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その時堀内が思い出したかのように言った。
「あ!そういえばさ!脱走アヒルの事覚えてる?」
「え?」
それって、この前の夢の私……?なんで堀内が?
あれは私の夢の出来事だったはず。
その時、記憶を辿るとうっすらと思い出した。
あ、そうか。
そうだ。
4年前のある日、アヒルが迷い込んできて、いつもの日課の堀内の朝連姿を一緒に見てたのが始まりで、
私の一言で学校で飼うことになって、私の当番の日に爆睡してるの起こしちゃって、脱走したアヒルを堀内が捕まえてくれて、そのアヒルのおかげで私は……
そっか、そうだったんだ。
私はおかしくなって笑いが止まらなくなった。
「あはははははは、あはは、おっかし!覚えてるよ〜〜!!!」
あの時のあのアヒルは未来から来た私だった。
あの出来事は確かに4年前に実際にあったんだ。
私たちはそれからその話題で火がつき、場所を移動して話すことになった。
「アイツさ〜、結局次の日いなくなっちゃったんだよな〜〜。俺あれからずっと気になってたんだよ」
堀内があの夜様子を見に来て帰った後に私は元の世界に戻った。
当時は急に姿を消したアヒルにクラス中が騒然としたけど、先生が飼い主の元にちゃんと帰ったんだと説明して皆もそう信じてわずか二日で終わってしまった出来事だった。
だんだんクラスでも話題に出なくなって、いつの間にか忘れ去られてしまったけど私は時々気にしていた。
でも私も結局忘れていたけど、想わぬ形で再び体験する事になったんだ。
「あの子ちゃんと帰ったよ」
「ん?」
「大丈夫!」
私は確信を持ってに堀内に言った。
私の顔を見た堀内は安堵の表情を浮かべた。
「そっか!何かそんな気がしてきた。それなら良かった!」
堀内はずっとあの時の事覚えていたんだ。
そう言えば、『今日の日の事ってさ、将来同窓会とかで話すんだろうな〜』ってあの時言ってたっけ。
ほんとに良い思い出として堀内の中にずっとあったんだ。
あの出来事は私の一言から始まって、堀内がとても楽しそうで、あの時の思い出を共有出来るなんて夢にも思っていなかった。
「成田が覚えててくれてよかったよ。他の奴に話しても全然覚えてなくってさ〜〜ひっでーよな〜〜」
私も堀内に言われるまでは忘れてたけど、私は私で違う視点から見てきたから特別な出来事になったんだ。
「堀内はどうしてそんなに覚えてるの?」
堀内はグラスを持つ片手をくねくねと回しながら当時の事を語り始めた。
「ん?あいつだけがさ、知ってんだ。俺が知りたかった事」
堀内が知りたかった事を、あのアヒルが知ってる?
つまり私が?
一体何をなんだろう。
物凄く気になる。
「え?何々?」
「あはは〜〜恥ずかしいから内緒〜〜!」
照れくさそうに堀内がはぐらかした。
「ちょ、気になるぢゃん!!!」
「あはは!」
私が知ってる事で堀内が知りたかった事って、一体なんなんだろう。
結局堀内はそれを教えてくれなかった。