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第47話 異常事態

 朝目が覚めるとノルンがいない。

「ノルン......?」

 そういえば昨日、ノルンがメイベルのところに行くと言っていた。それなりに仲良くなったのだなと感心していたのだが私が思うより関係が進展していたのかもしれない。今日の夜はお仕置きしよう。

 そう決めてベッドから這い出ると、珍しくステラが朝ご飯を用意していた。

「あら、ステラがご飯を作ってるなんて珍しいわね」

「うん、お母さんがいないから、私作るしかないって思って」

 最初は違和感があった母、父呼びも今となってはノルンとの娘が本当にできたみたいで気に入っている。

 昔の私に今の私のことを教えても信じてくれないだろうけど、随分と幸せになれたものだなと思う。だから、私は私にできる全てでノルンを大切にしていきたい。そう誓ったのももう何度になるか数えれないほどだった。

 ステラが用意した目玉焼きトーストを食べながら新聞を読む。冗談で取り始めた新聞だけど意外とニュースというのは興味深くて、今でも続けている。

「高ドルクねぇ、為替って難しそうなイメージあるけど、やっぱりやった方がいいのかしら」

「何見てるの?」

「難しい話よ、気にしなくていいわ。さ、さめちゃうと事だしさっさと食べるわよ」

「はーい」

 そうして何事もなく、いやノルンがいないから何事もないわけではないがいつものように食事が進んでいく。

 それにしてもノルンが遅い、ノルンはどれだけ遅くなったって今の時間には起きているのに。そう考えていると扉が開く。

「ッ!ノルン!来たの......は!?」

 扉の先に見える景色を見た時、私は自分がおかしくなったのかと思った。

 メイベルと腕を組んで、まるでカップルのようにふるまうノルンの姿が、そこにはあった。メイベルの方は、照れてはいるがまんざらでもないといった姿で、それが私の混乱をより加速させる。

「あっ、ソフィーリヤさん、おはようです!」

 .......嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ!ノルンが、私にそんな他人行儀なことをするはずがないでしょう!

 だったら、この原因は。

 鞄からアンプルと注射器を取り出して首筋に打つ。ノルンの味を変化させる薬を応用したブースト薬だ。

 瞬きほどの一瞬が経過して、ガキィンと金属がぶつかり合うような音がする。

 その音の正体は、襲い掛かった私を止めるノルンとぶつかる音だった。ノルンが、私のことを敵を見るような目で見ている。私のノルンが、私だけのノルンが。

「ノ、ノルン......冗談よね?冗談よね!?」

「メイベル!ソフィーリヤが錯乱してます!早く部屋に戻りましょう!」

 私が言い返す間もなく、ノルンがメイベルを抱えて去っていった。去っていく方向はメイベルの部屋へと続いていて、きっと、あの秘密基地とやらに行くのだろう。そこで、私のノルンが。

「うぉぇぇえぇぇ!!」

 想像しただけで吐いてしまった。

 心配そうにステラが駆け寄ってくる。バケツと雑巾も用意して、随分と気がまわるようになったのだなと頭の隅で抱いた感情もノルンのことで塗りつぶされて、怒りがこみ上げてくる。

「お母さん何があったの?いつものお母さんはどうなっちゃったの?」

 発狂する私と困惑しておろおろしているステラの様子を見つけたアーサーが駆け寄ってくる。

「どうしたんだい!?ソフィー君がそうなるなんて何があったんだ!」

「なんとなくわかるわ」

 奥からマーガレットが歩いてくる。いつもは冷静な私が狂乱している分その冷静さは際立って見えていた。

「愛の妙薬でしょうね。それをノルンに使ったんでしょう」

「愛の妙薬!?禁止されてるはずだ!」

 愛の妙薬、数年前に裏のルートから流通したそれは、好きでもない相手と無理やり結婚させたり、婚約者を略奪するのにつかわれるなど、世間を大混乱に巻き込んで禁止薬品に認定されるまで至った薬だ。

「でも開発者したのはメイベルよ、いくら禁じたって無駄でしょうね」

 新事実が出てくるけど、そんなのはどうでもよくって。

「マーガレット、解決方法は、あるんでしょうね」

「なんとなく予想はできていたもの。解毒薬は作ってあるわ。これをノルンに使えば一件落着ね」

「だったらそれを早くよこしなさい!あんなゴミに私のノルンを一秒たりとも、あげちゃダメなのよ!」

 アンプルを無理やり奪おうとするが、さっと避けられてしまう。冷静ではない私の行動はずいぶんと読みやすいみたいだ。

「それは同意するけど、落ち着きなさい!あなた一人じゃ、邪魔するメイベルを突破してノルンに近づくなんて無理でしょう!」

「じゃあどうしたら!「私たちがいるでしょう!頼りなさい!」

 マーガレットがあまりにも力強く言うものだから、一瞬反応が遅れたものの続いてアーサーが同意する。

「そっ、そうだよ!寮員のやらかしは私の責任でもある!だから手伝わせてくれ!」

「お母さん、変になったのメイベルのせいなんだね。友達だと思ってたのに、許さない」

 というわけで、ノルン解放同盟が結束された。

 私たちは、さっそく行動に移すべくメイベルの部屋の窓の前に、つい一週間前と同じようにやって来た。

「待ってなさい、ノルン。すぐに助けてあげるから!」

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