169. 口癖
シオンの動向に、注目しながら夜を明かした。
レンは、いつも通りの時間に、目が覚めた。
コン♪コン♪コン♪
マナが、いつも通りの時間に部屋に来た。本来は、専属メイドのコノハのお仕事だが、秘書官就任後にマナが、ぶん取った仕事だ。
コノハ自身、「朝のレン様のお世話が無くなって楽になった」と軽愚痴を叩かれたのを覚えている。
「おはよ~~マナ。今日もありがと♪」
「レンくん。おはよ~~やっぱり起きてたね……」
何故か毎回、マナが起こしに来るタイミングで、レンが起きている事で、少し不機嫌になる。起こす手間を省けると考えれば、こんな楽な主人は居ないはずだが……
「ねぇ~~マナって、毎朝、僕を起こしに来たら少し不機嫌だよね? なんで?」
ずっと疑問に思っていた所なので、マナに質問してみる。
しかし、マナは頬から耳まで真っ赤にしていた。
「だって……毎朝、レンくんのこと起こしたいって思って来るのに、毎回起きてんだもん! 時間早めても遅めても起きてるし!」
「早起きして怒られた!?」
本気で怒っていない事は、解る。
「何だ、可愛い理由か!」とレンは、心の中で思う。
「だって、私ばかり寝顔見られてばっかりだもん……レンくんの寝顔見たいもん!」
「はい!寝顔」
レンは、目を瞑ったエセ寝顔を見せる。
しかし、これは、マナの怒り(本気ではない)の導火線に、火が付いてしまう。
パァァァン♪♪
ハリセンをお見舞いされた。めっちゃ痛い。少し、眠気が残っていたのが、一気に吹っ飛んで行った。
「コノハに聞いたけど、王政に関わりだしてから早起きになったって聞いたよ?前からも目覚めは、良い方だったけど?」
「あぁ~~二度寝を辞めた。前は、早い時間に起きたら、二度寝してたけど王政に関わりだしてからどんなに早い時間に起きても、二度寝しなくなったね」
王政に関わってから二度寝を辞めた。
と言うか、二度寝をする時間が無くなったのだ。
元々、ショートスリーパー気味であり、一回起きてどうしても睡魔が取れない時は、二度寝していたが、「首相 兼 教育相」と大臣職を兼務するようになってから、朝早起きしてから部屋で仕事を進めている。
予想はしていたが、予想以上に大臣職の兼務は、しんどかった。しかも、新設の大臣職の兼務だからノウハウがない。
「何で、二度寝しなくなったの?」
「ナイショ―!」
早朝に、お仕事をしている事は、マナには話していない。
話せば、マナは、「自分も手伝う」と言って手伝ってくれるだろうが、そうすれば、健康優良児並みに一日八時間、しっかり睡眠をとるマナの睡眠時間を削ってしまうことになる。
それに、この王国改革は、レンがやっているいわば、自己満足に近い物だ。
「ねぇ~~何で、二度寝辞めたの? 二度寝しても私が、起こしてあげるよ?」
「大丈夫~~。今日の朝食の準備出来てる?」
「……出来てるよ」
レンとマナは、朝食を食べるために食堂に向かった。
◇◇◇
昨日の会議の後、諸々の業務を終えて就寝しようとした際、ハットリ家の忍が、一通の手紙を持って来た。
『 レン様
シオン第三王子より、レン様に反乱を起こすので協力してくれと電報が二十時頃来ました
マテオ 』
手紙と同封されていた、シオン側からの要請の手紙を恐らくは、伝達用の鳥を使ったのだろう。メモ書きの筆跡は、シオンだ。
まだ、懲りてなかったか……
昼頃の警告を無視して、またもアクア国軍基地に応援を要請していたのだ。
本当に、愚かだな。さっき、アクア国軍基地から自身の作戦が漏れていたことに気が付かなかったのか……またも、アクア国軍基地に応援を要請して、その情報がレンの基に来ている。
「本当に、何か作戦あるのか……?? 作戦が無かったのなら愚かだな~~」
レンは、またも久しぶりに「愚か」という単語を口にした。
レンは、部屋を出るとマホの部屋を軽くノックした。
恐らく、マホは寝ているだろう。しかし、同室に居る母上は、まだ起きていると言う確信はあった。
部屋の扉が開き、エリザが出て来た。
「あっレンか……どうした、こんな時間に?」
レンは、部屋に入ると先ほど受け取った紙をエリザに渡した。
「はぁ~~懲りてなかったか……」
エリザも呆れた表情を見せた。
「愚かだなぁ~~シオンの奴」
エリザの口からも「愚か」という単語が飛び出した。
レンの口癖になっている言葉は、明らかに母上であるエリザの影響を受けている。
「マナちゃんには?」
「もう寝てる。健康優良児だから。部屋にメモ書きを投函しておけば、状況把握に僕が何をするかを理解してくれるから」
「とても、信頼してるんやな」
そこから、エリザとレンは、今後のことを話し合いお互い就寝した。
◇◇◇
食堂に着いた。
自身の指定席に座り、朝食を食べていく。トクヤとシオンは、まだ食べに来ない。
レンは、用意されたドリンクを飲んだ。
ガシャン♪
レンが使っていたグラスが地面に落ちて割れる音が部屋中に響き渡る。レンは、椅子から床に倒れ込んだ。その途中にニヤリと笑ったのをマナとエリザは見逃さなかった。
「レンくん!!」
「レン!!」
「レンお兄様!!」
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