第46話 初めてのお使い
一週間が経過して、とうとうメイベルとのお出かけの日になった。今日どれだけうまく一日を過ごせるかが一番重要だ。
ちなみに、ソフィーは今回留守番してもらうことにした。ソフィーみたいなタイプだとメイベルは怖がってろくに楽しめなさそうだし、前世では同じようなタイプだった私が一番の適役というわけだ。
「おまたせ、待った?」
「あ、えへへ、全然、待ってないですよ、へへ」
にやにやと嬉しそうに笑うメイベル。汗を沢山かいているあたりそんなことはなさそうだけど指摘しない方がいいか。
「じゃあさっそくいこっか!メイベルはいきたいとことかある?」
メイベルの手を掴んで下から覗き込むようにしてみると、距離感に照れたメイベルが離れながら応えてくれる。
「あ、じゃあ本屋行きたい、です」
「おっけー!まずは本屋だね!」
メイベルの手を取って引っ張っていく。怒涛のコミュニケーションにタジタジしていたが周りの視線が心地よかったのか笑いながらも私の誘導に従っている。良い感じだ。
「メイベルちゃんは本屋に行ったことあるの?なんかあんな感じの場所にずっといそうなイメージがあってさ」
「あ、ええ、えとですねぇ。買い物は、ゴーレムに任せてるんです......ちょっと実演しますね、へへ」
一度私から離れて、メイベルがぴぃーと指笛を吹くと地面からゴーレムが湧いて出てきた。身長は100cmぐらいで、なかなかにいかつい見た目をしている。
「紹介します、自立式買い物専用ゴーレム「トラベルマン」、です。この子が、買い物を自動でしてくれるので問題はないってわけなんですね、へへ。この子のおかげでニート生活がはかどって仕方ないというか......」
なるほど、このゴーレムおかげでニートとして完全体になったから交流会にも来なかったんだな、さては。でも正直、元インドア派としてはあこがれる......!完全ニート生活!
「ま、まぁ今日は?ノイフォンミュラー「あっ、ノルンでいいよ」
ノルンとの買い物なんでしまっとくんですねぇ」
再びメイベルが指笛を吹くと、ゴーレムは地面に潜ってどこかへ行ってしまった。おそらくメイベルの動作に反応して即座に錬金されるようになっているのだろう。だからあの地下だろうが街中だろうが使えるというわけだ。
「教えてくれてありがとね!あのゴーレム、すごかったよ!どうやって複雑な命令を仕込んだの?」
「えっとぉ、それは企業秘密なので教えれないんですけどぉ、私なら朝飯前というかぁ!」
「ほんとに!?すごいなぁ!」
「えへへ......これが、リア充......気持ちいい.......!」
自分の開発物を褒められてものすごくうれしそうにしているメイベルを見て、ニートではあるけどそれ以上に錬金術師なんだなって思った。だって私も、自分の開発したものがほかの人の役に立つとうれしいもんね。
そういう意味でも、私とメイベルは似たもの同士なのかもしれなかった。
「あ、そんなこと言ってる間に着きましたね。私も一緒に見ていいですか?」
「あ、はい、よっ、よろしくおなしゃすっ!」
「あははっ、そんな緊張しなくていいのに!さ、いこ!」
手を引っ張っていくと今度は恥ずかしがらずに横に並んでくれる。どうやらさっきの経験を通じて私たちは完全に仲良くなれたみたいだ!よかった!
そのあと私たちは本を買って、私の提案でカフェに行くことになった。
「あ、あわわ。こんなおしゃれなところ、私が来てもいいんですかね!?」
「全然いいよー!メイベルもかわいいんだから!」
「か、かわいっ!?」
ぼしゅんと頭が爆発しているメイベルを引きずってカフェに連れていき、注文は私の方で済ませテラス席に座る。
「どう?おいしい?パンケーキ」
「あ、はは、はい!とっても美味しいです!特にこの生地とかふわふわで、蜂蜜もすっごい濃厚で、その、あの、美味しい味がします!」
「おいしい味って!何その感想!でも実際おいしいよね!」
私が今食べているのは季節限定のアイスクリームで、メイベルの好きな食べ物がわからないから、前回来た時に食べたパンケーキを注文した。賭けだったけどおいしいって思ってもらえたみたいでよかった!
「メイベル、パンケーキひとかけ貰っていい?」
「え、あ、はいどうぞ」
「うん、ありがと。見ててね、このアイスをー、パンケーキに乗せてー、はい!あーん!」
「ひょえっ!?いいんですか!?」
「ほらほら、早くしないとアイス解けちゃうよー?」
「え、えっとえっと、じゃあいただきますっ!」
メイベルが周りの目線を気にしつつも、ぱくっと一口で食べる。瞬間、メイベルに笑顔があふれる。
「お、おいしい!」
「そ?よかったー!じゃ、私にもして、あーん」
そうやって交換っこしながら食べるパンケーキは、なんだかとっても楽しかった。こういう生活を、前世でも送りたかったんだな、私は。
会計は私が支払って、店を後にする。そろそろいい時間だし、寮に帰るとしよう。
「メイベルは、今日楽しかった?」
「あっはい!それはもう!いあ、今までカフェとか陽キャ専用とか思ってて、絶対行くもんかって思ってたけど、ノルンのおかげですごい楽しかったっていうか、えっとその、ありがとうございましゅ!」
「よかったー!メイベルが楽しんでくれたなら、私も本望だよ!」
夕暮れに体を染められながら帰っていると、メイベルが私の腕を握って急に立ち止まる。
「どうしたの?」
「えっと、この後私の部屋に、来てくれませんか?」
「いいけど......なにかしたいことでもあるの?」
「それは、えっとあの、そう!お礼したくて!」
「なんだそういうこと!全然いいのに!でも、メイベルがそういうなら、行くから!待っててね!」
寮にたどり着いて、メイベルと別れる。別れ際、メイベルがなにかぶつぶつ呟いていた気がするけど、私もよくやるので気にしないことにした。
そして夜9時、メイベルの部屋にこっそりやってきた。
「メイベルー?いるー?」
「あ、はいここに」
メイベルが白衣姿でこちらに振り返る。さっきまで研究していたのかな。
「それで、お礼ってなにするの?」
「えっと、それは......えいっ!」
メイベルが近づいてきたかと思うと、首筋になにかを打たれる。
「ッ!?メイべ、ルッ!?」
意識がどんどんと閉じていく。目の前にはほの暗い笑顔をしたメイベルの姿が見える。ダメだ、もう、もたない。
私はその記憶を最後に、倒れてしまった。
「......ふへへ、ノルン、ずっと一緒、ふへへ、ですよ......」
メイベルの不気味な笑いが、二人のほかにだれもいない地下に響いていた。




