259. どっちから?
時は、流れ四月になった。
今日は、いよいよ、王国内で王立学校が一斉に開校になる日だ。
まずは、十歳から十五歳までの『王立学校初等部』の開校を皮切りに、六年後には、『王立学校中等部』を設立し十五歳から十七歳までの三年間希望者かつ成績優秀者が通えるようにする。
そして、十八歳から二十歳まで通える『王立学校高等部』も設立する予定だ。
レンの掲げた改革のうちの、教育改革の集大成とも言えるし、第一とも言える日が来た。
今日は、国内の王立学校の入学式なので、王都に設立される王立学校初等部に、レンが赴き、通信機越しで全国の新入生に挨拶をするのだ。
「レンくん。いよいよだね」
マナが、後ろからハグをしてきてくれた。
「そうだね。僕の目標に向かっての第一歩が今日からはじまるよ」
「ぼく??」
「すみません⋯⋯僕たちです」
「よろしい!」
日に日にマナに頭が上がらなくなっているがこれもこれで心地いいので、受け入れている。
中には、国王に向かって婚約者とは言え馴れ馴れしいと言われるが、それはレンが揉み消している。
本人が、気にしていないのだから他人にとやかく言われたくないものだ。
コン♪コン♪コン♪
「レン様、お時間です」
「はぁ〜い」
コノハに呼ばれたので、正装を整えて執務室を出ると、秘書官のマホと母上が居た。
レンの隣をマナが歩き、後ろに続く形で庭園に停めてある三台の馬車のうちの二台目に乗車する。
レンたちが、乗ったのを確認すると一同は、王都の王立学校に向かって走り出す。
王都の王立学校に到着して控え室に入り、学校の先生から呼ばれるのを待つ。
「本当に、出来たんやな。実感無さすぎてやばい」
「レンくんが、頑張ったからだよ?」
「そうだけど⋯⋯あぁ、王城に帰ったらリーナがお怒りなんだろうなぁ」
「あはは、「またお留守番!」って言ってたもんね」
リーナの散歩好きを舐めていたかもしれない。
「午後には帰るから、王都の街は散歩出来ないんだけどね……」
「そもそも、レンくんは国王になったから安易に、出歩けなくなったけどね?」
「国王の辛い事……」
コン♪コン♪コン♪
「レン様、そろそろよろしいでしょうか?」
学校の先生が呼びに来たので、付いて行って講堂の舞台袖で控える。
会場には、王都に住む十歳の将来有望な子ども達が、居た。
国家として、この子たちが、社会で生きて行けるような教育をしてあげる事が責務だと思っている。
教師陣にも頑張って欲しい所だ。
「それでは、レン国王様による、新入生お祝いの言葉です」
国内の王立学校の準備が整ったようで、通信機が作動し、レンが壇上に登る。
「皆さんーー」
レンは、子ども達に対して伝えたい事を伝えた。
君たちの努力次第で今後の君たち家族の生活が変わると言っても過言では無い。
そして、君たちが家族のために頑張る事が、巡り巡って国のためになる事。
だから、国第一ではなく、家族第一で考えて欲しいと。
そして、無理はしないで欲しいと。
無理なく努力して欲しいと。
「ーー今後の皆さんの活躍を期待して、挨拶とさせて頂きます」
レンは、一礼をすると壇上から舞台袖に歩いていった。
子どもを始めとする先生方からも拍手を受けながら。
控え室に入り、王城に帰るまで少しの休憩をとる。
「ごめんな、マホ。学校生活送れなくって⋯⋯」
レンは、自身の教育改革によってマホが、学校生活を送れない事を悔やんでいた。
「大丈夫!その代わりレン兄さんの特別授業を受けられるし?」
うん。
確実に、マナに何か仕込まれてるな。
以前までとは違いあざとさが生まれている。
マナ⋯⋯可愛い妹に何吹き込んだ??
王城に帰ったら、とある日程も含めて問いたださないと行けないようだ。
「マナ、伝えたい事と言いたいことがある」
「なに?」
「どっちからがいい?」
「意地悪だなぁ〜〜」
何時ものように、レンの部屋で二人きりで居る時に、意地悪ぽく質問する。
「じゃ、言いたいことから」
一瞬で、伝えたい事がマナ自身にとって良い事であり、言いたい事がマナ自身にとって悪い事だと認識したようだ。
マナは、悪い事から先に処理したがるタイプの人間だようだ。
「マホに、いらんこと吹き込んだな??」
「さ、さぁ~~て、なんのことかな」
やはり、マナが何か仕込んだようだ。
妙に、レンの心に刺さる言い方をマホがしたと思った。
レンは、心を許した人間からの煽てに弱いのだ。
そして、マナはその特徴を理解しているので、口喧嘩になろそうになったタイミングで、レンを煽てて来るのだ。
そうしたら、レンは大人しくなることを知っているからだ。
「マナ、何か言う事は?」
「……はい。マホちゃんに、レンくんの弱点吹き込みました……すみません」
「よろしい。では、伝えたい事を伝えようか」
「なに?」
マナは、すぐさま切り替えて、レンの言葉を待っている。
「結婚式は、六月の中旬にする事にしたよ」
「!!ほんと!!」
マナは、誰が見てもわかる程に、目を輝かせた。
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