202. 衛生面
「レン王子。そろそろ、お時間では?」
子ども達と話していたら、時間を忘れてしまっていたようだ。時計を見ると、既に、十六時三十分を越えていた。
今日、王城に出る事は、王城の人間は知っているが、夜遅くになると、王城勤務の兵士が、レンの捜索のために出動しかねない。
まだ、実感は湧かないが、一応は、国王なのだ。だからこそ、今回のデートに関しても、スバルからは、兵士を護衛に付けましょうと提案されたが、丁重にお断りした。
まぁ、スバルが、王城勤務になったのは、ほんの数か月前だったので、レンの幼少期の奇行?は、知らなかったのだ。
ハットリ家の人間が、陰で警護しているから大丈夫だよ。と納得させた。
だけど、十八時を越えると恐らく、自分を探しに兵を動かすと思うので、それまでには、帰らないといけない。
本当に、王家……しかも、国王となると自由がない……。
父上は、この不自由さを快適に思っていたのが、不思議な位だ。
好きな人とのデートでさえ、監視が付く。もし、この先、好きな人との関係が、発展し恋人になって、婚約者になれば、そう言う事もするだろう。
しかし、そんな時さえ、「最中は、一番防御が薄くなるから」と、兵士の護衛がチラほらとどうせ付く。
人間は、大勢で居る事が好きな人と一人で居ることが好きな人の二パターンがある。
レンは、後者……。一人で居ることが好きな人間なのだ。
その傾向は、王政に関わりだしてからも顕著に出ていた。レンの隣に常に居るのは、マナだけ。本来なら第二秘書官も、主の近くに居るべきなのだが、レンはそれを許していない。
リーナも、基本は、外にでて公務をする事が、性に合っているので不満は無いようだ。
本当に、気を許した相手しか、隣に置かないのだ。幼少期からレンに仕えていた、コノハとリーヴァンも、用事がある時以外は、別場所で仕事をしている位だ。
「そうだなぁ~~ごめんねぇ。王子様、帰らないといけなくなっちゃた……」
「私も帰らないと……」
「「「えぇ~~もっと、遊びたいよぉ~~」」」
子ども達から一斉に、残念がる声が出る。施設長も時間制限がある事を知っていたので、今日に関してはお昼寝の時間は、無しにしていた位だ。
「ごめん。また、時間作って来られるようにするから!」
「皆、安心して?レンくんは、絶対に来てくれるから!」
マナの言った事で、子ども達は、「絶対だよ」というお願いの目線でレンを見て来た。子どもの純粋無垢な目線で見られると断れる訳もない。
「また来るよ!」
そう言って、マナと共に、孤児院を後にした。
孤児院から少し離れた所で、マナはレンの手をチョンチョンとしてきたので、手を繋ぐ。マナの顔を見ると、「アピールしなくても気付いて!」と言わんばかりの顔だった。
「いやぁ~~楽しかった♪」
「うん♪ 子ども達、元気そうで本当に良かった♪」
マナは、孤児院が綺麗になり子ども達が快適に過ごしていた様子を見て安心したようだった。以前の孤児院は、国家からの支援が一切無かったので、お世辞にもその日食う物もやっとという状況だった。
王政に関わる前のレンが、王都の街の孤児院の存在を認識してからは、自身のお小遣いの範囲から支援金を渡していたが、それでも何とか、食べるものには困らなくなった程度。
衛生面が、壊滅的に、悪かったのだ。
一度、病気が流行ってしまえば、歯止めが効かなくなり、施設中に大流行してしまう。そのせいで、何人の子どもの命が失われたか……
だからこそ、綺麗になり衛生面も大分改善された孤児院を確認できたことが、本当に嬉しかった。救える命を救えたと思う。
「本当の本当に、孤児が居なくなれば良いと思っている。けど、それは、厳しいし不可能だと思う」
孤児ゼロは、理想論だ。
レンは、実現不可能だと思っている。例え、王国が今以上に発展して医療技術が世界最高になったとしてもだ。
国家が発展しても変わらない機能がある。それは、人は予兆なく死ぬという事だ。病に倒れて、医者に余命を宣告されても、それは、あくまで目安だ。突然、神様からのお迎えが来ることだってある。
親が子を捨てるなんて論外だが、子の親二人ともが、神からお迎えが来てしまって上で、祖父母も居なかったなど……どうしても孤児は出てきてしまう。
良い国家とは、孤児を責任もって社会で生きていけるまで教育出来るシステムが構築されている事が大前提だと思っている。
そのシステムが、構築されつつある事に、一安心する。
「レンくん。安心した顔してる」
「まぁ~~結局、公務みたいになっちゃたねぇ~~あはは♪」
確かに、デートと言う名の公務みたいだ。朝、公務を禁止にしたマナの事だから何かしらの思惑は、ありそうだ。
「何が、目的?」
「……目的なんてないけど?」
「いや、あるでしょ? 孤児院に来たら僕が、公務の顔になるの知っててデートコースにしたでしょ?」
マナも降参した。
「そりゃ、ゆっくり私との時間を作って欲しかったから。私をもっと見て!」
「うるさい」
レンは、ハリセンを取り出してマナの頭を軽くひっぱたいた。
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