第4話 真価を発揮!私の【開発】!
家に帰ってさっそく錬金釜を取り出し直す前にいろいろ調べてみる。
実は【開発】スキルで出てくる画面にはアイテムの説明や使い方などが添付されている。私が初めてスキルを使った時もこれのおかげで困ることはなかった。
このスキル、物を作るよりついてくるおまけの方がもしかしてすごいんじゃないの...?
「ふむふむ、この錬金釜は試作段階の最新機...最新機!?」
道理でゲームで見たようなデザインじゃないわけだ。
今まで見たどのルートでも錬金釜はここまで近未来的なデザインではなかったしここまで小型化もしていない。
そこから察するにおそらくこの型の開発は失敗するのだろう、そしてそのまま埋もれていったのだ。多分このままだと史実通り失敗するに違いない。ただし、私がいなければの話だけどね!
「スキル【開発】!はつどーう!」
スキル画面に出てくる錬金釜関係のレシピを漁る。錬金釜本体のレシピから錬金釜から作れるものまですべてが載っているせいで本当に長い!3040ページってなにそれ!そんなに作れるもの多いの!?
ちなみに後でわかったことだが一つの物を作るにもたくさんのレシピがあるせいでこんなことになっていたらしい。もし恋戦の世界が錬金RPGだったら間違いなく本格すぎるゲームとして一部の層から信仰されるタイプのゲームになっていたに違いない。
さすがにその量を調べるのは大変なのでもう少し検索内容を絞ってみると、だいたい100ページくらいまでは短くすることができた。うーん、それでも長いなぁ...
これ以上絞り込むのはあきらめて、ページをめくっていった最後の方にそれはあった。
「自立式携帯錬金釜【フラメル】、これだ!」
自立式携帯錬金釜【フラメル】、どうやら錬金釜に人格を埋め込むことで錬金術を誰にでも使えるようアシストするのを主目的として開発されたものらしい。
ただしこの技術は革新的ではあるものの人格を形成するための素材の発見にはこの時代はまだ早すぎるためいつしか忘れ去られていく定めにあるらしい。まぁ私がいなければの話ですがね!
「えーっと、これ自体で錬金釜としての機能はあるのか...じゃああとは人格を作るだけなんだろうけど、なにこの素材」
フラメルのレシピに一つだけ見慣れないものがあった。
原初の泥、アイテムの名前から生成方法を検索してみると出てきたのは3件しかなかった。
どうやら原初の泥は錬金術を失敗したときに発生する物質らしい。ただ錬金釜に対して過剰すぎる素材を追加しすぎると発生する現象らしい。
「なるほど、道理で発見されないわけだ」
このアイテムが発見されるまでの経緯が、資材に余裕のある未来の世界で最強の錬金術を作り出そうとした学生が偶然発見したというものなのだ。この物質の発見以降人類は人間すら作り出すことが可能になり、未来の世界では人の死亡という概念すら超越したと書いてある。ひえー、怖い。
「あれこれ今の時代でやっていいことなのか...?」
未來の世界で発見されるような物質、それを今の時代に作り出したら何か悪い影響が出てしまうような気がする。するんだけど、まぁ
「バレなきゃいっか!」
当時の私はこれがどれほど危険で愚かな行為だと知らず、禁忌に身を染めてしまった。考えなしの愚か者、それが私だ。
ここで立ち止まることさえできたらよかったのに...
そんなこと露知らずな私は、引き返せない道を歩き始めた。
「よし、必要なものもわかったことだし!素材集めだ!」
原初の泥は条件さえ整えれば誰でも作れるため今の私でも作ることができる。作ることはできるのだが材料は何でもいいというわけではない。
原初の泥は根源物質に限りなく近い物質だ。そして根源物質は生物と非生物の素となる物質で、そのどちらにも偏っていない。だから生物と非生物の素材を同じ程度集めて互いの属性を打ち消しあったうえで錬金に失敗しないといけない。
非生物の素材はいくらでも買うことができるが問題は生物だ。
この世界の魔物の素材は基本、装備に使うようなもので一般には回ってこない。つまり私が魔物を狩る必要がある。魔物から出る素材は集めるのが大変かつ危険な代わりに効果も強力だからこそ国ぐるみでその流通を管理されている。
つまり私が魔物の素材を集めるには誰にもばれないよう魔物を狩ったうえで隠し通さなければならない。
あー、なんだかものすごく面倒になってきた。やめようかな。
「やめようかな」
言葉にも出てしまった。
まぁ、ゲームで見れなかったアイテムが見れるんだから頑張るしかない、と言い聞かせて私は努力をすることにした。
まぁどうせ戦争に参加するために私自身の実力が必要だから肉体は鍛える予定だったし、その一環と考えれば悪くない!よし、そうと決まったらまずはトレーニングと武器づくりから始めよう!!
そう決めた私は、とりあえず前世で形だけ知っていた本格トレーニングメニューをこなした。ゲーム三昧だった私の前世の肉体に比べ、この身体は健康的だったためちゃんとフルセットでこなすことができた。昔の人ってすごい!!
明日は武器を作ろう、そう決めて私は深い眠りについた。