第36話 始まる寮生活!
翌日、ドルト少佐に連れられて第一区に連れてこられる。
この区画に寮があるらしい。メモに書かれた地図だけ渡されてドルト少佐は何か別の場所へ向かった。また何か別の任務があるようで、ご苦労なことだ。
初めて見る街並みを、とくに興味深いというわけでもないがそれ以外することもないので眺めつつ地図の案内通りに歩いていく。
「寮って、どんな場所なのかしら」
「説明を聞くに同居するだけの場所っぽいけどなぁ、小さめな団地みたいなものじゃない?」
「団地って何?」
「あー、いろんな家族が一つの建物に一緒に住む、みたいなそんなやつ。だーいぶ前に新聞で見たんだよね」
最近気を張り詰めることが多かったからか油断してて前世の単語を話してしまった。うまくごまかせたけどいつ致命的なことにつながるかわからないし気を付けよう。
歩いていると食べ物系の店が多い通りに入る。見えるだけでもクレープやサンドイッチ、ホットドッグなどおいしそうで行儀が悪いが涎がたれそうだ。
「ソフィー、お腹すかない?」
「空いてるけど......まさか食べるつもり?時間に遅れるわよ!」
「まぁまぁ、いいじゃん。ちょっとだけだから!」
「そんなこと言って、絶対歯止め効かなくなるわよ。私は反対だから」
ぐーー
ソフィーが話している途中でお腹の音が鳴る。下のお腹は正直だね。
赤く顔を染めてうつむく、どうやらお腹の音が聞かれたことと本当はやせ我慢していたことがばれて恥ずかしいみたいだ。かわいい。
「二対一みたいだけど、これでも反対?」
「......少しだけだから、少しだけなんだからね!」
「うんうんわかったって、早くいこー!おいしそうだよ、あのクレープとか!」
結局誘惑に負けた私たちは思う存分甘いものを楽しんだ。
最初は少し抵抗気味だったソフィーも最初に食べたクレープを食べてからはノリノリになって最後の方はソフィーが言うままに店を巡っていた。
前までのソフィーだったらなんだかんだいいつつ我慢していたことやこの前の夜のことも考えるとドラゴンの身体になったことで欲望に正直になっているか強まっているのかもしれない。要検証事項だからメモしておこう。
そうして気が付いたら時間も危なくなっていたので急いで向かったけど、結局指定された時間に遅れてしまった。
「いやぁ、怒ってるよなぁ」
「当たり前じゃない!私はやめようって!」
「いやソフィーも後半ノリノリだったじゃん!」
「なっ、いやあれはノルンのノリに合わせただけでわた「うるさいよ!さっさと入りな!」
私たちが扉の外でけんかしていると中からそれはもう大きな声が聞こえてきた。
まず、めっちゃ怒ってる。
「......入ろっか!」
「そうね!」
中にはエントランスの広い空間が広がっていた。右と左に階段があるから、そこから部屋に向かうことができるのだろう。
そして目の前にはおっかない女性が一人、おそらく寮長とやらだろうか。
「あ、えっと、ノイフォンミュラーっていいます。あの、仲のいい人は、といってもソフィーぐらいなんですけど、ノルンって呼ばれてます。あ、どっちで呼ばれても大丈夫です。あは、はい、よろしくお願いします......」
「ソフィーリアよ、よろしくお願いするわ。ソフィーとでも呼んで頂戴」
私は寮長を見た瞬間トラウマな学校の先生を思い出してとっても低い姿勢で、ソフィーは相変わらず唯我独尊のような態度をしている。外から見たらあまりにも真逆の二人なので、仲がいいと聞くと嘘と思われるかもしれない。
怖くて顔が見たくないけど、雰囲気からするに怒っていることだけは間違いない。なんでソフィーはこの空気の中でこんな堂々としていられるのか聞いてみたい。
多分、私だからに決まってるじゃないって言われるだけだろうけど。
「はぁ、ソフィーにノルンね。了解、二人ともここを右に行って一つ目の部屋だから、はいこれ鍵」
「あの~」
「なんだい!?」
「ひゃいっ!いや、あの、怒らないんですか?」
はぁーとため息をつく寮長。こめかみを抑えているその顔は本当に屈辱でたまらないという感じだ。
「ここで遅刻の一つで怒ったって意味ないんだからね、もう私はあきらめたよ」
「そうなんですね、ありがとうございます」
とりあえず言われた通りに部屋まで向かって荷物を片付け始める。
服と錬金道具、それと軍から許可をもらった装備、武器ぐらいしかないので案外早めに終わった。
「ソフィー」
「なに、ノルン?」
「だいぶ、やばいところに来たみたいだね」
「そうね、先が思いやられるわ」
暇だったので寮内を探索することになり、ベッドから立ち上がってドアを開けようとした瞬間何かが私のお腹に思いっきりぶつかってくる。
「うわぁぁぁっ!」「ちょっ!?何!?ノルン大丈夫!?」
「えっと......うん私は大丈夫なんだけど、相手の方がちょ~っとまずいかも」
私はドラゴンの肉体だったから痛くもかゆくもないが問題は相手だ。ぶつかった拍子に吹っ飛んで廊下に倒れている。
急いで駆け寄って意識の確認を取ろうとした瞬間相手が目覚める。
「君!すごいね!何その肉体!?中に何か着てるの!?」
目覚めた瞬間ものすごい早口でなにかをしゃべりながら私の肌に触れる。
ちょっ、ちょっとそこはやめっ、くすぐったと悶えそうになる私を見てソフィーが勢いよく相手の手を引きはがす。
ソフィーも私と同じ身体だからか引きはがされた手を痛そうに抑えている。
「ちょっソフィーやりすぎ!」
「あっ、ごめんなさい。ちょっと頭に血が昇った、みたい」
「大丈夫ですか?てかあなただれですか?」
「あっ、うん大丈夫!これぐらいの傷だったらこれで解決、よっ!」
そういうと相手は鞄から絆創膏を取り出してぺたぺたと張り付ける。
張った瞬間緑色に輝いて、腕が感知していた。この子、錬金術師だ。ってことは、寮生だなこいつ!
「ふぅ、ごめんねいきなり!好奇心がちょっとね!君たちのことは聞いてるよ!ソフィーちゃんとノルンちゃんでしょ、大犯罪者なんだって?魔物を許可なしに狩ってたらしいけど!あはは!激やばー!」
悪い人じゃないんだろうけどちょっとうるさいな。
同じことをソフィーも思っていたらしい。
「わかったから、あんたは誰で、何をしに来たのか教えてくれるかしら」
「あっ、そうだね!私はエルトラン!錬金術師エルトランだよ!新しい寮生祝いに食事ついでに交流会を開くから!誘いに来たの!もう準備はできてるから、行こう!エントランス奥の食堂でやるから!」
エルトランと名乗った少女は私たちの返事も聞かずに走り去っていく。
「どうする?行く?」
「行くしかないでしょうね。はぁ、最初っからこれって、大丈夫かしら」
私たちは衝撃的な出会いに困惑しながらも食堂とやらへ向かった。
多分ソフィーも一緒だろうけど、ほかの人はもっとまともであることを祈っていた。




