21
ナミは行ってしまった。
一体これから私はどうすればいいの?
アホーーーアホーーー。
沈みかけの夕空に、カラスが間の悪い鳴き方をしながら飛んでいる。
差し込むオレンジ色の光がなんだか寂しさを誘っていた。
もうやだぁ……グスグス。
泣きたくなってきたその時、
「いくぞーー!!!」
という威勢の良い掛け声がし、その方を見た。
さっきまでナミが見ていた光景だ。
運動部は文芸部と違い遅くまで練習をしている。
どうやら部員同士で練習試合をしているようだ。
寂しさを誘っていたオレンジ色の光は、そこでは赤く燃えている。
その下で汗を流す堀内の姿が目に止まった。
とても真剣で、一生懸命に取り組んでいる。
その姿を見ていると、忘れていた気持ちを思い出す。
ワクワクするような、ドキドキするような、
胸にキュンとくる、夢中になる、
見ているだけで幸せになってしまうような、そんな気持ち。
高く蹴り上がったボールに向かって堀内がジャンプしヘディングしようとした時、
相手チームの部員と競り合いになりそのまま二人は転倒してしまった。
「グワッ!」
あ!!
思わず声が出る。
大丈夫かなぁ……
胸がギュッと苦しくなり、心配で目が放せなかった。
でも堀内はすぐに立ち上がり、一緒に転倒した部員を気遣っていた。
「大丈夫か?わりぃ!」
そう言った様な感じで相手を心配し、相手もゴメンといった素振りを見せている。
それを見た堀内は笑顔で相手の肩をポンポンと叩きまた走り出した。
その姿にホッとした。
改めて気がついたことだけど、堀内の表情には一つ一つに魅力がありとても惹かれる。
そんな堀内を見ていて、私は最初の出会いを思い出した。
まだ入学したばかりで校舎にも慣れない頃。
私は移動教室先を探しながら廊下を歩いていた。
「あれ…どこだろう。どうしよう、放課終わっちゃう……」
校内で迷って、焦りから段々小走りになっていた。
角に差し掛かったとき
ドン!!
「きゃ!!」
「ぅっ!」
私の不注意で男子生徒とぶつかってしまった。
反動で尻もちをつき、持っていた教科書と筆箱を落としてしまった。
「いったーーーい」
ふと目を開けると、目の前にはぶつかった相手の男子生徒の足元が見えた。
私は慌てて立ち上がると怖くて何度も謝った。
「ごめんなさい!ごめんなさい!!」
相手の顔が見れなくて何度も頭を下げている私に彼は優しい声で
「大丈夫?」
と言ってくれた。
そして私が落とした教科書と筆箱を拾い渡してくれた。
「はい!」
「あ、ありが…と…う」
その時初めて彼の顔を見た。
体に稲妻が突き抜けるような、そんな感覚に襲われた。
瞳が凄く綺麗だったのだ。
そんな風に感じたのは初めての事だった。
彼が去った後も私はしばらくその場に立ち尽くしてしまい、結局授業に遅れてしまった。
この時はまだクラスも名前も知らなくて、でも彼の事はとても印象に残った。
それが堀内に出会った最初だった。