176. 時間が必要
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一夜明け、レンは、一睡もする事なく翌朝を迎えて、大広間にやって来た。大広間には、早朝にも関わらず呼び出された、大臣並びに、王城内で働く官僚。更に、昨晩中に急に呼び出されて、急いでやって来たのだろう。王都周辺の貴族は、王城に参列していた。中には、リーナの家族である、オノフェス家も参列した。
大広間に入ってきたレンの様子を見た、オノフェス家の当主、マックスは隣に立つレックスに、話しかける。
「レックス。リーナから何か、聞いているか?」
「何も聞いてません。でも、レン様の様子……少しおかしいですね?」
「あぁ、急な呼び出しだから、何かあったと思ったが、レン様の様子が変だ」
レンと親しくしている貴族は、レンの異変に気が付いた。
レンは、大広間に入ると、国王が座る席に、座った。
その瞬間、大広間に集まった、人々の驚きの声が、響き渡った。本来ならトクヤが座る席にレンが座った。トクヤが死去した事は、まだ、知れていない。
レンの右隣に、マナが立ち、左隣にマホとエリザが立った。
エリザの登場に、貴族達は、驚きを隠せないでいる。大臣達は、先日の会談で、レンが超法規的措置で、エリザを王政に復帰させた事を知っていたが、貴族は、今日初めて知った。
「父上?!エリザ様は、政界から追放されていたのではないですか?」
「わっわからん……王城で何があったんだ?」
大広間は、何とも言えない空気が漂っていた。
そんな中、レンは立ち上がり、リーヴァンとリーナに指示を出した。
そして、レンの隣に移動したエリザが、集まった皆に向けて注意喚起をする。
まずは、挨拶からだ。
「皆様。お久しぶりです。エリザ=ラインブルーです。この度は、レン……」
エリザは、レンの顔を伺う。レンの呼称をどうするかを悩んでいる。生前、次期国王の任命権をトクヤに移譲された。
そのトクヤは、死去している。
それに、レンは、内乱の終結と共に、首相を辞任すると述べていたので、内乱が終結した今、首相でも無い。呼称に困った。
「母上。一応あるじゃないですか?貴方の子どもっている呼称が……」
エリザは、レンにそう言われると、改めて、語り掛ける。
「この度は、私の息子であり、前首相のレンにより、王政に復帰することになりました」
エリザが、自分が、この場に居る理由を述べた。
マックスは、エリザがこの場に居る理由は、解ったが、その中の発言で一つ引っ掛かることがあった。
「なぁ、レックス。エリザ様……レン様のこと、前首相って言ったよな?」
「……はい。私も聞きました」
そして、リーヴァンとリーナが、大きな台車を持って来た。何かを覆うように黒い布で覆っている。
「今から、皆さんには、衝撃的な物を見ることになります」
エリザの後に、レンが前に出てきて、リーヴァンに、指示を出した。
リーヴァンが、布を捲り隠されていた物が、露わになった。
その瞬間……
大広間中に、どよめきと混乱の声が入り混じった。
台車の上には、トクヤとシオンの首から上が、置かれていた。
大広間中は、混乱している。
一晩過ぎたら、国王とその子息が、死去している。そして、レン・マホ・エリザの三人の王家関係者は、生き延びている。
レンが、エリザより前に出て、説明を始める。
「この二人は、内戦を企てたため、国家反逆罪として処刑しました。証拠は、これらの品の数々です……」
レンが、証拠を示しながら事を説明していく。
その様子は、通信機を使い、王国中に報道されている。国民も驚いたが、レンが提示する証拠に納得した。シオンの内乱の呼応した貴族は、領地で無理やりな搾取を始めていた。
説明が終ると、大広間中、納得の表情になった。
シオンの内乱に呼応した貴族は、昨晩の内に、ハットリ家の人間に、捕らえさせた。
レンに不満を持っていた貴族家は、レンが、公国に行っている間に、シオンに反乱計画を焚き付けていた。そして、シオン陣営の情報統制は、ずさんだった。
直ぐに、シオンに味方した貴族家は、リストアップ出来た。
この場に居る、貴族や大臣連中は、レン派の人間達だ。
ある意味、レンは、この反乱に乗じて、ここまで自身に敵対していた人物を一斉に、排除した形ではある。
大広間に居る人物の興味は、次期国王が誰かだ。
大広間に居るレン派の人間は、この場で、レンが次期国王になることを期待している。通信機越しで視聴している国民も、レンが次期国王になる事を期待している。
そんな中、レンは、宣言する。
故、トクヤの意思を尊重する。
「次期国王は――――」
レンの言葉に、王国中に、注目する。
「――――任命権は、トクヤ亡き今、母上であるエリザにあります。 今後、エリザの方から次期国王決定後、発表されます。それまで、国王不在となりますが……王国の発展のため、皆さんの力を貸してください」
レンは、深く頭を下げた。
頭を上げるとレンは、足早に大広間を後にした。マナが、その後、追って部屋から出て行った。
エリザは、二人が退室したのを確認すると、皆の前に立ち話す。
「皆さんにお願いがあります。私の中で、次期国王は決まっています。それは、貴方たちの願い通りでしょう」
エリザの言葉に、即刻、レンの国王への即位への期待値が高まる。
しかし。
「彼には、時間が必要な時です。これまで、頑張って一国を動かしてきたとは言え、まだ、十五歳の男の子です。今の状況で、国王には即位させられないというのが、母親心です。少し、時間をください」




