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146. スズカ=オレジアナ

 またも、繰り返そう。


 レイノスは、レンと対面した際に、スズカのことをよく見ておけば良かったと激しく後悔した。スズカの申し出の内容をしっかりと吟味すれば、何で彼女がこんな行動に移したのかを理解出来たはずだ。


 スズカが、ラインブルー王国の第一王子と手を組んだこと……最初は、スズカの身を案じた。弱みを握られたのか、はたまた、人質を取られたのか。

 沢山、心配して思案した。大事な娘を傷つけたであろうラインブルー王国の第一王子にどのような仕返しをするかを。






 しかしだ……






 シノバンの王国と公国の連合軍の陣があると報告を受けた場所に、到着すると既に陣払いをしていた。戦争をしているという報告を受けていたが、こんなにも短期間で終戦したのか?もしかしたら、敗戦したのか?

 しかし、周辺の見渡すと、公国の兵士と王国の兵士が仲良く話していた。レイノスを警護していた兵士が、王国兵と仲良くしていた兵士から事情を聞いて来た。


 驚いた。


 スズカは、ラインブルー王国の第一王子に弱みを握られたり、人質を取られたりした訳では無かったようだ。むしろ、スズカは、ラインブルー王国の第一王子と友好的に接し、協力して旧帝国との戦争を短期間で終結させたと聞いた。


 恐怖を感じた。


 スズカとラインブルー王国の第一王子は、同じ十五歳。片や、政治の世界に足を踏み入れたばかりの男、片や、政治の世界に足の一歩も踏み入れていない女。

 そんな二人が、わずか短期間で帝国を滅亡させた?


 信じられなかった。


 これは、スズカの才能なのか、それとも、王国の第一王子の才能なのか。どっちかに、とてつもない才能をもった人物が居るのは確かだった。


 しかし、どっちかは、解らなかった。


 それはそうだ。スズカの事を見てこなかったからだ。自身の後継者として二人の息子しか見て来なかったことを後悔した。


 そして、両国の兵士に案内されてスズカに会いに行くと、その場には、王国の第一王子も居た。その光景を見たときに、レイノスは激しい胸騒ぎを覚えた。


 レイノスは、腐っても数十年以上も、公国のトップを務めて来た人間だ。これまでに何人もの政治家を顔を合わせて来た。

 しかし、その場からは異様な雰囲気を感じ取った。しかも、その異様な雰囲気は一人からじゃない。複数人から感じ取った。


 異様な雰囲気を放っている人物は、何も感じていないのだろう。普通に話していた。その周辺に居る人物は、慣れている者は、平然としているが近寄りがたくしている。


 その異様な雰囲気を放っていたのは、レイノスの娘、スズカと娘と協力して帝国を滅亡させたというラインブルー王国の第一王子であるレンだ。


 想定外だった。


 王国に、異端児とも言える王子が政界に足を踏み入れたという情報を仕入れていた。だからこそ、今回の一件も王国の主導で、スズカは利用されていると想定してこの場に来た。


 くどいが何度も言う。


 レイノスは、激しく後悔した。


 息子二人ばかりを見て、娘のスズカを見て来なかったことに。


 レイノスの行い、そして、娘のためと思って他国の王子との婚姻話……いわば、政略結婚の道具として利用しようとしていたことが、スズカを激怒させていたことに。


 その結果、スズカは劇薬とも呼べるラインブルー王国の第一王子のレンとそのパートナー的存在の猫耳族の女の子と手を組んでしまった。


 この二人を見た瞬間にヤバいと思った。


 政治家としての雰囲気もそうだが、王国内で『うつけ者』と言われる理由もわかった。長い歴史を持つ国家は、長い風習などもありそれが国政に大きな影響力を持ってしまう。王国・公国も例によらず過去の慣習が国政に大きな影響力を持っていた。


 そして、王国にその慣習を覆す人物が第一王子として居るという噂は耳に入った。


 幼少期は、無断外出を繰り返して両親を困らせたという逸話に始まり、貴族学校の卒業の際の晩餐会を第一王子ながらすっぽかしただとか。王政に入ってから、貴族学校の廃止を決めたととか。そして、自分の両親の罪を罷免するどころかあっさりと断罪したりだとか、長年仕えて来た、貴族家でも不正をすれば容赦なく断罪したりだとか。


 色んな噂が耳に入り、レイノスもレンのことは『うつけ者』だと思った。しかし、今日、この場でレンを見てレンが『うつけ者』だと言われる理由を理解した。


 レンは、今を見ているのだ。古い慣習より今を見ている。だからこそ、現在に合わないと判断したことは、どんどん廃止している。










 スズカは、レイノスの側近を始めとする政治家連中からは『頭がおかしい女子』訳して『あたおか女子』と言い出した。 

 十二歳になって、レイノスがスズカの婚約者を探し出した頃からスズカは、表情を変えなくなった。側近からは、目が死んでいると言われ、婚約者候補とのお見合いでも表情を一切変えずに居て、相手から『あたおか女子』と言われ相手からお見合いを断られ続けていた。


 レイノスは、なぜ、スズカがこうなってしまったのかが解らなかった。


 しかし、シノバンでレンと話すスズカを見て思った。スズカがこうなってしまった原因はレイノス……自分自身にあるということを。


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