217. イタズラ心
生活リズムと言うのは恐ろしい物だ。
いつも通りの時間に、目覚めてしまった。
でも、今日は、何時もとは違う。
目の前には、好きな女の子が眠っている。
朝が得意なレンと違い、朝は、弱い方のマナ。
綺麗で、可愛い顔で寝ている。
本当に、可愛いなぁ~~イタズラしたくなる。
ん?
イタズラ?
そうだ、昨晩、散々、からかわれた仕返しをする時は、今だな。
一瞬、マナがピクっとしたが起きた気配はない。
マナを起こさないように、布団から出ると、マナの尻尾を探す。
何と、ご丁寧に、布団から尻尾が出ていた。
是非、触ってくださいと言わんばかりに出ている。モフモフの尻尾。
マナいわく、許可を取ってくれたら何時でも触っていいよ(レン限定)だそうだが、一回も許可を取って触っていない。
何時も、急に触っている。
だって、普通に障るより、普段、凛々しいマナが、奇声を上げるのが、面白いんだもの。
ただ、難点なのはどこからかハリセンを取り出して、しばかれた後に、「許可をとって!」と怒られる所だけだ。
そうだ、イタズラの前に、ハリセンを除去しておかなければ……
マナが、部屋に持って来ていた私物を漁り(イタズラ後に、しれっと戻す予定……)ハリセンを発見して隠す。
これで、準備は万端。
マナが、普段、起きている時間の五分前まで、部屋の椅子に座って寝顔を眺める。
「気持ちよさそうに寝てるなぁ~~」
男と一緒に寝たと言うのに、無警戒過ぎる……それ程、自分の事を信じてくれている証拠だ。
だからこそ、無許可で尻尾を触るのに抵抗は……一切ない。
ここは、好きな女の子の可愛い顔を見たいと言う、本能に従おうではないか。
決して、昨日、散々、からかわれた仕返しをしようとしている訳ではない……まぁ、ほんの数十パーセントは、その気持ちがありますが……
そろそろ時間になったので、イタズラ執行の準備に入る。
マナの尻尾を一気に、鷲掴みにしてやった。
◇◇◇
私は、朝が、弱い……訳ではない。
レンくんが、起きるのが早すぎるだけなのだ。
起床時間には、しっかりと起きる事が出来るのだ。
ただ、今日に限っては、寝坊してしまうかも……
なんたって、やっと想いが通じた相手と一緒に寝ているのだ。
こんな幸せな時間をもっと噛みしめたい。
今日ぐらいは、この幸せな時間を噛みしめたいから寝坊も有りかな?
…………
何か、一瞬、寒気を感じたが、気のせいだろう。
恐らくは、レンくんがいつも通りの時間に起きたのだろう。
一瞬、戻りかけた意識を再び夢の世界に落としていった。
身体が、完全に起きるか、まだ寝ていたいかの狭間にやって来た。
悩む。
今日は、休養日だからもっと寝ても問題は無い。レンくんも、許してくれるだろう。
だけどだ、昨日、恋人になったばかりなのだ。
休養日の間で、もっとイチャイチャしたい気持ちもある。
この二つの気持ちが頭の中で葛藤している。
何だろう。
また、一瞬、悪寒が走った。
しかも、今回は、段々と強くなっている。
でも、大丈夫。
何かあっても、レンくんが守ってくれる。彼は、頼りがいのある男の子だ。だから、身を委ねて寝る事が出来る。
まぁ、少々のいたずら好きなのは、困った所だ。
ん?
さっきの悪寒がどんどんと強くなっている。
この感覚は……
「んぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
私は、飛び起きた。
この感覚は、一度だけ味わった事がある。
何時だったかは、忘れたが、私が、熟睡中にマホちゃんが、私の尻尾を鷲掴みにされた時に近い感覚だ。
触ったのは、マホちゃんだが、命令したのは、当然、レンくんだった。
その時の、レンくんの腹を抱えて爆笑している姿は、今、思い出しても少し……少しだけ、イラついたものだ。
尻尾を触る分には、問題ない。
触られると解った上で、触られた時は、気持ちが良いので、どうぞ、触ってくださいという感じなのだが、無許可で触られると、急に、変な感覚が体中を駆け巡ってしまうのが苦手なのだ。
そして、この王城内で、私の尻尾を無許可に触る人間は、一人しか居ない。
まぁ、尻尾を触る許可を出すのは、王国内で立った一人だけだ。
まぁ、その一人が、無許可で触りまくる人間だ……
さっき、私が味わった感覚の犯人は、間違いなく、昨日、婚約した相手……レンくんだ。
飛び起きた私は、反撃をするべくハリセンを取ろうとしたが……何時もの場所に無かった。
レンくんの様子を見ると……相変わらず、お腹を抱えて爆笑している。
っていうか、ハリセンどこ?……もしかして、ハリセンを没収された?そこのレンくんに。
「……レンくん。私のハリセンは?」
「ハハハ……。 慌てるマナ可愛い~~。ハハハ!」
この、レンくん、は、笑うのに必死で、私の話を聞いていない。
仕方なく、レンくんの頬を抓った。
「あいたた……なぁに?」
「……レンくん?二つ聞きたい事があります」
「なに!」
何だ、私は、怒っているのに、目を輝かせている。
「私のハリセンは何処?」
「いやぁ~~可愛いマナの反応見れたのに、ハリセンで叩かれるのは、嫌なので……隠しました!」
私は、予備のハリセンを取り出した。
勢いよくレンくんの頭目掛けて振り下ろした。
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