスを一人残してその場から去っていった。


「・・・そだ・・・」

 アリスは、立っていられなくて地面に膝をつく。

「うそ・・・!」

 

 だって、愛してるって言ったのに。

 好きだって、言ったのに。


 全部嘘だったの?

 全部、国のためだったの?


 全部・・・。


 涙がボロボロとこぼれる。

「も・・・わか・・ね・・・!」

 何が真実で、何が嘘?


 ねぇ、誰か教えて。

 

 誰か、助けて。



 ねぇ、誰か・・・。



 ドクン。


 そこは、自分以外誰もいない教室。部活が終わって、帰ろうとして。忘れ物に気付いて、戻って来たのだ。

「・・・?何、だ?」

 誰もいない、教室。アリスのいなくなった、世界。もう、早2ヶ月がたっていた。誰もが彼の存在を忘れ。彼の所有物は無へと還った。


 ドクン、ドクン。


「何だ・・・?」

 言いようのない、不安。

 なぜか、胸騒ぎがする。こんな時は、いつも・・・。


「ア・・・リス・・・?」


 

 どうしたらいい?

 バニーは、俺を愛していなかった?



「アリス・・・なのか・・・?」



 誰でもよかった?

 向こうの世界の人間なら、誰でもよかった・・・?



「アリス!!?」



 誰か・・・タスケテ・・・。



 ドクン。


 


 ドサ。

 すぐ横に、何かが落ちる。アリスは驚いてその音の先を見る。

 すると、そこには・・・。

「いって・・・」

「裕・・・馬・・・?」

「あ?」

 裕馬は頭をさすりながら、呼ばれた方を向く。そこにいたのは。今まで、忘れることのなかったアリスがいた。

「アリス・・・!!?」

 今度は裕馬が驚く番である。


 ナンデ?

 ドウシテ?


「裕・・・!」

 裕馬を見て、安心したのかアリスは再び泣き出す。その涙は止まることなく。

「・・・やっぱり、泣いてた」

 ふうっと、裕馬はアリスの肩をポンポンと叩く。

「お前泣くとさぁ、何か胸騒ぎがすんだよなぁ。ホラ、もう泣くなって」

「・・・・っ」

 それでも、アリスは泣き止むことなく・・・。


「・・・まぁ、好きなだけ泣いとくか」

 諦めたように呟いた後。



「とりあえず・・・ここがどこなのか知りてぇ・・・」


 あたりを見渡しながら。裕馬はそう、ため息をつくのであった。


                                    〜続〜


 

裕馬登場。これからどんな風に動いてくれるのか。他の候補者達の動向も気になる所ですね!しかし・・・アリスがだんだんボロボロになっていくなぁ(お前が言うな)。続きはなるべく早く書きます〜気になるとこで終わっているので(^^;)
この間はメッセージも頂きました〜☆ありがとうございます♪「アリス」を楽しみにしていただけていると思うと本当に嬉しくなります!!読者の皆様、遅々としていますが、どうぞこれからもよろしくお願い致します!

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