ゆめ
いつも寝ている裏側の黒いあの子
いつも寝ている脳天気な白いあの子
現実はどっち?
目が覚めると病室で、目が覚めると密閉空間で...目が覚めると腕に点滴がついていて、目が覚めると監視カメラに常に監視されていて......目が覚めると、黒髪ウルフカットの少女が鏡越しに自分を見つめていて、目が覚めると、白髪長髪の幼女が鏡越し自分を見つめていた。
どっちが本当の私で、どっちが現実だなんてわかんなかった。分からなくてもいいかと、思っていた。
黒髪ウルフの私は、高橋癒夢という名前で、高校2年生...17歳だった。
父母欠けることなく一人っ子で、普通平凡ありふれたそこら辺にいる青春謳歌しているJKでもあった。普通の高校に通って、時には友達とサボってみたりして...。
体は弱いとかではなく、むしろ強い方。だから、病気で入院しているわけでは、無い。
だけど私は3ヶ月前から病室から出られなくなっている。
秋口にここに入り、気づいたら窓から粉雪が見れる季節になっていた。
癒夢の周りから聞いた話と、記憶を繋げるとなんでも私は、3ヶ月前4階の空き教室...今は使われていない教室から飛び降りた、らしい。記憶が曖昧で、なぜ飛び降りたかは思い出せないが、飛び降り一命を取り留め、そして今、私は1日の半分を睡眠に費やす生活をしていた。
正式に言うと、''費やす''ではなく''せざる得ない''...起きることのできない体になってしまっていた。気づいたら意識がなくなり、夢を見る。夢を見ているあいだは何をされても目覚めることは出来ないし、夢を中断することも出来ない。ねている姿が死んでいるのでは?と心配され、何回かナースコール押されることもあったらしい。起きてすぐ行動できる訳でもなし、睡眠時間が決まっている訳でもなし、起きる時間も寝る時間も不明。急に抵抗ができないレベルの睡魔に襲われる...という訳では無いのが難点で、どんなに目が覚めていても、意識がはっきりしていても、気づいたら寝てしまう、意識がなくなってしまい、こんな身体になってしまってから、学校やらバイトやら......家に帰ることやお外に出ることや、病室に出ることが難しくなってしまっていた。いつ意識が途切れるのかわかったものではないから、起きている間に食事を取り、母親などに体調などを報告し、起きている時間を記録したりしているが、書いている途中に意識が途切れることが多く、体重は減り、記録はほぼ取れず、母との連絡も1ヶ月前の連絡で途絶えてしまっている。
それが最近の私、癒夢だ。
長くリアルな夢から覚めたら、病室で、少し冷たい夜風が入ってくる。この風も気づいたら感じなくなり、布団に倒れ込んでいた。
「こっちはどれくらい続くかな...?」
ガサガサになってしまった声をポツリと零して見る。たまには自分の意思で瞼を閉じてみよう。
そして、目を覚ます。
天井を見る。病室とはまた何か違う、異様な程に白い天井。手を見る、癒夢に比べ一回りほど小さな手の平。
身体を起こすと頭に違和感を覚える、とても長い白色の髪。
白髪長髪の私は、話儚 夢という名前で、年齢不明、学校に通っているのかも不明...ただ、見た目は小学生3年生くらい、8〜10歳あたりの背丈で、瞳は黒ではなく薄いようなミント色。
明らかにこっちが夢だと思う。けど、リアルなのだ。話す声も、痛覚も、感情も重さも何もかも、現実と大差ないのだ。だから、困る。非常に困る。癒夢と違って、いめは動きやすく行動時間も心做しかこっちの方が長い気がする。
ベットから降りようと思い、ベットの端に足を避ける。と、足に何かがぶつかる。
何かと思い見てみると、黒色の頭がベットに顔を疼くめ、おそらく寝ている。
いめは、癒夢と違って交流が多い子だった。
今のように、病室?に目が覚めたら誰かがいるということは、癒夢には決して起こることはなかった。
黒い頭のねぼすけさんを起こさないように丁寧に避け、ネットから降り、点滴を杖代わりにして、部屋から出る。癒夢だとできないことがいめにはできる。
今のように部屋からでることから、ご飯を食べること、声を出して人と交流すること、運動、読書、おもちゃで遊ぶ、etc......。
本当に色んなことができた、現実なのではと何回も思った。けど、違うはず。いめは人間じゃない。そして先程いたねぼすけさんも多分...人間じゃない。
「いめさん?起きられたのですね」
目の前に気配もなく近づいていた、ふたつ縛りの女性。緑の瞳に焦げ茶の髪の毛、優しい瞳を持つ、ここの管理者。
「どこに、行かれるのですか?」
優しく、子供に話しかけるように、私に話しかけてくる。
彼女はサナさん。私がここに来た時からお世話になっている人...多分この人も人間じゃない。いつもにこやかで、優しい声が印象的。
「いめ...さん?」
今のように声掛けに無反応でいると、不安そうに顔を歪め、私の顔を伺う。多分この人高校行ったらモテる。
「...あるきたくって、お部屋、でました。」
今ではもう慣れた甲高い幼い声が廊下に微かに余韻を残す。見た目以上に幼いのか、呂律が上手く回らないのと、息継ぎが必要になることがあり、どうしても子供っぽくなってしまう。これでも良くなったほうなのだ。
サナさんの顔が柔らかくなり、次第にぼやけてきた。
(眠たいのかな私)
視界がぐらつくと同時に、部屋の扉が開く音がする。
「いめ...どこ?...おかし......作ってきちゃったのに...」
ぼやける視界の中、仮面の少女が私の名前を呼んでるのがわかる。マシオおねーさん...料理が上手で、それで....なんだ...っけ......。
目が覚める、天井を見るといつもの病室。
いめは思考も抵抗できないほどの眠気に犯される、癒夢は突然意識が途切れる。これが違いで、夢と現実かわかんなくしているところだ。
いめのときは行動ができるから、少しでもいめのこをと知りたい、から今日も私は風を浴びつつ記録をできるだけ取る。
きっと、こうなってしまった原因がいめの世界にはいる、何故かそう確信している。
また、意識が朧けになり、天井を見る、意識がぼやけ、天井が代わり病室になる。
いつか、いつか終止符を打てるように、抵抗をする。
趣味だから!許して!変だと感じるよね!?ごめんね!!?多分続ける。がんばれぇ...