第30話 ドラゴン狩り
ドラゴンが空中から炎のブレスを吐いてくる。
以前までなら回避するために隠れなきゃダメだったが今は耐火を付与した水を飲んでいるため我慢しきれないほどじゃない。
念のため火ネズミの羽衣を羽織りながら炎の中を潜航する。
周りが全く見えないがとりあえず最後に見えたドラゴンの方向へまっすぐ進み続ける。いくら対策したとはいえ火力は膨大で、サウナにいるような気分だ。しかも空気が乾燥してるから呼吸の度に喉が焼けるように熱い。
三十秒ほど経過したころ、ドラゴンが炎を吐くのをやめて私たちがいたところを見る。消し炭になったと思い油断している今がチャンス。
羽衣をしまって靴の機能の封印を解除する。
「ソフィー、靴の解除できた!?」
「もう出来てる!気づかれる前にいくわよ。3、2、1!」
錬金術によって跳躍に特化させた靴の機能をフルに開放して飛び上がる。着地を一切考えない仕様のおかげで五十メートル上まで上昇しドラゴンの背中が見える。
私は腰にひっかけていたアンカーを射出して、ドラゴンの背中に固定した。込めたエネルギー分しかアンカーの張り付き機能が稼働しないのでここからは時間勝負だ。
時間にして約二分。長くはないが私たちが狩るには十分すぎる。
完全に油断していたドラゴンがパニックに陥って暴れる前に、アンカーの紐を共有させないと、ソフィーが落ちる。
自由落下をするソフィーの方へアンカーの片方の紐を投げる。
紐部分は腰につけたベルトに張り付けられる仕様だ。
「ソフィー!こっちにアンカーを打ったから!共有早く!」
時を戻して挑戦している時に一度振り落とされて死んだから、しがみつくための風よけの鈴と、固定するためのアンカーを用意していてよかった!記憶より暴れてる!
「ノルン!共有終わったわ!さっさと決めるわよ!」
なんとか無事に済んでとりあえず背中にへばりついている。
ここからは単独行動で、私が喉の方、ソフィーが羽の方へ向かう。
なんとか競り落とせたアダマンタイト製のナイフで私が逆鱗に一撃を与えて、ソフィーがそれを阻止するドラゴンの動きを止めるためドラゴンの飛翔に干渉する。
私が逆鱗のある場所へ向かう間に、ソフィーがドラゴンの羽に刻まれた飛翔魔法を阻害するアイテムを使用する。
うまく飛べなくなったドラゴンがパニックに陥り自由落下を始める。地面に着く前に魔法が復活するだろうけど、もう着いた!
ホルダーにしまっておいたナイフを取り出す。
しっかりと逆鱗の位置を確認して、狙いを定めて。
「これで終わりだー!!!!」
勢いよく突き立てた。
ドラゴンが悲鳴を轟かせる。耳栓なんて用意してなかったから耳、鼻から血が出る。とっさに塞いだが間に合わなかったか。
「うぐぅっ!」
不調を訴える体をアドレナリンの力に甘えて無視し、ソフィーがいるアンカーの下へ向かう。この後着地するためにはソフィーに持ってもらっている即時展開式の着地用マットが必要だからだ。
時計を見ると時間は残り十五秒。合流できさえすれば間に合う。急げ!
「ノルンー!」
ソフィーが私の方へ手を伸ばす。
あとちょっと、あとちょっとで終わるから。
ボロボロになった体をなんとか抑えてソフィーの手をしっかり握る。
「やったのね!?」
「うん......あいつの喉に、しっかり刺してやったよ」
ソフィーがバッグからマットを取り出して、地面に放り投げる。
私は体が動かないので、ソフィーに補助してもらいながら一緒に飛び降りる。
徐々に体が地面に近づいていく。地面にぶつかるんじゃないかと不安になった瞬間、マットが展開されて勝利した私たちを祝うように包み込む。
「生き、てる?」
「ええなんとか。そっちも無事みたいでよかったわ」
マットから這い出て互いの安否確認。どうやら私たちは成し遂げたみたいだ。
赤く輝く太陽に照らされて、私たちは固く抱き合った。無事に生き延びたこと、ドラゴンを討伐できたことをかみしめるように。




