4.うつけの怒り!
あれから、父上に王族として貴族領への訪問の際に、必要な心得などをこっぴどく叩き込まれた。まぁ、今回のリーゼンへの訪問に関しては、百%レンが悪いんだけど。
オノフェス男爵家には、事前に一週間程度滞在する旨を書簡で伝えておいた。父上には、今回の訪問を通すため三日間と伝え了承を得ていたため、あんなに怒られたのだ…!
本日は、レンの秘書官を決める日だ。翌日以降秘書官と共に、現国王の父上の元で、業務に励むことになる。
今日は、いつもの王城の応接室ではなく、大広間に呼ばれた。
大広間に入る前に、王城の門で、マナとリーナを迎え入れ自室に案内した後、レンは、コノハとリーヴァンと一緒に大広間に向かう。
大広間に付くと入口に立っている兵士が、扉を開け中に居る人物たちに合図を送る。
「レン王子!いらっしゃいました!」
大広間に居る、父上と母上以外の貴族は、皆頭を下げる。レンは、大広間の玉座の左隣の席に座る。右隣は母上だ。
玉座に座る、父上が今日の本題を述べる。
「本日は、我が息子…レンが我が元で業務に就く際の秘書官を決めるため、侯爵家以上の家の者たちにレンに相応しいと思う秘書官候補を連れて来てもらった!」
大広間に居る、侯爵家以上の貴族は五家居る。侯爵以上は六家だが、今の父上に仕えている貴族家は、二代に渡って王族に仕えることが禁止されているため、今回は対象外だ。
「では…各々レンに推薦する子を、紹介せよ!」
父上の号令から宰相の司会の元、それぞれの貴族家が紹介を始める。
「王子!我が息子…アレックスは、文武両道で主に対する忠誠心もあります…!」
正直、宰相が紹介する貴族名は、ほとんど聞いていない。この貴族達に、興味は無い…リーヴァンに調べさせて、今レンの前に居る五貴族のうち、四貴族は不正を行っている事実を握っている。
不正を行っていないと報告をうけたのは、ハービット侯爵家。五年前に我が国を襲った飢饉の際に、ハービット家の奇策により、乗り越えられた功績で、侯爵となった。
「王子…!我が息子…デリエスは、主に対する忠誠心があり…娘のメイは、夜のお世話も…」
「ヒノカ宰相!この、貴族の家名は?」
「はい、オーティズ公爵家ございます」
「ありがと~!続けて!」
秘書官候補の紹介を再開させた。
「続いて、ハービット侯爵家!」
「はい!」
ハービット侯爵家の紹介が、始まった。新鋭侯爵の為か、他貴族は興味が無いという雰囲気だ。レンは、逆に興味津々だ。
「王子…!我が息子サヨは…」
「王子…!王子に尋ねたいことがございます!!」
サヨが、父親の紹介を遮りレンに、尋ねる。
すると、大広間に居る兵士達は、刀や槍をハービット侯爵家に向ける。しかし、サヨは怯えるどころか更に、続ける。
「王子!この国において、今必要なことはなんだと思いますか??」
「王子!我が息子の非礼、お許しください」
へぇ~、このサヨという男、結構面白いな~まさか、この場でいい人材を見つけられるとは!収穫♪収穫♪おっと父上を止めねば…
「ハービット侯爵!!お主ら、あとで…」
「父上!お待ちください!」
レンは、父上の発言を遮りサヨに問いかける。
「サヨ!面白い質問するねぇ~!今回の非礼?は、不問とするね!」
「ありがたき幸せ!」
「では、質問の答えだけど、この国において今必要なことはねぇ~五つの改革!」
「それは??」
「ご飯・行政・教育・軍事…あと一つは、この場では言えないけど…サヨが考えていることと同じだと思うよ?」
「お答え頂きありがとうございます!」
これで、全ての秘書官候補の紹介を終えた。同時に、レンはリーヴァンに、マナとリーナを大広間に連れて来るよう命じた。
「みな、いいアピールだった!レン!この中から、自身の秘書官にしたい者を選べ」
「この中からでしか、ダメなんですか?」
「何?侯爵以上の家柄の秘書官候補は…」
すると、大広間の扉が開き、リーヴァンが帰って来た。その後ろに、マナとリーナが歩いている。玉座の前にくると二人が、リーヴァンの前に立ち父上と母上に挨拶をする。
「お久しぶりでございます!オノフェス男爵家が三女リーナ=オノフェスと申します!」
「お初にお目にかかります!マナ=リグレットと申します」
二人が、挨拶を行った。マナは、この短期間で貴族の挨拶を身に着けている!偉い!偉い!
「男爵家に…腕章が無い…!平民風情が何故この場に!おいやれ…!」
オーティズ公爵家の当主の号令で、一人の兵士が刀を抜きマナに斬りかかる。
レンは、即座にマナを守りに出た。腰に忍ばせている刀を抜き兵士が振る刀を弾く…
「お前……今誰に向かって刀を振った??」
「いえ……王子、どうにか命だけでも、お許しください!」
「うるさい……!!善悪の判断が出来ない兵士は、ただの暴徒と同じだ……おい!こいつを捕らえろ!沙汰は追って伝える、覚悟しておけ!」
「どうか…!どうか…!命だけは…!」
マナに斬りかかった兵士は、他の兵士に連れられ大広間を後にする。
レンは、今物凄い怒りの感情を覚えている。こいつら、今の生活があるのは誰のお陰だと思ってやがる……
「父上……、確認したいことがございます」
「……なんだ?」
「秘書官を任命するこの日から僕は次期国王として、務めることになりますよね?」
「そうだな」
「僕に、与えられる権限は…?」
「法案の決定権を除き、国家反逆や王家に対する反逆を働いた者を罰する権限も与えられる」
「……ありがとうございます、父上」
レンは、マナを斬るよう命じたオーティズ公爵にむけて怒りの言葉を発する。
「オーティズ公爵………あなたは、何をしたかわかりますか?」
「おっ王子!!私は、ただ王家のためと思って」
「はっ?王家のため?マナが王家に何かした?……したなら、今すぐ内容を答えろ!!!!!」
「そっそれはぁ……」
「答えられる訳、無いよな……オーティズ公爵は、ただ単に、平民が気に入らなかっただけで、父上が居られる御前でこのような愚業を行ったのだから!」
「王子の門出となる場に、平民が…」
レンは、怒りがピークに達し、刀をオーティズ公爵の首元に向ける。
「ひぃぃぃぃぃ!」
「お前は、周りが見えないのか?マナにリーナは、僕の執事のリーヴァンが連れてきた!!この意味わかるな??」
ここまで、だんまりを続けていた母上が、話し始める。
「オーティズ公爵……この二人は、レンの連れてきた人……つまり、王族が招待した人たちです……平民だろうと王族が、招待した客人を斬り捨てようとしたことに、気づきなさい!」
オーティズ公爵は、母上の言葉に顔をさらに、青ざめる。
「レン、オーティズ公爵に向けてる刀をしまいなさい…罰するなら法に則りなさい!」
レンは、刀を鞘にしまい、オーティズ公爵に向けて発する。
「オーティズ公爵、王家どうこうで無く、貴族が罪なき国民に斬りかかったことは、重罪に値します、定めは追って伝える!捕らえろ!」
兵士が、オーティズ公爵を連れていき、オーティズ公爵の息子と娘だけが、その場に残った。
大分、空気が重い…。いよいよ、秘書官任命に移る。