35
私だけは方向が違うので途中で解散となった。
本当の後悔はこれからかもしれない。
連絡先、聞けばよかった……
堀内と話した内容を振り返った。
堀内の笑顔ばかりが頭を過ぎる。
私は思い立って家に帰るのをやめた。
そしてある場所へと足を向かわせていた。
中学校のあの小屋へと。
20分くらい歩くと中学校についた。
すっかり夜になり、誰もいない校庭に入った。
懐かしい風景を眺めながら歩いていると目的の小屋が見えてきた。
「あ、まだ残ってる!」
ちょっと嬉しくなった。
私は小屋に近づく速度を速めた。
小屋の数メートル前まで来た時、そこに一つの人影が見えた。
え……誰か、いる。
私は立ち止まった。
どうしよう……
人がいるなんて思わなかったので近づきにくくなった気持ちと、自分が行こうと思った場所に一体誰がいるんだろうと気になる気持ちが葛藤した。
立ち止まっていると人影が私に気がついた。
やっば!!
もしかしたら学校関係者かもしれない。
勝手に部外者が入るのはまずいよな……
慌てて帰ろうかと思った時、そこにいたのは……
「あれ?成田じゃん!」
嘘!!!
「堀内・・・どうして?」
そこにいたのは堀内だった。
「いやなんかさ、久々にアヒルの話したらここに来たくなってさ」
「あ、実は私も……」
まさかこんなとこでまた会えるなんて。
思い返して来て良かった。
私も小屋の方へ行き、堀内と並んだ。
「わー懐かしい」
あれ以来使われていないようで、中はまた散らかっていたけどまだ取り壊されずに残っていて嬉しかった。
「皆で掃除とかしてさ、すっげ楽しかったな〜」
「あー堀内ほんと楽しそうだったよね」
一緒に材料集めに行った時、不意に堀内が私に声をかけ楽しそうにしていた。
こうしてここにいると本当にあのときの事を鮮明に思い出す。
15歳の私から見た光景とアヒルの私から見た光景。
15歳の私の想いと、それを必死に出そうとしたアヒルの私の想い。
本当に不思議な出来事だったけど、私にとっては凄く大切な出来事だった。
しばらく思い出に浸っていると堀内が口を開いた。
「さっき言ったじゃん?」
小屋を覗き込んでいた堀内が振り返って小屋にもたれた。
「え?」
「俺が知りたかった事をあのアヒルが知ってたって」
うん!その続き凄く気になってた!
でも、さっきは恥ずかしいって教えてくれなかったのに何で話してくれる気になったんだろう……
「うん……」
なんだか緊張感が走った。
「昔さ、部活の時間になるとここでいつも絵描いてた子がいてさ。その子が何を描いてるのかずっと気になってたんだ」
あれ……?それって…
「その子って……」
私の事?だよね?