75. うつけは母に会う!
レンの一言が、キッカケとなったのかレンに非難を浴びせていた大臣達は、黙り込んでしまった。
大臣にとっては、オレジアナ公国が絡んだ条約を嫌がったみたいだが、そんなちっぽけなプライドは貴族以上の人間が抱いている感情であって、国民の殆どはどうでもいいことだから。
だって、対立しだしたのって、数百年前の出来事だ。
時間が経過すれば、対立が激化するか風化されるかのどちらかだが、二国の対立は王国内において後者だ。公国内がどうかは、知らない。
というか、数百年間対立していたのなら戦争が一回でも起こっていてもおかしくない。けど、起こっていないということは、国民はこの対立に関しては『どうでもいい』という認識なんだろう。
皆が、黙り込んだのを見て、レンは父上に目線で『終わりにしませんか?』と訴えると父上も納得して外遊の報告会は終わった。
大臣達は、足早に会議室を後にして行った。父上も会議室を後にして、ここには、レン・マナ・サヨの三人だけになった。
「いや!いや!サヨのような、大臣が増えて欲しいものだよ!」
レンは、サヨに訴えかける。
「時間は、掛かるんじゃないですか?教育改革から始まるとなると、教育を受けた子ども達が、政治に関われるようになるには少なくても十年は、見ないといけないと思いますよ??」
「最大のネックは、そこなんだよなぁ~~」
三人は、会議室を後にして廊下を歩きながら話し合う。僕とサヨが、右隣で歩きマナが僕の左後ろに付いて歩いている。
「あぁー母上を、政界から追放したのかなり大きいなぁ~~」
「首相、大変そうですね」
「大変も大変!僕が、何回『書類には必ず目を通してからサイン!』って言っているのに、治らないしさぁ!最近は、僕が目を光らせていたから良かったけど、二週間外遊で居なかったらまた、これだよ……」
「では、母上様を残せばよかったのでは?」
「解り切ったこと言わないでよ……父上を排斥して母上を残せば、一気に内戦勃発だよ」
「そうですかね?」
「血筋だよ!血筋!父上は、王族の直系の血筋だけど母上は、王族への嫁入りでしょ?父上を排斥すれば、母上がもと居た貴族家が、僕を利用して王家を乗っ取ったという大義名分を掲げての内戦の可能性も加味したら母上を排斥するしか無かったということ」
「血筋………厄介ですね、貴族たちは王族の血筋を重んじますもんね」
「しかも、王家の血筋を引いてる子どもの中で、取り入りやすい子どもを王位に就けたがるんだから質が悪いよ」
レン自身、政界に『父上と母上』のどちらを政治力で見て政界に残すかと言われたら、間違いなく『母上』だ。
しかし、血筋などを総合的に判断したらやはり、『父上』という判断になった。
あぁーほんと!血筋って、面倒臭い!!
時刻は、既に二十時を過ぎていた。サヨとは、途中で解れて、レンの隣にはマナが居て一緒に歩いている。庭園に差し掛かった頃、レンは突如足を止めた。
「レンくん?どうしたの?」
「母上、起きているかな?」
「時間的に、まだ起きているんじゃない?」
「マナは、母上と直接会ったことは無いよね?」
「うん」
「じゃ、会いに行くか!!」
サヨと話していて、久しぶりにお話して母上に会いたくなったのであろうレンは、マナを連れて母上が過ごしている離れへ向かう。
離れに到着すると、部屋の明かりは着いている。耳を澄ませてみるが、室内からは女性二人の話し声が聞こえる。
シオンは、来ていないようだ。シオンが居た場合は、兄弟げんかに発展する恐れもあったので、シオンが先に来ていた場合は、後日に改めようと思っていた。
扉の前に立ち、ノックをする。
コン♪コン♪コン♪
「??はい!」
この声は、母上専属のメイドのサユリだ。夜も遅くなっていっている中で訪問だったので、一瞬の間が開いて出迎えが来た。
「はい!って!!」
「サユリ?誰が、来たの??」
サユリさんが、ビックリしたのを不思議に思った母上が、誰が来たのか尋ねてきた。
「サユリさん!夜分遅くに、すみません!今、母上とお話できますか?」
「レン様!お久しぶりです!」
「えっ!レンが来たの!!」
部屋の奥から、母上のテンションが上がった声が聞こえた。
「レンが来たなら、部屋に入れて!お話したいから!」
母上からの同意を得られたので、サユリさんの案内でレンとマナは部屋に入る。母上の座っている向かいの椅子に腰かけると、サユリさんが、マナ用の椅子を持ってきてくれたので、マナも座る。
サユリさんは、別室に移動していった。
「母上!お久しぶりです!」
「久しぶりだね!久しく合わない間に、『首相 兼 教育相』っていう大臣になっているし!あっという間に、見習い期間終わったね」
「まぁ、いきなり父上から『王位継承』を言われましたからね……正直、『何を考えていらっしゃるの?』って思いましたよ」
「それは、グリアナ帝国のスパイ?」
「母上は、ご存知でしたか!」
「そうだね~私も何度も、トクヤに進言したけど聞く耳持たなかったからね!それで、レン!グリアナ帝国とオレジアナ公国との『三国間条約』の本当の狙いは??」
「母上の想像通りです」
レンは、母上と久びりに顔を合わせたが、親子の会話とは程遠い政治の話を繰り広げている。
そんな、二人を見てマナは……
『レンくんの政治家としての才覚は、母親譲りなのね!』
と一人、心の中で感心していたのだ。




