229. 反レン派
「マホは、やっぱり気になる? 僕が、父上とシオンを暗殺することになった経緯」
「……はい。正直……気になります」
「わかった、今から話すよ。これは、今後の為には、何時かは知らないといけないことだから」
マホは、持っていたノートを開き、メモを取ろうとしていた。
この話の中でも、政治家としてやっていくために必要な事を汲み取ろうとしているのだろう。
「真面目だなぁ~~今から話すことは、完全な王家内での権力争いの話だよ?」
「……そ、そうですけど……王国内で何が、起こっていたかは、知っておかないといけないので」
なるほど。
真面目なマホらしい。
だからこそ。
「尚更、今から話すことはメモを取るな。この話は、決して外部に漏らしてはいけない話。この一件に大きく暗躍してくれたハットリ家にも箝口令を敷いているから」
「……わかりました」
マホは、メモ帳を閉じると、レンに手渡してきた。
レンは、受け取ると中身を数ページ覗いてから、自身の膝の上に置いた。
「よく、勉強しているね」
「ありがとうございます!」
「今から話すことは、勉強どうこうで、どうにかなる問題ではない話。その場の瞬時の判断でどうにかしないといけない話。自分が同じ立場に居ると思って聞いて」
「はい」
レンは、話し出した。
レンが、父上とシオンを暗殺する事になった経緯を。
「今から話すのは、一言で言うと、僕が首相期間に行われていた、王族内での権力争いの話。僕と父上・シオンが、権力を争った話」
◇◇◇
レンは、政治家としての才能を王政に関わりだしてから遺憾なく発揮してきた。
秘書官任命式において、王国法に反した貴族を問答無用で処罰したり、自分の両親まで罰したのだ。王国内の貴族達には衝撃が走っただろう。
特に、体たらくな先代、先々代から不正を働いていた貴族連中は、冷や汗を搔いていただろう。
『レン王子が、政治の実権を握れば、自分たちの生活が脅かせる』
不正を働いていた貴族は、結託した。
レンが、王政にデビューしての初仕事は、各貴族領を訪問して貴族領の実態に合わせて翌年の税収額を決定するといったものだ。
レン王子を政治の舞台から引きずり降ろす。
そのためには、この訪問で、レンに、政治家として生きる事への恐怖心を植え付けようとしていたのだ。
しかし、その計画は、ハットリ家によって筒抜けだった。
だから、レンは、ココノエ子爵家で事を起こしたのだ。
不正貴族達の企みは、レンが訪問計画の中で、最後に訪問予定の貴族家の近くで盗賊に乗っている馬車を襲わせると言ったものだ。
結託した貴族は、焦っただろう。
レンが、事を起こしたことに。
自分たちの計画が、筒抜けになっていたことが、はっきり解ったのだ。
そうなれば、後は、ハットリ家に頼み、証拠隠滅を図っている貴族の動向を抑えさせて、証拠を回収すればいいだけの話だ。
そして、王城に帰った後に、証拠を基に今回の一件に関わった貴族達は、全て取り潰した。
まぁ、レンの事を政治の舞台から引きずり降ろしたいと思う貴族は、氷山の一角だ。今回動いた貴族は、下っ端中の下っ端だ。
それをレンは、解っていた。
最初の作戦は、失敗した所か、下っ端貴族とは言え、かなりの自陣営の貴族が、レンの手で処罰されてしまった。
いわば、司令部的貴族と実行部隊的貴族の中で、実行部隊的貴族が挙って排除されたのだ。
実行部隊を失った司令部的貴族は、次の実行部隊を探しだす。
司令部的貴族が、目を付けたのは、簡単に付け込める父上と大好きな母親を政界から追放したレンを憎んでいるシオンに目をつけた。
まぁ、よく考えたものだ。
王族を実行部隊に取り込めば、父上の命令で、自陣営じゃない貴族も味方にすることが出来る。
ほんと、それを考えられる頭があるなら自分の領地経営に回して欲しい所だよ。
まぁ、元々、レンを政治の舞台から引きずり降ろしたい貴族の筆頭格は、父上に近い貴族家だったので、安易に父上を味方に引き入れる事は、可能だっただろう。
そして、言葉巧みに自分たちの作戦通りに動くように誘導する。
次に、反レン派の貴族が考えた作戦は、実に巧妙だ。
まずは、父上に、王位をレンに譲るように誘導して、レンに政治の実権を握らせることだ。
間違いなく、レンが政治の実権を握れば、自分たちの不正にメスが入る事が、予想出来るが、そこは、僅かに残っている実行部隊的貴族に、動いて貰ってかく乱させる。
そうすれば、政治経験の浅いレンなら少なからずボロを出すだろうと。そして、そのボロに付け込んで、レンの国内での求人力を低下させる。
そして、丁度いいタイミングで、再度、父上に進言するのだ。
「レン様では、この国をまとめる事は出来ません。王位を次男のシオン様に移されてはどうでしょうか?」
実際問題、旧貴族学校に、入学していたシオンの基には、父上に近い貴族家の子どもが、近づいていた。
ハットリ家に、見物させていたが、まずは、十二歳と丁度、性に関して目覚めるかの年齢の男に、比較的身体が、発達した女性を近づける。
そこから女の知り合いという名目で、貴族の次男以降の子どもを近づけた。
そして、シオンは、それにまんまとハマった。
反レン派の貴族としては、これで、準備は整ったと考えたはずだ。
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