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166. 先手を取る

 レンの合図で、エリザは応接間に入って来た。


 エリザの姿を見た大臣連中は、驚いていた。

 その理由は、当然だろう。レンの秘書官任命式典での身分差別的発言をきっかけに裁判で裁かれ、王国の政治に関わる事や王城への立ち入りを禁止されている人物が、政治の話し合いの場に居る。

 しかも、その裁きを伝えた人物の味方として出て来た物だ。


 一瞬にして、一室に居る人物は、状況を把握出来ずに居る。


 特に、シオンは顕著である。

 恐らく、エリザに自分の事を応援して欲しいと思っていたのだろう。裁きの後に、何回も何回もスズカが過ごす別邸に訪れていた程だ。

 しかし、応援の要請は断られたことで、トクヤに乗り換えた形だろう。そしたら、エリザが政敵の味方として現れた。






 レンは、周りの様子を見て、内心、ニヤニヤと笑っている。予想通りの反応を見せている。シオンの反応を見るに、母上が自分の味方になることは想定していなかったようだ。

 これは、計画が崩れた時の代替案を全く用意していないことが解る。何で、こうも一つの計画がそのまま上手く行くと思うのか不思議だ。

 

 計画というのは、上手く行かない事が前提条件だ。だから、レンは、計画を建てる際には、複数の代替案を考えておく。

 レンが、身分に囚われずに、実力主義で人選をしている一端の理由が、計画遂行の際の人材を求めている一面もある。


「レンお兄様。何故、母上が、この場にいらっしゃるのですか??」


 シオンが、冷静を装いレンに質問するが、動揺しているのが、バレバレだ。動揺すると、瞬きの感覚が、ほんの少し早くなる。シオンの悪い癖が出ている。


「先も言った。僕が、首相を辞任する際の後任として、母上に就任して頂く。それだけのことです」


 これは、シオンからしたらレンが、首相辞任後も影響力を残そうとしているように映るだろう。


「母上! 何故、私では無くレンお兄様の味方をするのです! マホも!」


 完全に冷静さを失っている。


 改めて、マナが自分の右腕として居てくれることを感謝する。自分が冷静さを失いかける時、その波長を読み取り素早くフォローを入れてくれる。

 以前、マナ抜きで会議に出てキレ散らかした時に、マナが居なければ、何も出来ないと改めて実感した。


 そして、シオンの隣に居る右腕的存在の貴族は、イエスマンだろう。明らかに冷静さを欠いている主を制止しようとしない。ダメな右腕だ。


 意外にも、シオンの問い掛けに、真っ先に返答したのは、マホだった。


「王家の一族として、責任ある決断をしたまでです。貴方が私のことを逆賊と扱うなら勝手にして下さい。私にとって、貴方の方が逆賊――ぎゃ!」

「――はぁ~い。マホちゃんここまでねぇ~~」


 エリザが、マホを制止する。


「レンも可愛い妹の暴走位しっかり止めなさい~~」

「ほっといても、母上が止めてくれるでしょう??」

「あはは!そうだねぇ~~。母を良く見てるね!」

「そりゃ、息子ですから」


「母上!私の疑問に答えて下さい!」


 政敵のレンと、裏切られた存在と思い込んでいるエリザが、話しているのは面白くないのだろう。

 そんな、シオンの様子を見たエリザは、包み隠さずに思いのたけをぶつける。もちろん、レンからの言いつけを守った範囲でだ。


「そりゃ、次期国王は、レンなんだから。 レンが国王になるための心得を教えるのは親の役目だし。トクヤは

それを放棄した所か、こうやってシオンを煽てる始末」


 流石、母上だ。上手い言葉遣いだ。最初の一言で、自分はレンの味方だと改めて突き付ける。そして、逆賊はお前だろ、と暗に示した。


「まぁ、レンは賢い判断をしたと思うよ? トクヤのバカから急に、王位の譲位を申し出られたけど、行政権だけを自身に移譲させたのは本当にいい判断。自分で育てられないからって、王位を譲って責任逃れ……本当にダメな国王――」


 (母上……大分、怒ってるなぁ~~)


「――母上。ストップ。これ以上は言い過ぎぃ~~」

「おぉ~流石だねぇ~~。流石、弱冠十五歳にしてトクヤを越しただけはある!いやぁはやぁ~政治の世界に戻って来られて嬉しいよぉ~~レンと同じ景色をずっと見たかったからさ!」


 エリザの楽しそうな笑顔を久しぶりに見た気がする。


 すると、シオンの右腕的な貴族が、何か、耳打ちしている。


 来るか?そろそろ来るか?


 本当、政治の世界のこの空気感は、楽しいものだ。最悪の事態の際に、人の血が流れる事だけが難点だが……


「レンお兄様。母上は、レンお兄様自身が、裁判で、王国の政治に二度と関われないようにしたはずです。自身の裁きを自分の手で反故にするのはどうなんですか?」

「自分の心に聞いてみれば?」


 待ってましたー!


 と言わんばかりに、レンはシオンの問い掛けに、間隔を開けずに返答する。本当に予想通り駒のようにシオンは動くと感じる。


 恐らくは……いや、確実に、シオンの計画を先取りでレンがしたのだろう。


 反乱計画を成功させた後に、レンが、したことと同じように、超法規的措置を使ってエリザを王政に戻す。


 この計画を先取りで、レンにやられた挙句、自分自身に味方してくれず政敵に味方している。


「超法規的措置を取り、エリザ=ラインブルーを王政に復帰させます。そして、僕が首相の大臣職を辞職する際は、後任として首相に就任して頂きます。そして、僕が、首相を辞職するタイミングは……」


 ここから先は、シオンの行っていく内乱の予兆を完全に表舞台に出させる。


「反乱を企んでいるシオン……並びに、それに協力姿勢を見せている父上を王国として逆賊として処分の後、僕……レン=ラインブルーが王位に就いた際に、空席となる首相について頂きます」


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