136.プラマイゼロ
レンの目の前には、スズカと話し合って決めた旧グリアナ帝国の領土分割に関する条約の書類が置かれている。レンは、話し合った内容と相違が無いかを確認して相違が無い事を確認して、王国側のサイン欄にサインをする。
レンが、サインした書類を今度は、オレジアナ公国の代表、レイノスがサインするためマナが、レイノスの前まで書類を持って行く。
逆に、先ほどレイノスがサインした方の書類がセバスの手によってレンの目の前に置かれていた。レンは先ほどと同じように、話し合いの時と比べて相違が無いかを確認して相違が無い事を確認後に既に、公国側にレイノスがサインされている書類の王国の欄にレンのサインをする。
サインを終えると、セバスが書類を持って行き入れ替わりで、マナが帰って来た。
マナは、本来のルートを外れてレンの耳元に忍び寄ると、一枚のメモを渡してきた。そこに書いてある内容にレンも怒ったが、マナも相当激怒していた。
マナは、レンの耳元で先ほどオレジアナ公国のフルヤに言われた事を耳打ちしてきた。
「オレジアナ公国のフルヤから、俺の女にならないかって言われました……私は嫌だったので断ったのですが……両国の関係がどうなってもいいのかという脅し文句と一緒にメモを渡されました」
メモ書きには、「式典終了後に俺の部屋に来い」と書かれていてご丁寧に地図まで書かれていた。それに、マナは基本相手の要人に対しては敬意を持って「様」を付けていたが、さっきの発言は「様」を付けなかった。
「なぁ……マナ。これは、容赦なく行っていいよな?」
「行って下さい。レンくん以外に、迫られるなんて死んだ方がマシです」
「……王国帰ったらデートでもするか?」
「うん!」
「「じゃ、約束!!」」
レンは、マナを自身とマホの間に移動させて、レン直属の兵士のスバルを呼んだ。
「レン様。何かご用件でしょうか」
「隠密で、ここに居る王国の兵士を式場の入口に待機させといてぇ~~」
スバルは、レンの表情を見て事情を察した。
レンが怒っていることに……そして、いつもはそれを止めるはずのマナまでもが激怒していることに。
「了解しました。リーヴァン殿を頼っても?」
「いいよぉ~~合法的な手段なら何でも使ってもいい」
(公国側の奴……何しでかしたんだ……レン様があんなにキレてるのは、秘書官任命式以来だぞ……しかも
、マナ様までキレてる……ヤバいなこれ)
スバルは、事態のヤバさを実感しながらもレンの命通りにリーヴァンを呼びレンに命じられたことをお願いする。
一方、その頃、オレジアナ公国側では、両国の国交正常化にむけての条約に関する書類にサインを終えてセバスが王国側に条約書を持って来ていた所だった。
レンが、片目でチラッと公国側を見るとニヤニヤ笑顔のフルヤが居た。
この前の会話を聞いていたレンは、モリヤの方にも目線を送るが、同じ様にニヤニヤしていた。
(決めて。ここで、痛い目を見せよう。マナに手を出そうとしたこと……後悔させてやる)
レンは、腰に掛けている剣を鞘からは抜かずに構えると、一瞬という速度で鞘付きの剣で、セバスの首元を狙って攻撃した。
セバスは、一瞬の出来事かつ完全に油断しきっていたこともありレンの攻撃をまともに受けて吹き飛ばされ手に持っていた条約に関する書類は吹き飛んでバラバラになってしまった。
セバスは口元を押さえて必死に嘔吐しないように堪えながら咳をしている。レンの突然の行いに式場に居た公国側の兵士が剣を抜こうとする。
「ひぃぃぃぃ!!」
トクヤは、怯えて頭を押さえてしゃがみ込んでしまった。
公国側の兵士は、今にでもレン達ラインブルー王国の代表団に斬りかかろうという構えであったが、レイノスが止めに入る。
「剣をしまえ!大事な式典だぞ!」
「ですが……先に……」
「口答えするな!!」
公国の兵士達は、レイノスの命令に従い剣を鞘に締まった。
「甘いなぁ~~レイノス様はぁ~~」
レンは、ニヤリとレイノスの顔を見ながら言った。
レイノスは感じた。レンのニヤリ顔はたまに見てきたが、今のニヤリ顔はただならぬ雰囲気を纏っていると……
そして、その正体を見抜いているのは、マホ・リーヴァン・リーナの三人位だろう。
更に公国は、運が悪いのか、キレたレンのストッパー役まで怒らせている。この三人は、覚悟した。血が流れることを。
「……鎮圧しろ」
「公国の兵士を無力化せよ!!!!」
レンが命令し、スバルが扉の前に控えさせていた王国兵に指示を出し、一気に式場に王国兵がなだれ込んできて公国兵を拘束し無力化していく。
そして、王国兵は公国のモリヤとフルヤを捕らえてこの二人も拘束した。
一瞬の出来事に、レイノスとスズカは呆気に取られている。
重い空気の中、口を開いたのは、スズカだった。
「レン! これは、一体どういうこと!! 私たち公国は、王国といい関係を築こうと思ってたんだけど!!」
スズカの怒りに満ちた声が、レンに向けられる。
その言葉に対し、レンはどす黒いという表現が似合うといえる位の低い声で言い返した……
「あぁ?どの口が言ってんだぁ? さっき言ったよな? 友好関係を築きたい国とはプラマイゼロな関係を築けってさぁ~~??」
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