NEW WORLD
Shin awakens in an unfamiliar white world. Confused and disoriented, he begins to question whether he has been reincarnated. As he tries to understand his surroundings, a mysterious presence stirs in the background—watching him closely.
――耳の奥で、かすかな鈴の音が鳴っていた。
少女はゆっくりと目を開けた。
視界に広がるのは、色という色を飲み込んだような純白の天井。
「……ここは、どこ……? どうして、私は……」
自分の声が、思ったより低く、落ち着きすぎて聞こえる。
身を起こすと、心臓が速く打ち始めた。
見慣れたものは何ひとつない。
ベッドも、壁も、空気の匂いさえ。
――まさか、転生……?
そんなはずは、と首を振りながらシーツを整える。
だが窓へと歩み寄った瞬間、胸の奥に嫌な予感が走った。
「……何してるの、私。まずは状況確認……」
震える手でカーテンを開く。
そして、少女は凍りついた。
外に広がっていたのは――何もない世界。
空も、雲も、太陽も、大地さえも存在しない。
ただ無限に続く白だけが、すべてを飲み込んでいた。
「……嘘、でしょ……?」
少女が呟いたその声は、白に溶けて消えていった。
「――そして、それが《白の世界》で目覚めた少女の物語の終わり」
ぱたん、と古びた本が閉じられる。
(※プロローグ 終)
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◆ 第一章 ――九年後
2039年12月30日。
冬の灰色が空一面を覆い、静かな墓地に雪がしんしんと降り積もっていた。
少年は一輪の花を握りしめ、震える手で小さな墓の前に立っていた。
石には、彼の母の名が刻まれている。
しばらくの間、少年は何も言わなかった。
風が髪を揺らし、雪をさらう音だけが静寂を破る。
そして、かすれた声で呟いた。
「母さん……今日は、俺が生まれた日なんだ。十四歳になったよ。
……母さんが、いなくなった日でもあるけど」
言葉が震える。
無理に笑おうとしても、痛々しいほど弱々しい。
「強くなれって……笑ってろって、言われてたのに……」
花が指から落ち、墓石に寄り添うように沈んだ。
頬に温かい雫が伝い、やがて雪に吸い込まれていく。
「……苦しいよ、母さん。すごく……つらい」
少年は膝をつき、額を石に押し当てた。
冷たさが皮膚を刺しても、動かない。
ただ静かに肩を震わせていた。
「……誕生日、おめでとう……俺」
雪は絶え間なく降り続け、まるで世界そのものが少年の涙を受け止めているようだった。
数秒だけ墓を見つめ、少年は涙を拭った。
「……大丈夫だよ。大丈夫……だよな、母さん」
その笑みは空っぽで、誰が見ても嘘だとわかるものだった。
少年はゆっくりと歩き出す。
足跡だけが白い道に残り、彼の瞳は光を宿していない。
――その時。
「ねえ……大丈夫?」
門の前で、赤い傘を差した少女が立っていた。
年は同じくらい。
その瞳には、心からの心配が滲んでいた。
「何があったの……? 悲しそう。……助けになれること、ある?」
少年は少女の横をすり抜けるように歩き続けた。
「えっ……」
驚く少女。
そして、震える声で呼び止める。
「あ、あの! ひとつだけ……聞いてもいい?」
少年の足が止まる。
静寂がふたりを包み込む。
ゆっくり振り返った少年の目は――
色を失い、涙の跡だけが光っていた。
「……どうして」
「どうして、何があったか……聞かないんだ?」
怒りでも、悲しみでもなく。
ただ割れそうなほど脆い声。
少女は息を呑んだ。
瞳の奥に広がる孤独を見てしまったから。
少年はうつむき、雪に涙を落とす。
「誰も……聞いてくれないから。いつも」
そうしてまた歩き出す。
少女は咄嗟に叫んだ。
「ま、待って……! せめて、名前だけでも……!」
白い息が舞う。
少年は横顔だけを見せ、乾いた声で答えた。
「……名前?」
少しだけ考えるように沈黙し――
「……シン」
ひと呼吸置いて。
「――シン・ハカシタ」
その響きは、自分の名前に未練がないかのように淡々としていた。
少女は小さく呟く。
「シン……くん……」
少年は弱い笑みを浮かべた。
すぐに崩れそうな、儚い表情で。
「覚えなくていいよ。……もう、意味ないから」
そう言って、再び歩き出す。
雪の向こうへ消えていく背中を、少女はただ見つめていた。
――その瞬間。運命は静かに動き始める。
突如、轟音。
制御を失ったトラックが少女へ向かって突っ込んできた。
「……っ!」
シンは考えるより先に走り出していた。
少女の目が大きく見開かれる。
気づいた時には、シンが彼女を突き飛ばしていた。
雪と泥が舞い、少女は地面に転がる。
痛みよりも先に、彼を見た。
シンの身体がトラックに弾き飛ばされ――
視界が白く霞む。
そして。
暗闇。
――目を開くと、知らない世界が広がっていた。
「……は?」
声が震える。
胸が早鐘のように脈打つ。
「どこだ……あの子は……?」
シンは目を見開き、状況を理解しようとするが、
先ほどまでの世界とは明らかに違っていた。
Thank you for reading this chapter!
The tone is slowly shifting as the mystery of the white world unfolds.
I’ll continue polishing future chapters, so I hope you’ll stay with me.
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