211. 無意識
「マナと、婚約した」
レンは、自分の口で二人の関係性の変化を説明した。
母上とマホは、ポカーンとして、レンの顔を見た後に、マナの顔を見た。
これまで、散々、マナから向けられる好意に対して、気が付かないフリをしてきた男の子が、急に婚約をしたと言うのだから、驚くだろう。
マナは、二人に、「レンの言っている事は、嘘じゃなくて本当?」という視線を向けていた。
マナは、頬を赤面させながら、一回、首をコクンとして、肯定の意を伝えた。
「「えぇ~~~~~~~~~!!」」
母上とマホは、二人して驚きの余り、言葉にならない声を上げていた。
しかも、レンとマナの顔を交互に見ながらと言う超失礼な行い付きでだ。
「えっ、マナちゃん。ほんと? レンの虚言とかじゃなく?」
「うん、そうそう! レンお兄様に、何か、弱み握られたり……」
おいそこの、母親と妹よ。
実の息子・兄を何だと思っているんだ。恋愛ごとに関しては、マナ一筋なんだからな?
「うん。……さっき、レンくんに、プロポーズされました。……返事は、もちろん、承諾しました」
うん。可愛い。
頬を真っ赤に染めながら、婚約した事実を告げている。
「「えぇ~~~~~~~~~!!」」
またもや、二人揃って驚きの声を上げている。
そんなに、レンとマナが、婚約したことが、意外なのか……それとも、レンのヘタレさをこれまで見て来た人たちからしたら何が起こったから解らないと言った所か。
何かのキッカケがあるまでは、複雑な迷路に入っていたが、キッカケを掴んだ瞬間に、直線迷路になる位の出来事か。
「あの~~二人にとって、僕などう、映ってんの?」
「「えっ。ただのヘタレ息子(兄)」」
聞いた自分が悪いが、母親と妹に鋭い矢を撃ち抜かれた気分だ。
ヘタレになりたくてなっていた訳じゃないのに……
「まぁ、マナちゃんに血筋的に、私たちは、もっと慎重にならないといけなかったね……」
「私もです……マナねぇちゃん。今まで通りの接し方で良いの?」
「全然、いいよ? さっき、レンくんが下手に出たんだけど……むずがゆくてね。今まで対等に接してくれたから、その方が、居心地が良いです」
マナは、素直に、今まで通りの接し方を求めた。
レンたち一族……特に、二代目の血を引いているマホにとっては、しっかりと確認しておきたい所だったようだ。
マナの返事を聞いたマホは、嬉しいのか抱き着いた。マナもそれを受け入れている。
マホは、兄二人の中で、生活をしてきた。
更には、政治に関わる人間は、殆どが男だ。だから、唯一、歳の近かったメイちゃんとも直ぐに仲良くなっていたし、マナがレンの秘書官になってからは、実の姉のように慕っていた。
「多分、レンくんは、私に王位を返還しようとしていたんだと思います……だから、先代から王位の継承を申し出られた時には、拒否したんだと思います」
自分の血筋が、初代様に繋がっている事を理解した時に、結論付けたのだろう。
確かに、その通りだ。
マナに出会って、惹かれて行って、妻に迎えたいと思ったその時に、マナの血筋が、初代様に繋がっている可能性が出て来た。
まずは、王国でも希少な、猫耳族だったこと。そして、それが、殆ど確証に近くなったのは、彼女の家名が、自分たちの旧姓である『リグレット』と名乗っていたからだ。
そこからか、無意識に感情にストッパーを掛けていた。
だが、マナは、そのストッパーをいとも軽く飛び越えて来た。
真実を伝えても尚、一緒に居たいと言ってくれたので、その気持ちに応えない事には男では無いと思った。
「でも、初代様……私の先祖様は、自分の意思で王位をレンくんの先祖様に、王位を継承したんです。だから、レンくんが正当な王位継承者だと思います……いや、正当な王位継承者です」
同じ事をまた、聞いた。
前回は、自分とマナの二人きり。
しかし、今回は、母上とマホが居る。いわば、証人にしたと言う所か。何とも小悪魔みたいな女の子だ。
「それに、私は、レンくんの事大好き。もう、離さないから」
マナの覚悟を示した……いや、これは、完全に外堀を埋めに来ている。
母上や妹の前で、何かしらの言質を取るつもりだろう。
「あぁ~~もう、小悪魔。そうやって、外堀埋めようとしているでしょ?」
「あ、バレた?」
マナは、舌をペロっと出した。
「おいお~い、レン。そこで、ヘタるなや」
「そうだ、そーだ!レンお兄様、女心解ってない~~」
そうだった。この場に男は、僕一人だ。
「うちも、離さないから……絶対に」
マナの思惑通り?
母上やマホの目の前で、言質を取らされてしまった。
まぁ、恥ずかしいだけで、全然、嫌では無いからいいんだけど。
「でもさぁ~~レンお兄様とマナ姉さんが、結婚して子どもが産まれたら、その子は、初代様と二代目様の両方の血を引いている超ロイヤルファミリーじゃん」
確かに、思った。
婚約が成立して、順調に交際していけば結婚して出産もあるだろう。そうなれば、その子どもは、これまで分岐していた、王国の王家の真の王家の人間になるだろう。
「何か、嫌だなぁ~~」
レンは、無意識にそう喋っていた。
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