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178. コントロール

 コン♪コン♪コン♪


 レンの部屋の扉をノックした。


 返事は無い。


 普段なら、このまま引き返すが、今日はそうは行かない。レンがよくする手法をマネする。そう。中の人物の返事を聞かずに、部屋に突入する事だ。

 何か、文句を言われても、「何時もレンくんが、してることでしょ?」と言い返せばいいだけだ。


 マナは、レンの部屋に入って行く。


 レンは、ベットの枕元にある壁に背中を預け膝を抱えていた。


 マナ自身、こんなに落ち込んでいるレンを見たのは初めてだ。こんなにも痛々しく落ち込んでいるレンを初めてだ。


 親族を失った悲しみ。


 それは、孤児院出身のマナは、痛い程に、気持ちが解る出来事だった。ただ、レンの場合は、自分自身の手で失った事だ。

 人前では、気品に振る舞っても隠せない所は、隠せない。それに、レンは、人前では決して弱みを見せない。それが、王族として国家を治める立場の人間としての覚悟の表れなのだ。


「なに?一人にしてって言ったじゃん。それに返事もせず――――」

「――――はぁ~い。それに関しては、レンくんが良くやってる事を真似しただけですので文句の一つも言わせませ~ん」


 マナは、レンの返事を聞かず、レンを壁から離すように移動させてレンを背後から抱きしめる。胸が当たってしまっているが、別にいい。

 好きな人が、元気になるなら胸の一つや二つ押し当ててやるわ。


「マナ、胸当たってる」

「わざと当ててんの~~」


 少しは、気がマナに向いたという事だ。レンに語りかけるなら今だ。


「レンくんは、よく頑張ってます。いい子。いい子」


 マナは、子どもをあやすように、レンの頭を撫でまわす。愛しい人の髪の毛を丁寧に撫でる


 レンは、少し気に喰わないのか抗議の声を上げる。


「……子ども扱いすんなぁ~~」

「私の前でぐらい、気を抜いて良いんだよ?レンくんと私は、まだ、十五歳の子どもなんだから。ただ、産まれた環境が普通の家庭と違うかっただけ。同い歳同士、二人きりの時ぐらい甘えていいよ」


 マナは、レンを力強く抱きしめる。


「大丈夫。大丈夫。レンくんは、頑張ってるよ。辛い時は、一緒に乗り越えよ?」











 ◇◇◇


 色々と辛かった。


 王族にデビューして、色々やって来た。民を傷つけた貴族家を取り潰したりしていた。


 レンは、信じたかった。自分の家族が国家に反逆する事は、無いと願っていた。しかし、その期待は、裏切られた。

 その予兆は、感じ取っていたが、寸前で思いとどまってくれると信じていた。


 裏切ったからには、消さないと行けない。


 頭では解っているので、行動に移すしか無くなった。一度止まれば、動けなくなると思った。だから、心に傷が付いても止まらなかった。

 これまで、シオンに苦言を呈したり、トクヤを叱責した時も、何かと傷ついたが、時間を置いて心の傷を癒してきた。


 しかし、今回は、傷ついても止まらずに、走り続けた。


 だからか、今回は、その反動が一気に来た。


 今は、マナが抱きしめてくれている事で落ち着いている。むしろ、気になる人の胸が背中に当たっている状況で意識するなという方が無理な話だ。


 このままでは、感情のコントロールが出来なくなってしまう。でも、マナになら弱みを見せても良いと思える。それだけ彼女を信用していると言うことか。


「マナ、後ろからじゃなく前から抱きしめて」


 らしくないお願いをした。

 マナは、「解りましたと」と、レンの前方に移動して抱きしめる。しかし、その抱きしめ方は、レンの想像外の抱きしめ方だった。


 普通は、相手の顔の隣に、自身の顔を置くような抱きしめをするだろう。


 しかし、現在は、レンの顔は、マナの胸の中にうずくまっていた。


「んん! むん!むん!(マナ! 胸!胸!)」


 上手く喋って伝えられない。


 しかし、マナはそれでも意図を理解して抱きしめ続け、頭を撫で続ける。


「わざとやってる。これで、レンくんの顔は見えない。思う存分…………泣いて下さい。辛い時は無くものです。我慢したらだめ」


 あぁ~~。だめだ。


 ここまでやられると我慢できない。レンは、肩を震わせてだした。


「うううッ……」


 レンは、これまで抑えていた感情を少しづつ解放していく。マナは、レンの背中を摩っている。


「レンくん。もっと感情を爆発させてもいいよ。レンくんと私しか居ないんだから」


 マナに、ここまで言われると、もう無理だ。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん」


 レンは、泣いた。


 これまで、人前では、感情をコントロールしていた。その枷を取り除けば、もう感情をコントロールが出来なくなる。


 マナの服が、レンの流す涙で、濡れていく。


 大切な服が、涙で濡れるが、お構いなしに抱かせる。お気に入りの服ではあるが、この服が、ダメになってもレンに立ち直って欲しいのだ。


「大丈夫。大丈夫。私が、付いてるから。一杯、泣いて良いよ」


 レンは、感情が赴くままに、泣き続けた。マナに甘えた。


 なんだろうか、マナの胸は、かなり落ち着く。


 彼氏になれば、何時でも甘やかしてくれるのかな?











(ダメだ。僕が、マナとこれ以上の関係になるのは……絶対に、ダメだ)


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