260. 嬉しい事
「結婚式は、六月の中旬にする事にしたよ」
「!!ほんと!!」
マナは、誰が見てもわかる程に、目を輝かせた。
「ホントだって!そんな事で、嘘つかないよ」
「めっちゃ楽しみ!」
本当に嬉しくて楽しみなのだろう。
何時もの口調が、百八十度変わっている。これもこれで、可愛いので文句はない。
「衣装合わせとかかも急ピッチになると思う」
「うん!!」
結婚式を六月にした理由は、主に政治的な理由がほとんどを占めている。
六月以降に、各地方の代表を決める選挙を行うためだ。
そのための法案を密かに通して閣僚に対しては、箝口令を敷いて情報が漏れないように気おつけた。
そこからは、忙しくなるので、それまでには済まして起きたいと思ったのが一つの理由。
二つ目の理由が、レンとマナの誕生月なのだ。
マナが、六月四日が誕生日で、レンが、六月二十日が誕生日。
六月の中旬にすれば、二人にとって六月は特別な月になる。
それに、二人が初めて出会ったのも六月だ。
二人にとって六月と言うのは、思い入れが強いのだ。
「嬉しそうだね」
「嬉しいよ! レンくんと出会えた月に、結婚出来るんだし、記念日になるんだよ! 本当に嬉しい!」
予想外な程に、喜ぶマナを見て六月にして良かったと思う。
まぁ、はしゃぎ過ぎだとは思うのだが。
「予想外に喜ぶやん」
「そりゃ、好きな人との結婚式だよ?嬉しいに決まってる」
「孤児院の子どもたちも呼ぶ?」
「もちろん!」
こんなにも喜んでくれるなら、六月に結婚式の予定を組んだ事は、正解たと思える。
「ねぇ、レンくん。私からも一つ報告があるんだけど?」
「ん、なに?」
マナからの報告?
何だろう?
仕事関係なのか?
「まだ確証はないけど⋯⋯多分、妊娠したかも⋯⋯」
「え⋯⋯」
マナの言葉に、レンは、言葉に詰まった。
「まだ、お医者さんの検診受けた訳では無いからわからないけど⋯⋯女の子の日が来ないの」
「⋯⋯⋯⋯」
「レンくん?」
驚きのあまり、声が出ない。
脳内で今怒っている事を必死に整理する。
六月に、結婚式を挙げる事を伝えた。
そして、その流れでマナから妊娠したかもしれないと言われた。
行動は、一つだけだ。
「今すぐ⋯⋯」
「今すぐ?」
「今すぐ、先生に診てもらいに行くよ」
レンは、マナの手を取って王城内にある診察室へ案内する。
急ぎたい所だが、マナの身体に何かあってはいけない。
「マナ、体調大丈夫?」
「レンくん、気にしすぎ! いつも通りにしてよ。まだ、妊娠したって決まった訳じゃないんだから」
診察室に入って、女医さんに、事情を説明して診てもらう。
女医さんも、今回は、事情が事情なので、最優先で検診してくれる事になった。
やっぱり、国王の子どもとなると、次期国王となるので緊張も走るのだろう。
やっぱり、王族が暮らす場所なだけあり医療設備は充実していた。
そして、出産に関する医療も健在だったようで今は、マナは、その検診を受けている最中だ。
マナの近くで検診を見守っているが、マナ以上にドキドキしている。
「レン様、診察を終えました」
「どう?」
「はい。妊娠四週目だと思われます」
「やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「うるさいよ、レンくん」
パシン♪♪♪♪
嬉しさのあまり、レンは、場所を弁えず大声で喜んでしまった。
案の定マナからハリセン付きの注意を受けてしまった。
「せんせぇ、すみません⋯⋯」
「いぇいぇ、マナ様良かったですね! 旦那様にこれだけ喜んで貰えて」
「うん!まぁ、喜び過ぎだと思うけど⋯⋯」
「確かに」
一応は、まだ結婚式を挙げていないので、婚約者という立ち位置で、旦那では無いのだが、既に、王城内では、公認夫婦みたいだ。
「これから、出産まで夫婦と私で協力していきましょう!」
「「はい!」」
今日からは、この女医さんに大変お世話になることだろう。
「まず、二人に注意点ですが⋯⋯」
女医さんが、険しい声で注意をしてこようとしていたので固唾をのんで聞く。
「二人は、王族では珍しい恋愛結婚をなされるそうなので⋯⋯」
なんか、結構前置きがある。それほど、大事なことなのだろうか?
「今後、出産までは、Hな事は控えて⋯⋯いや、しないようにお願いします。お腹の中の子どもがビックリしてしまいますので」
「そんなの当然じゃない?」
「えっ?!」
女医さんは、驚いていた。
恐らく、妊娠した夫婦全員に言っているのだろう。
世継ぎを残すことは、王族の中でも国王になった人物が背負う重大任務のひとつだ。
国王になった人物が、子を残さずに死ねば確実に後継問題が起こるからだ。
そして、安心安全に子どもを出産するための教育も若くして受けてきた。
当然、妊娠中のそう言った行為が及ぼす危険性も理解している。
「レンくん⋯⋯そこは、知っていても「わかりました」って答えるのが正解」
なんだろう。
マナから、「政治以外はからっきしダメだこいつ」という雰囲気の視線を感じる。
「レンくん⋯⋯私だからレンくんの事好きになったけど、そう言った事に配慮出来ないとダメだよ?」
「⋯⋯!女医さんすみませんでした」
「いぇいぇ!」
マナが言いたい事を理解したレンはすぐに、女医さんに謝った。
お仕事の一環で言っているのだとしても少し失礼だったと思ったからだ。
「すみません⋯⋯このバカは、政治以外はからっきしで⋯⋯」
「いぇいぇ、国民は、レン様の政治で大分助かってますので!」
やはり、マナには頭が上がらないレンだった。
「それにしても、レン様は、マナ様に頭が上がらないんですね?」
「はい⋯⋯鬼よーー」
「ーーレンくん?」
「すみません」
少しの口答えも許されないようだ。
「惚れた弱みと言うの奴です」
「確かに」
女医さんは、何か同情の視線を向けてきたのが少し複雑だったレンだった。
良いなぁと思ったらブックマーク登録・★評価お願いします(>人<;)♪♪




