231. 戦意喪失
不正貴族が溜め込んでいた、食料を国民に回しても、解決しない食糧問題。
もちろん、不正を働いた貴族には、今後の自分たちでの食料の買い付けを禁止し、国からの生活上必要最小限の食糧の配布にした。
これまで、散々に、領民の食糧不足問題を解決せずに、自分達だけたらふく食っていたのだから一日の必要最小限の食糧で生活しても問題ないだろう。
これまでの不正で、それだけの栄養は食べて来ただろう。
そして、隠れて、食料を買いだそうとした場合は、厳しい罰則を設けた。
ハットリ家の報告によると、隠れて食料を買おうとした貴族は、居なかったと……それもそうか、オーティズ家を、事も無残に、処罰したのだ。
安易に、不正を働けなかったという事か。
食料制限を受けた貴族は、国民以上に食料に苦しんだ。
自分達は、最大限の栄養を取り、領民にも食料を分け与えていた貴族とは、天と地ほどの差が出来た。
大元の問題。
王国の食糧問題は、国内・国外の両方の問題だ。
国内は、単純に、食料自給率が低いのだ。
王国の領地の中に、農業に適した土地が殆ど無いのだ。あるとしたら、旧グリアナ帝国との国境線付近の複数の村の土地が食料に適していた位しか無かった。
となれば、王国としては、食料は輸入に頼らざる得ない。
主な、輸入先は、旧グリアナ帝国だが、帝国は、他国に輸出するだけの食料品を生産さるだけの食糧自給率は、なかったはず。
簡単なカラクリだ。
食料は、実質的に、オレジアナ公国から輸入していたのだ。
直接、輸入は、対立している手前、出来ないと言う謎理論も働き、食料品は、
オレジアナ公国発 → グリアナ帝国経由 → ラインブルー王国着
という道筋を辿っていた。
オレジアナ公国から輸出された食料品は、一度、グリアナ帝国に卸される。そこから、ラインブルー王国が、買い付けるという形態をとっていた。
直接的に、公国に買い付ける事も出来るが、貴族がそれを邪魔していた。
だから、食料品の輸入を担当していた、人物は、帝国に公国産の食料品の発注をかけていた。
第三国を経由している時点で、食料品の値段は、市場からは、大分上がっている。これが、公国から直接輸入で来ていれば、帝国を通過する際の通行料だけで済んだ物を、帝国に一旦卸している時点で、実質的に、手数料を帝国に支払っている状態だった。
これは、公国も同じだった。王国とは別の商品だったが……
公国は、農業が発展している代わりに、モノづくり系が苦手分野だった。そして、王国は、モノづくりが得意だ。
公国も帝国経由で、王国産のモノを輸入していた。
帝国は、王国・公国のしょうもないプライド争いの手数料を吸っていたので、女帝一族は、かなり潤っていたようだ。
そして、両国は、帝国に頭が上がらなくなった。国内運営のための必需品のやり取りを帝国経由でしているからだ。
となれば、問題を解消する方法は、かなり複雑だ。
一番簡単なのが、公国との関係改善だが、王国は、公国との関係改善に前向きなレンが実権を握っているが、公国は、王国との関係改善に後ろ向きな人物が実権を握っている。
だから、スズカに目を付けた。
彼女のここまでの経歴をハットリ家に調べさせたら、味方にしやすい人物だと判断した。
時間も十分に有った。
反レン派の貴族は、現状の王国の政治形態では、身動きが取れない。だから、打開策を探しに探していた。
ハットリ家の人間から反レン派の貴族が、打開案を完成させつつある……しかも、それは、王国内が混乱するやり方で……という報告を受けた。
正直、そこまでしてまで、権力の蜜を吸いたいかとも思うが……
今、事を起こされては、元も子もないので、少しばかり時間を稼がせて貰う事にした。
王国と公国の関係改善の場に、父上を連れて行く事で、クーデターを防いだ。まぁ、軍部のTOPは、レン派の人間なので、反レン派は、軍部の掌握に苦戦……いや、出来なかった。
レン不在の間に事を起こそうにも、大義となる父上が居ない現状で、事は起こせない。大義の無い状態で事を起こせば、一族諸共、抹殺されかねない……
実際に、レンは、それをやってのけているからだ。
自分の身を案ずるなら、命を懸けてまで、権力の蜜を吸おうなんて行為は辞めて欲しい所だ。
そして、公国で、父上の対外国に向けて醜態を晒させた。
外国に行くのを怖がって、諸国からずっと王国に要人を呼び続けていた人物が、初めて外国に出たのだ、散々、移動にお金を使わされた周辺国は、面白半分に見ていた。
そして、公国の醜態をハットリ家の人間に命じて反レン派の貴族に伝えさせた。
戦意を喪失させたかったからだ。
だが、反レン派は、それでも計画を続行した。
帰国後の父上に真っ先に接触して、シオンに王位を継承させることを進言した。しかし、シオンに王位を継承させるのには、障害があった。
それは、レン第一王子の実績だ。
レンは、王政に入ってから、不正貴族を排除して国民を安心させて、オレジアナ公国と関係も改善したのだ。
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