表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

175/350

175. さようなら

 裁判所には、トクヤとシオンが、拘束された状態で、居た。


 レンは、裁判所の王族が座る椅子ではなく、二人の目の前に、椅子を持って来て座る。エリザとマホは、傍聴席に移動して座った。


「レンお兄様……卑怯ですよ!!男なら正々堂々と――」

「――内戦を防ぐのに正々堂々と戦う必要ないでしょ? だって、内戦起こせば……民が苦しむ。君は、自身の権力掌握欲求で民を苦しめようとしたんだよ? 僕が、一番怒る展開だって、解らなかった?」


 シオンが喋っていたが、レンが、遮って喋る。


 普段、明るい人の敬語で淡々と話す事ほど、恐怖を感じるものはない。シオンは、さっきまでの威勢はどこへ行ったのか、一瞬で大人しくなった。


 トクヤが、裁判所にレンが入って来た時から、ずっと大人しいままだ。レンは、そんなトクヤの様子が、少し不思議に思った。

 普段の怯えたトクヤなら、この展開になったら命乞いをしてくると思っていた。


「父上は、大人しいですね」


 レンは、トクヤに直球的に話しかけた。


 トクヤは、覚悟を決めた表情になっていた事をレンは、感じ取った。


「……レン。少し、自由に発言を許可して貰えないか?」

「……許可します」


 トクヤは、拘束されているので、傍聴席に居る、エリザとマホの方向に完全に向けないが、可能な範囲で向いた。

 二人は、トクヤの意図を汲み取り、トクヤの目線に入るように移動した。


「まず、二人に謝りたい。マホ……こんな、ダメな父親で申し訳なかった。レンの背中を見て王族としてしっかり、育ってくれ……」

「……わかりました」


 トクヤの、言葉にマホが理解の意を表現する。


「エリザ……本当に申し訳無かった……これからは、レンとマホの面倒を頼んだ……罪人が、偉そうにすまない……」

「……」


 トクヤからの発言に、エリザは、返事をしなかった。


 トクヤは、それだけ言い終わると、レンの方向を向いた。その様子を隣で見ていたシオンが、不味いと思ったのか止めに入って来た。


「父上! 何、言ってるんですか! 大義は、私たちに――」

「――私、トクヤ=ラインブルーは、本日のこの時を持って王位から退くことを表明します。次期国王は、妻の

エリザ=ラインブルーに決定権を委ねます」


 トクヤが、王位から退くことを宣言した。


 レンは、トクヤの発言の意図を汲み取り、その場に、マテオとリーヴァンが、居る事を確認する。


「リーヴァンにマテオ。証人になって」

「「かしこまりました」」


 突然のトクヤの王位からの退位宣言に、シオンは呆気に取られている。トクヤが王位から退けば、完全にシオンが持っている大義名分を失う事になる。


「父上! 考え直して――」

「黙れ!」


 初めて聞いた。トクヤの怒った声を。レン・エリザ・マホは、物珍しそうな表情を見せた。一方、怒られたシオンは、完全に怯んでいる。


「いい加減、気づけ!俺たちは、負けたんだよ。刃を交える前に、情報戦から負けたんだよ。王族として……王族として、内乱を起こして負けた方が、国家反逆罪の罪を追うんだよ……判決の権利は、勝利したレンが持っている」

 

「父上、俺はまだ、負けて―――」

「―――負けたんだよ。だから、拘束されて、生殺与奪の権をレンに握られている。いい加減気づけ……」


 この時、初めてレンは、思った。トクヤもビビりながら王族としての責務を行っていたという事を。まぁ、仕事振りは粗だらけだったが……

 そして、最後……レンに向かって話し出す。


「レン……本当に……本当に……すまなかった……レンが、王政にデビューする時だってそうだ。レンが王政に入って、結果を残し、私を越えて行った時は、本来なら喜ばなければならなかった。なのに、嫉妬した。嫉妬して、本来なら止めないといけないのにシオンの味方をしてしまった……本当にすまない」


 実の息子もあるが、この短期間で、数多の政治家の人々を見て来たレンだからこそ解る。このトクヤの言葉に、嘘が一つも混ざっていない事に。


「その責任は……しっかりと取る。レンの事だから言わなくても解っていると思うし、エリザだって……この場に来ているという事は、マホだって理解しているはずだ……遠慮なくやれ」


 最後の言葉は、トクヤなりに、最後の父親をしたのだろう。


 もちろん、この言葉を聞いた時点で、妥協する訳ではない。


 レンは、トクヤの耳元で言葉を発する。


「――――」


 一言、呟き、レンは胸元に忍ばせていた、ナイフでトクヤの首元を切った。


 致命傷を負った、トクヤは、一瞬にして地べたに、倒れ込んだ。首元からは、血が流れている。


 マホは、必死に我慢している様子だ。エリザは、そんなマホの背中を摩っている。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 目の前で、父親が殺された所を見た、シオンは、発狂し、必死に拘束を解こうと暴れる。


 レンは、暴れるシオンを無力化した。そして、耳元で、トクヤに言った事と同じ事をシオンに呟く。






―――― 一緒に政治の舞台で活躍出来なかった事が、残念です。さようなら。






 その言葉を最後に、シオンもトクヤと同じ道を辿った。


いいねが、100件超えました!


感謝です(*´▽`*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ