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188. 本気

「何もあんな言い方無いんじゃない?二人は、レンの事を思って、言ってくれてんのに」


 エリザに誘われて、空き部屋に入ったが、開口一番、先ほどの対応について、苦言を呈されていた。


「仕方ないんじゃん。下手に書類を触られたく無いんだもん」

「二人、特に、マナちゃんは仕事が出来るんだし、ある程度任せても大丈夫なんじゃないの?触ってもいい書類かどうかは、あの子なら判断出来るでしょ?」

「でも。それじゃ~~ダメなんだよね~~」


 レンは、エリザの言った事が、正しい事だと思っている。


 トクヤも、書類仕事に関しては、秘書官に丸投げ出来る書類は、全て丸投げしていた。だからこそ、エリザにとってレンにも同じ仕事の仕方をして貰って、レン自身の負担軽減になればと思っている。


「何が、ダメなんだ? レンの仕事の負担を減らすためにもその方が、良いでしょ?」

「でもさぁ~~そうなると、マナやリーナに責任が、発生するじゃん」

「もしかして、レンが、全ての書類に目を通す理由って……」


 レンは、どれだけ面倒でも書類に関しては、全て目を通している。


 理由は二つある。


 一つ目は、情報の入手源だからだ。


 領主である貴族からの嘆願書でも王家が直々に見ないといけない書類と秘書官に全投げしてもいい書類もある。


 だけど、悪徳な貴族程、秘書官に全投げ出来る書類に、重要な要望を記入している事がある。現に、前国王のトクヤ時代は、そのような手法がまかり通っていたので、かなりの税金の無駄遣いだった。


 そして、レンが、首相に就任してからは、そういった手法が取れなくなった。


 レンは、しっかりと書類を確認するようになったからだ。不正を働いていると解った書類は、発覚した時点で、弾いていた。


 そして、秘書官に全投げしてもいい書類にほど、大事な情報が隠れている事もあるからだ。王国を運営していく上で、情報は大事だ。

 いくら、ハットリ家と言う情報網を有しているとは言え、それは、ハットリ家の人間の感性から見た情報。なので、こう言った貴族からの書類で、貴族目線の情報も得ておきたいと考えている。


 そして、マナとリーナに、書類仕事を全投げしたくない理由が、二つ目だ。


 書類全てに、目を通した上で、マナとリーナに仕事を振れば、最終的な責任は、レン自身に来るからだ。レンが目を通す前に、マナとリーナが書類仕事をすれば、最終的な責任は、二人になってしまう。


「最終的な責任は、レンが負える状況を作っておきたい……と?」

「そう。秘書官は、あくまで王族の仕事のフォローが役目なのに、失敗したら責任負わされるのは、おかしい」


 レンは、秘書官二人を本当に、大事にしている。だからこそ、さっきはキツく、自分が部屋に行くまで、書類には手を付けるなと注意したのだ。


 ただ、今、話したい事は、これではない。


 エリザは、真剣な顔をしてレンに、話しかける。


 これは、レンの母親にとって一大事なのだ。レンのお嫁さん候補筆頭のマナ。政略結婚が、萬栄している各国の王家間において……恋愛結婚は、夢がある。


 それに、二人は、明らかに両想いだ。


 マナちゃんは、レンにどんどんアピールしているので問題は無い。


 問題があるのは、レンだ。


 明らかに、マナちゃんのことが好きなのに、その気持ちを我慢している。理由が、解らないが、恋という気持ちに蓋をしている


「ねぇ、レンは、マナちゃんのこと……どう思ってんの?」

「どうって……有能な秘書官だと思ってるよ? それ以上もそれ以下もない」


 どこまで、頑固なのか。


 自分の感情を認めようとしない。何が、そこまでレンの気持ちを抑え込むのか。


「本当にそう思ってんの? 異性として特殊な感情あるんじゃないの?」

「さぁ~~ど~でしょうかぁ~~?」


 レンお得意ののらりくらり交わす戦法だ。


「あるんだね」


 エリザは、レンの表情の変化を見逃さなかった。


「流石に、母親は息子を良く見てますねぇ~~。ありますよ?特殊な感情」


 レンは、言い逃れが出来ないと理解し、マナちゃんに対して特殊な感情があると認めた。追及は、ここからだ。レンに恋心を表に出させるのためだ。


「じゃぁさぁ、今度のマナちゃんとのデートで、気持ちを――」

「――伝えるつもりは、無いですよ?」


 レンは、あっさり否定した。


 気持ちを伝えるつもりは無いと意思表示だ。


 何故、そこまで、気持ちを表に、出さないのだ?


 何度も、何度も、私やトクヤに怒られてでも、王城を抜け出してマナちゃんに会いに行っていた頃のレンとは、まるっきり違う。

 あの頃のレンは、楽しそうだった。マナちゃんに会って帰って来て私たちに怒られても、笑顔を絶やさなかったレン。


 何時からだろう。


 レンが、本気で、笑わなくなったのは。


 少なくとも、政治に関わりだしてからは、本気で笑わなくなった。そのかわり、空元気な笑顔を浮かべるようになった。


 しかし、マナちゃんの前では、以前のような本気とまではいかないが、純粋な笑顔を稀に見せる事があった。


 レンは、言葉につまったエリザを見て、席を立った。


「じゃ、母上。公務があるので、失礼しますね」


一年、早いなぁ~~~~


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