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そんなことを考えていると、堀内は震える声で言った。
「ヤベぇ…超嬉しい……」
見ると手の甲で口を塞いでいる堀内の顔は月明かりだけでも真っ赤になっているのが分かった。
嬉しい?
堀内が喜んでいるの?
「ほ…ほんと?」
私ももう泣きそうだ。
堀内が急にはしゃぎ出して、私をギュッと抱きしめた。
「きゃ!!堀っ!!!!」
「信じらんねー!ほんとに!!?」
急なことでビックリして受け入れるのに少し時間がかかった。
つまりは私たちって……
嘘!!
嘘!!!
これ、夢ぢゃないよね?
「俺も好きだ!」
堀内が私の目をまっすぐに見て言った。
しばらく二人で興奮していたけど、落ち着きを取り戻し座った。
「一年の時からずっと好きで…あの時ここで描いてたのは堀内だよ。サッカーしてるときの姿が凄く輝いててかっこよくて、どうしても描きたかったの」
私は堀内に話した。
「そっか〜!そうだったんだ!!よかったぁ!」
堀内は安心したと言わんばかりの表情で嬉しそうに言った。
「俺さ、アヒルがいなくなる前に一度だけこの場所に座ったんだ。成田が見てるのはどんな風景なのか気になってさ。ここから見えるのってサッカー部のグランドじゃん?もしかしたら誰かの事描いてるのかなと思ったら、気になって仕方なかった」
その時の事を思い出して話す堀内の表情が不安そうになった。
あ…あの時と同じ顔。
聞き取れなかったあの一言を言った時と同じ顔だ。
『あいつ、誰の事見てるんだろう』
あの時堀内が呟いたのはそんな一言だった。
「アヒル捕まえた時も、一緒に連れて行くのを口実に絵見れないかって思ったんだけど、成田が必死で断ってきたからさ、残念だったぜ」
あの時のあの表情はそう言うことだったんだ。
部活で描いた作品の提出は任意の為、特に発表することもなかった。
だから堀内がその答えを確かめる事は出来なかった。
唯一その内容を知るのは、隣で見ていたあのアヒルだけなのだ。
「あ、ねぇ!その絵ってもうないの???」
「え???多分押し入れにあると…」
「よっしゃ!今度見せてよ!」
「えええええ!!!!だ!駄目ッ!!!!すっごい下手だし!!!!」
「いいじゃん!!!!成田に俺がどう映ってたのか知りたい!!」
「えーー!恥ずかしいよ〜!」
堀内が私の頭をグシャグシャっと撫でた。
二人で笑った。
今夜は空気が澄んでて星がとても綺麗に見えた。
「じゃぁさ、俺らあの時から両思いだったんだな」
堀内が星空を見上げながら言った。
「もっと早く気持ち伝えてたら良かったのかな?」
私も同じ星空を見上げて言った。
「いや、でも俺は今でよかったと思うよ」
「どうして?」
堀内の方を見て尋ねた。
「だって、4年会ってない間もずっとお互いにどこかで想ってて実ったんだぜ。運命の相手って感じで大事に思えるじゃん!」
「そっか、そうだよね」
ホントに、運命の出会いってやつなのかもしれない。
「ここに来て良かった」
堀内が今日の事を語り始めた。
「最初に成田に話しかけられたときすっげ嬉しくってさ。でもやっぱ綺麗になっちゃってるし、男いんだろなーとか色々思ってたら俺いつまでも昔の事根に持って未練がましいな〜〜とか情けなくなって。でも連絡先くらい聞いとくんだったーとか後で後悔してさ。何かここに来ればまた会える様な気がしたんだ。ホントに来たからビックリだけどな!」
「私もまさか堀内がいるなんて思わなかったよ。私も連絡先くらい聞いとけば良かったって後悔してたし…」
「マジ!!」
そう言うと堀内はポケットをまさぐり始めた。
「今度こそ後悔しないように、連絡先交換しようぜ!」
取り出した携帯電話を私に見せながら言った。
「もちろんだよ!!!」
そして私と堀内の携帯にはそれぞれの番号が登録された。
お互いにちゃんと登録されたか確かめ合った。
すると急に堀内がその場から走り去り、少し離れた。
その行動に疑問を抱いて見ていると私の携帯電話が鳴った。
着信相手はさっき登録したばかりの堀内だった。
私は着信をとった。
「どうしたの?」
「俺ら繋がったんだな」
「あは。うん!」
「これからヨロシクな!」
「こちらこそ。よろしく!」
あの小箱のジジイはやっぱり本物だったのかもしれないと思えた。
もしこうして再確認していないまま会っていたら、昔の私よりも何も出来ないまま本当に後悔していたかもしれない。
私はようやく自分の本当の気持ちで一歩を踏み出すことが出来た。
堀内と私はギュッと手を握り締め合いながら小屋を後にした。
フォッフォッフォ…
願いは叶えたぞえ。
次に出会うご主人はあなたかも知れぬな。
フォッフォッフォ…
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