179. 甘える
レンは、泣き疲れるまでマナの胸で泣いた。
レンは、心が落ち着いたタイミングで、マナの背中をポンポンと叩いた。「もう、大丈夫だよ。本当!」という意思を伝えた。
マナは、レンの意思を理解したが、こんなに弱っているレンは、珍しいので、意思の確認後も少しの間、レンの顔を自身の胸に、抱き続けさせた。
流石に、冷静さを取り戻したレンにとって、気になる女の子の胸に、顔がある状態なのは、非常にまずい。理性が保っているうちに解放して欲しい所なのだが。
マナが、解放する素振りを見せないので、理性が、崩壊しそうになる。
致し方ない。
ハリセンの数発、喰らうかもしれないが、マナを襲うよりかは、幾分マシだ。
顔は、マナの胸にあるので視覚は、遮られている。
探すは、マナの弱点の尻尾を探す。尻尾は、お尻付近から生えているので、間違ってお尻を触ろうものなら、ハリセン以上のお仕置きが、マナからされる恐れもある。
慎重に、マナの尻尾を探して、マナの尻尾の毛の感触を感じたレンは、一気に、マナの尻尾を鷲掴みにした。
「んぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
マナは、突然、尻尾を触られた事に驚き、悲鳴に近い声を上げた。その際に、抱きしめる腕の力が弱くなったので、その隙に、マナから離れた。
レンは、「ふぅ~~」と落ち着いた。
しかし、その背後から、どこから取り出したか解らないハリセンを持って、レンに近づいているマナが……
マナは、レンの頭めがけ、ハリセンを勢いよく振り下ろす。
「よっと!」
レンは、マナが振り下ろすハリセンを交わした。
「あぁ~~交わすなぁ~~大人しく叩かれてろ~~」
「大人しく叩かれる訳無いじゃん!」
レンとマナは、お互いがお互いに、目を合わせ合った。
お互いがお互い、苦笑いを浮かべた。
「うふふ、レンくん。いつも通りになったね?」
「お陰様で~~ただ、胸を押し付けるのは、理性が保てなくなるからやめてね?」
「また、落ち込んだ時にはしてあげるよ?」
「この無自覚な女の子めぇ~~」とレンは、心の中で思う。
レンとマナは、レンの部屋のベットで隣り合って座っている。手を繋いで。
「母上とマホは?」
「私の部屋で、レンくんが回復するの待ってるよ?」
「そっか……二人にも、特に、マホには、心配掛けたなぁ~~」
レンは、あと少しだけ、マナと二人の時間を過ごしたいと思った。
「あぁ、そうだ。デートの約束……何処に行く?というか……行きたい?」
マナの事だから、話題が無い時でも、一緒に居てくれるだろう。本当に、助かっている。一緒に、居たいと思った時には、常に隣に居てくれる。
今回も、泣き顔を見られたくないので、一人にしてと言ったが、本音で言ったら、誰かと一緒に居たかった。
だから、マナが部屋に入って来た事が内心、嬉しかった。
デートの話題を出したのも、何度も延期につぐ延期にしていたので、マナが、まだ、行きたいと思っているかを探りたいと思っている。
マナの方はというと、一瞬ポカンとした後、物凄く嬉しそうな表情になった。
「いっ行きたい!行きたい!」
まるで、おもちゃを買ってもらえると解った時の子どものようなはしゃぎようだ。そこまで、デートを楽しみにしていたとは、何回も延期にしていたことを申し訳なく思ってしまう。
「わかった! それで、何処か行きたいとこある? 王都以外なら、公務のついでになっちゃうけど……」
「別に、何処か別の街に行きたいとは、思わないかな? レンくんと二人で、お出かけしてご飯食べたりをしたい」
「王城でもしてることじゃん?」
レンは、デートだから何か、演劇などを見たりするのかと思っていたが予想外の返事が来たことに驚く。
「でもさぁ、王城では常に、王族と秘書官という目で見られるからさぁ。正直、落ち着かない」
マナが秘書官になった経緯を知っている王城の職員は、最初の方は、面白くなかったようだ。パッとでの平民が、王族の秘書官……しかも、貴族であるリーナを抑え第一秘書官になった。
最初は、「どうせ身体の関係持って誘惑したんだろ?あの巨乳で」「お金じゃない?」等と、マナの出自とレンとの出会いを知らない連中は、想像であらぬ噂話をしていた。
噂話だけならいいが、実際にマナに手を出そうとした貴族も居た。貴族の地位をエサに、関係を持とうとする者。暗殺をして、自身の子どもを秘書官に据えようと企む者。
それらの貴族は、例外なく、レンにボコボコにされた。プライドがズタズタになるだけなら優しい位だ。それ以降王国内での共通認識は、こうだ。
『マナに手を出したら、レン王子がブチギレる。キレた、レン王子は、ヤバい……』
まぁ、その後は、実力で周りを黙らせたんだけどね。マナが。
「確かに、色んな目線飛んできて、落ち着かない……」
「でしょ?最初の頃よりかは幾分マシになったけど……男の性的な目線は、本当に止めて欲しい。レンくんならいいんだけどさぁ」
「……何で、僕は良いんだよ……」
「レンくんだから!」
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