67. うつけの問い!
レンによる質問攻めに,セペス伯爵は答えられずにいる。いや,答えられないのだ。それほどまでにレンが間髪入れずに,セペス伯爵への質問を続けているのだ。
レンの様子は,一見,冷静に見える。過去,オーティズ公爵家やココノエ子爵家に見せたような様子ではない。
今までの,レンはキレた時には,他人が怯むような『恐怖』の雰囲気をまとっていた。
しかし,現在のレンは違う。冷静に,要点を付く質問を投げかけて相手のメンタルを削っていくといった様子だ。セペス伯爵もレンの質問攻めに,返答の内容を考える余裕が無さそうだ。
そろそろ,レンを止めないといけない所だが,現在,レンの隣に居るリーナと護衛として居るマテオは,雰囲気に完全に呑まれており止めれそうになかった。
やはりと言った所だ。レンの第一秘書官であり,レンの相棒のマナがまずリーナの方を優しく叩く。
「マナ??」
「リーナ!よく,働きました!凄いよ!私には,リーナのような仕事は出来ないから凄いよ!後は,任せて!」
マナは,リーナをフォローして後ろに,移動させレンの隣に立つ。ここからは,『私の仕事だ!』と言わんばかりに。
マナは,ハリセンを手に持ち,振りかぶる。ただ,レンを止めるだけでは,セペス伯爵がレンに怯み正確な返答が出来ない可能性があることも考慮すると,この場で,最適解な止め方は……
『ハリセンでレンくんをしばく』
という結論に至ったようだ。
パシン♪
部屋中に,ハリセンがレンの頭を弾いた音が響く。部屋に居た人間の眼が,マナに向く。そして,マナはすぐさま,皆の目線をレンに戻すように動く。
「いったぁ~~い!!マナ!今日は,僕,冷静だったよねぇ??」
「レンくん……確かに,冷静だったけど質問攻めしすぎ!そんなに,一気に質問したって答えられないよ!!」」
マナの手腕によって,レンは冷静さを取り戻した。この止め方は,二人の信頼関係がなせるものだ。
「すまない!予想以上に,疑問に感じていたことが多かった!順に聞いていこうか!」
「はっはい!」
ここからは,レンとセペス伯爵の討論となる。
「一つ目!エサの価格が,ここ数年高騰しているにも関わらず報告をしていなかった理由を聞けるかな??」
「報告を怠ったことに関してまず,謝罪致します……何とか,基地内で対応出来ないかと対策を練っておりました」
「それで,何かいい対策思いついたの??」
「いえ……」
「では,そこが上に報告をするタイミングではないのでしょうか??物価の高騰は,王政側が対処する仕事です……基地内を視察していた際にも貴方の口から似たような事を聞いた覚えがあります」
「……申し訳ございません」
一つ目は、レンの圧勝に終わった。
ここで,一つ確実になったのは国防省の人間がこの件を握りつぶしたという事実は無さそうだということだ。
「二つ目!牧場の人の情報では,エサの価格は大口の仕入れ先への仕入れ量が,減少したことが影響して在庫過多で,値下がりが起きているという情報がある……君の口からはエサの仕入れ価格が高騰していると聞いたが……この矛盾はどう説明する??」
「それは,恐らく牧場の人間の報告に虚偽があるのではないでしょうか??」
「なるほどね~~でもさ!おかしくない??」
「何がでしょうか??」
「税金を投入している国軍がエサの仕入れ量が減る位エサの価格が,高騰しているんだよね??」
「はい!そうです!」
「なのに,王国内の酪農家達は苦しんでいる様子もない……それに,それほど高騰しているのに王政内に情報が来ていないこと自体がおかしいと思うのだが??」
「いやいや!王族の人間が,来たら見栄を張ろうとしますよ!国民にとって,王族は崇めるそんざいですから!!」
「誰が,僕自身が休憩で牧場を訪れたと言ったの??」
「先ほど,レン様自身が……」
「僕自身ではなく,兵士がエサの補充に行ったんだよ??兵士が王族の護衛の兵士かなんて,酪農家の人は一見しただけでは,解らないと思うんだけど」
「…………」
いつものパターンだ。何か隠したい……けど,隠しとおすだけの返答をする材料をどんどん削っていくレンの質問にセペス伯爵に残された材料は無いに等しくなっている。
返答を考えるのに時間を要する。実質的に,この二つ目の討論に関してもレンの圧勝だ。
レンは,セペスに真実を話すように催促する。
「セペス伯爵……黙り込むという事は,僕に虚偽の報告をしたという事で間違いないかな??」
過去の貴族は,この状態でも尚,言い訳を並べて悪あがきをしようとしていた。
レンの頭の中にも,セペス伯爵も同じパターンになる可能性も頭に過ったが意外な展開になる。
「レン様……申し訳ございません……虚偽の報告を致しました……大変申し訳ございませんでした」
「おぉ~~素直に認めたのね!!意外も意外!」
セペス伯爵は,食い下がることは無くあっさり虚偽の報告を認めたのだ。レンも少しビックリしたが,表情を一切変えずに質問を続ける。
「では,何で虚偽の報告を行ったのかな??」
「はい……家族を守りたい一心で,虚偽の報告をしてしまいました」
「ワイバーンが,集団で栄養不足になった原因は何かな??」
ここから,セペス伯爵により今回の一件の真実が語られた。
ワイバーンの集団の栄養不足の原因は,人為的に行われたということ。エサの仕入れ量を大幅に減らしていたそうだ。
何故,そう言った行為を行ったかという問いには,仕入れを減らして浮いたお金を家の資産としていたそうだ。
「立派な横領行為だね……王国としては,横領した金額の全額の返済を求めることになる」
「そうすれば,今回の一件は無かったことになりますか??」
「ここの代表は,間違いなく解任になるよ??横領しといて,尚もここの代表で居ようなんて考えてないよね??」
「そっそれは……」
どうやら,正直に話せば現状の地位は,保証されると考えていたのだろう……甘い考えだ。本来なら『国家反逆罪』を適用させたい所だが,現行の王国の法律では横領は,適用にはならない。
そもそも,横領を『国家反逆罪』に適応させるかでもかなりの議論が巻き起こることが予想される。
まぁ,この王国の貴族制度自体がかなり腐ったものになっているのだ。
レンは,取り敢えず軍部の掌握に動くのだった。




