03
ヤイコが少し考え、思いついたように発言した。
「ナミ…もしかして堀内のこと…?」
ズバリ名前を出されるとドキッとする。
私が今想う相手の名前は堀内優。
「うん…実はさ、どうしても忘れられない気持ちがあってさ、それに気づいちゃったんだ」
私が中学1年の時から堀内の事が好きだった当時の事は3人も良く知っている。
「え、それってあの頃からずっと??」
ノゾミが指を一本一本折って年数を数えだした。
「でも結局片思いのままで告白もしずに終わっちゃったよね?その後何人かと付き合ってきてるじゃん??その時も忘れてなかったって事???」
ヤイコが鋭い質問をしてきた。
「その時は確かに、堀内への恋は終わったと思ってたよ。付き合った人のこと好きになったし。でも正直別れる度ホッとしてたんだ。そりゃ、浮気された時は腹も立ったけど、私、浮気されちゃうくらい「つまんない彼女」にしかなれなかったんだよね…。どんなに好かれても私は応えられなかったんだ。終わったと思ってた気持ちは封印しただけだった。今回それに気がついちゃったの」
話を聞いていたヤイコはまたも鋭い質問を投げかけてきた。
「ちょっと待って、ナミのその気持ちって、いつのものなの??それって結局あの頃の気持ちが残ってるだけであって、今の気持ちではないんじゃないのかな??」
それを聞いていたチヤコも質問をしてきた。
「あ〜そうだよねぇ。再会をきっかけに〜とかなら分るけど…会ったりしたの??」
会ってはいない。
中学3年間ずっと片思いをしてきた堀内。
伝えたい気持ちを胸に毎日を過ごした。
告白するチャンスが一度だけあったけど、逃してしまった。
恥ずかしさのあまり、違うどうでもいい事を言ってしまった。
結局、気持ちを伝えることのないまま卒業し4年。
一度も会ってはいない。
少し目が覚めた。
「ううん、会ってないな…そっか、そうだよね。これって告白しなかった事をいつまでも悔やんでるって、ただそれだけなのかも…」
相手の気持ちを知る事のないままになってしまった恋だから、自分の中でも終わることが出来ずにいただけ。
パソコンの電源がエラーを起こして切れず、強制終了を待っている状態…と言うのだろうか。
「そうかもしれないよ。それに片思いって幸せしかないじゃん??きっと思い出が美化されて心の中にずっと残ってるんだよ。」
ヤイコが言った。
「そうだね、それはいい事だと思うよ。堀内のことはいい思い出として大事に残せばいいし、今は寂しいからそうやって思えちゃうだけなんじゃないかな。本命だってまだこれから現れるんだよきっと!!」
ノゾミも言った。
「ナミ!一緒に良い男探そうぜぇ〜〜!」
チヤコが私の肩を叩きながら言った。
「皆…ありがとう」
私は寂しいのか……だから楽しかったあの頃の気持ちで自分を慰めてるだけなんだ。
終わりがなかった恋だから良い思い出しかない。
その相手が堀内だったから、そう思うだけ。
でも……
そう思ったときにヤイコが言った。
「だけど、こんなにナミの心の中にいるんだったら、あの頃伝えておけば良かったかもね…ちょっと勿体無い気もしたよ」
同じ事を私も思っていた。
いくら自分の中に堀内が存在してても、その気持ちは堀内には伝わってはいない。
別に振られてたって良かったんだ。
あの時に好きだった事をちゃんとあの時に伝えておけば良かった。
その後も数時間色々語り合い、楽しい時間はあっという間に過ぎていった。