第37話 カオス!寮生たち!
言われたがままに食堂の方へ向かうと、すでに中が騒がしい。
窓越しではあるがカオスな光景が広がっているのがわかる。
「まぁ、察してはいたわ。けどこんなのって......」
ソフィーが頭を抱える。
その気持ちはよくわかる、よくわかるけど行くと決めた以上覚悟を決めるしかない。
私たちは少し重ための扉をぎぃぃと開くと、中の騒ぎがしゅんと静まった。
一瞬の静寂、その後爆発するような歓声。
そんなに人数がいるのかなと思ったけどよく見たら騒いでるのはさっきのエルストリって子とその近くにいた華奢な感じの子だけだった。
えっ、二人でこの騒音を!?どちらかといえばソフィーも私も静かな方なので信じられない。
「静かに!」
奥の方で静かに座っていた女性がそう叫ぶと、部屋に静寂が戻る。
おそらくこの寮のリーダー的存在だろう。醸し出すオーラが半端ない、多分寮長の次くらいに怖い。
立ち上がった時見上げるほどの大きさに少しビビる。そのまま歩いてきて何をするのかと構えそうになったが、握手を求めただけだった。
「どうも、ソフィーにノルン。騒がしくてすまない」
見た目に反して恐ろしく丁寧な物腰、さすがはこの魑魅魍魎をまとめるリーダーといったところだろうか。
緊張も解けたので何か思われる前に握手を返す。
「どうも、ノルンです」
「ソフィーよ、よろしく」
「うん、挨拶をまともにしてくれたのは君たちが始めてだ!よろしく!」
普通に挨拶したつもりだったけど、それがここでは逆に珍しいようで、心の底から嬉しそうにブンブンと握った手を振る。
喜ばれて光栄だがちょっと感激しすぎじゃないだろうか、他の人どれだけやばかったんだ。
「よし、主役の二人も揃ったことだし、交流会を始めよう!まずは、挨拶!エルトランから頼む!」
エルトランが元気に立ち上がる。さっきはいきなりだったしすぐに去ったからわからなかったけど全身に絆創膏のようなものを貼っている。
「はーい!もう知ってると思うけど私、エルトラン!一応医療関係の研究をしてるよ!みんなエルって呼ぶから、できたらそう呼んでね!よろしく!」
挨拶が終わると即座に座ってご飯を食べ始める。
医療、やっぱりあの絆創膏はエルが作ったんだ、後で教えてもらおう。あれは便利そうだし。
「次!ステラ!」
騒いでたうちのもう一人の少女が立ち上がる。
見た目は小動物と呼べるような感じで、とっても可愛いマスコットみたいだった。
「オッケー!私ステラ!生物の力の研究をしてるの!そのまま呼んでいいからね!あとこれどうぞ!ステラ謹製惑星クッキー!」
ステラは惑星クッキーとやらを手渡す。星の形をしたクッキーだ。
見た感じ変なものじゃなさそうだしありがたく受け取って、後でソフィーと一緒に食べよう。
人懐っこそうな感じで癒されるなぁ。後、生物関係は私たちの役に立ちそうだし、後で話しかけようっと。
「よし、次!マーガレット!」
マーガレットと呼ばれる少女が立ち上がる。あまりにも堂々とした姿は最初に出会ったソフィーを彷彿させたが、あまりにも険しい顔をしている。
神経質っぽそうでちょっと怖いな。
「ふん、仕方ないわね。私はマーガレット!高貴なるマーガレットよ!せいぜい覚えておくといいわ!」
それだけ話すとどかっと椅子に座り食べ物を食べ始める。
高貴なるとか言う割にご飯に食いつく姿はやたら親近感を覚える姿だった。
「いやいやそうだけど、挨拶はしてくれるし意外にいい子っぽいね」
「そうね」
「なんですって!?」
こっそり話していたがどうやら聞かれていたようで急いで食べ物を飲み込んでマーガレットが向かってくる。が、その途中で後ろから羽交締めで止められる。
怒らせるつもりはなかったけど、後で謝ろう。
「はい抑えて抑えて!二人とも悪気があったわけじゃないから!次!メイベル!」
呼ばれるが誰も返事をしない。
周りを見渡すがこれ以上人はいないみたいだ。
「メイベル?メイベル!いない!?マーガレット!メイベルは!?僕招待したよね!?」
「見ていないけど、おおかた部屋でしょう。彼女、こう言うの嫌いって知ってるでしょ?」
「いや知ってはいるけど、メイベルは来るって……」
「ま、挨拶なんて後からでもできるんだから。それより最後に自分の自己紹介もしなさいよ」
落ち込んでいても仕方ないと諦めたのかトボトボとしながら私たちの元へやってくる。この人はこれから先も苦労するタイプの人なんだろう。
最初は怖いと思っていたが、案外可愛いかもしれない。
「ノルン、浮気はダメよ」
「心読まないで!?てかしないよ!」
私の視線から何を思ってたのか察したらしいソフィーに釘を刺される。
「?」という顔をしていたので、気にしないで大丈夫ですと伝えて、最後の自己紹介が始まる。
「二人ともよろしく!僕の名前はアーサー!惑星力の研究をしてるよ!なんとなくわかってるだろうけど、この寮のリーダーみたいなものをしてるから、よろしくね!」
手を差し出される。
困った時はこの人に頼ろう、そう思わせる信頼感に溢れていた。
「よし、僕らは終わったから、二人の自己紹介を頼むよ」
促されて私たちが前の方に立つ。
全員が私たちの方をじっと見ている。こういう場って緊張するんだよなぁ。
深呼吸を二度ほどして気分を落ち着かせ、話し始める。
「皆さんよろしくお願いします、ノイフォンミュラーです!ソフィーはノルンて呼ぶので、皆さんもよければそう呼んでください!あ、一応魔物系の錬金術師です!」
私が一歩下がると、次はソフィーが前に立って自己紹介。
相変わらずの凛々しく堂々とした態度で話し始める。
「ソフィーリア、ソフィーと呼んでちょうだい。ノルンと一緒で、私も魔物系の錬金術を研究しているわ。よろしく」
簡素だがソフィーという人間をよく表す自己紹介だった。
「よし!自己紹介も終わったし、交流会を始めよう!さ、二人ともグラスを持って!」
言われるがままにグラスを掴んで空に掲げる。
透き通る液体が非常に綺麗だ。多分リンガジュースとかかな。
「私たちの出会いに、乾杯!」
「「「「「乾杯!」」」」」
交流会がこうして始まった。




