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光 -ひかり-  作者: 美波
第六章 長い夜
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第39話 疑問

 積もる雪を見るのは何年ぶりだったかな。

 降っている雪を見ることはあっても、歩いた時に足が埋もれるくらいに積雪した雪はここ数年見ていなかった。


 真っ暗な空から真っ白な大粒の雪がしんしんと降り続いて、傘を差していないとどんどんと自分の頭に雪が積もっていく。


 口では困ったな、どうしようって呟いていたけど本当は──


 これから一人で家に帰らなきゃいけないと思うと寂しくて。

 もっともっと雪が降って帰れなくなって、もっと一緒にいられたらいいのにって思った。


 でもこんなこと考えてるって知れたら嫌われると思って、絶対に口に出して言うことは出来ないんだ。




【 光-ひかり- 第六章 長い夜 】




 クリスマスが終わると一気に街はお正月ムードになる。

 スーパーには鏡餅や、正月料理の食材が並んで気が早いことにお正月の音楽が流れているところもあった。

 正月休みまでの出勤もあと残りわずか。

 久しぶりにあの二人と三人で食事をすることになった。


「心ちゃん、お疲れ様!」

「加奈さんも、お疲れ様です!」


 加奈さんに誘われて会うことになったのだけど、どうやら加奈さんがわたしを誘った理由は早瀬さんがわたしに会いたがっているとのこと。

 なんとなく話の内容は分かるけど。直接、誘ってくれればいいのに。鈴村さんとのことかな?


「早瀬さんは?」

「まだ来てない。アイツはまだ仕事終わんないでしょ、あとで来るよ。先に飲んでよう?」

「あ、はい」

「あ、修司も誘っておいたから、来れたら後から来るって」

「そ、そうですか……」


 加奈さんはメニューを見ながら「心ちゃんはどうする? 今日は飲む? 止めておく?」と言っている。


「加奈さんってお仕事今月いっぱいでしたっけ」

「うん。あと二日。なんかまだ実感沸かないな~」


 加奈さんは結婚を機にキリのいい今月いっぱいで仕事を退職する。


「仕事は続けても良かったんだけどね。でもうちの会社古いからさ、今時有休も、子供とか出来たら産休だって取れないしさ。制度はもちろんあるけど使う人いないから実際ないのと同じ」

「まだまだそういう会社、多いですよね」

「就職失敗したー」

「同じく……」


 店員を呼んでドリンクの注文を済ませると加奈さんがわたしの胸元を指さした。


「それ、クリスマスに彼氏にもらったの?」

「え? は、はい。どうして分かるんですか!?」

「だって初めて見るもん。結構、心ちゃんのファッションはチェックしてるよわたし」

「え、こわーい!」

「冗談だよぉ」

「あはは」

「可愛いよね、それ。いいなぁ。わたしも欲しい。修司ってさ、アクセとか選ぶセンスないんだよねぇ~だからいつもわたしが自分で好きなの選んじゃう」

「そうなんだ。修ちゃんが。へぇ~」


 ……あれ?

 今加奈さん「彼氏」って言ったよね?

 どうして加奈さんが知ってるの?


「えっ、今日佐橋さんも来るの!?」


 いきなり話に入ってきてわたしの隣に誰かが座ったと思ったら、早瀬さんだった。


「心ちゃん久しぶりー! 元気だった?」

「は、はい。びっくりしたぁ……」


「早いじゃん、仕事もう終わったの?」

「休日出勤までさせられてさ。もう、今日は早く帰ってやろうと思って抜け出してきた」

「い、いいんですか……?」

「うん、いいの。明日からまた頑張るから」


 早瀬さんはすぐに通りがかった店員さんを呼びとめると「生一つ」と言って注文を済ませた。


「何の話してたの?」

「心ちゃんのクリスマスの話!」

「あ、それ俺も聞きたい!」

「あの……」


 わたしも、早瀬さんにも聞きたいことが。

 どうして加奈さんが、鈴村さん……を知っているかすら分からないけどわたしの彼氏の存在を知っているのか。

 考えられるのは早瀬さんから伝わったとしか考えられないけど、そもそもどうして早瀬さんも知っているの?


「心ちゃんは彼に何をプレゼントしたの?」

「えっと。仕事ですごく目を酷使するって聞いてたから、眠る時に使う癒し効果のあるアイマスクと……」

「アイマスク!? ……を、クリスマスに? そ、そう。喜んでくれた?」

「使ってみるーとは言ってくれました」

「優しいね。いいなぁ~」

「??」


 ドリンクが届いて乾杯を済ませると真っ先に加奈さんが口を開いた。


「でもまさかさ、早瀬の同僚と心ちゃんがくっつくなんて……わたし想像もしなかったよ」

「俺だって普通に二人が顔見知りだったって知った時は」

「……あの!」


 チャンスだと思って話しに割り込んだ。

 二人の視線がわたしに集中した。


「あの、どうして加奈さんが、ううん。早瀬さんも……その。わたしと、鈴村さんの事知ってるんですか!?」



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