125. 適材適所
只今、レンはスズカと二人で、明日開かれる予定のラインブルー王国とオレジアナ公国との国交正常化のセレモニーを行う会場で、話し込んでいる。
今は、『首相』と『外務大臣』という大臣としての顔ではなく、王族同士のコミュニケーションといった感じの場だが、二人の会話の内容は、雑談の域を超えている。
「泥沼化??考えられないね……レンの能力なら難無く行いそうだけど??」
「買い被りすぎじゃない??……僕に、そんな能力無いよ?」
「はははっ……レンが政治家として無能なら、殆どの政治家は、無能以下ってことになるよ??」
レンの言った事に、スズカは恐怖を覚えている。
スズカの中での、レンの評価はかなり高い。
それは、スズカの父親でもあるレイノスも感じ取っていて、レンと友好的に関われているスズカに、継承順を無視してまで、『外務大臣』した程だ。
レンの発言は、王国内にレン以上の能力を持った政治家が居ると暗に言っているようなもの。いくら、国交を正常化するとは言え、恐怖を感じ取らざる得ない状況だ。
しかし、レンの言う事とスズカが感じていることの認識には多少のズレがあったようだ。
それは、レンの発言で、認識のズレは修正されることになった。
「何で、スズカ、そんな顔してんの?……変顔趣味??」
「……うっさい!……何で、ここにマナが居ないの。居たら、ハリセンで叩いてもらうのに!」
「ざんねぇ~~ん!……所でさぁ、理由を聞かせてよ」
レンは、恐怖を感じていたスズカとは、真逆で興味津々な表情をしている。
「いや、だってさぁ……レンは政治家として、余り能力が無いって思っているんでしょ??」
「えっ?何時から政治家の話になったん??」
「えっ?」
レンとスズカは、お互いが呆気に取られた表情をしてお互いの顔を見合っている。
「えっ……僕は、王位についての話だと思ってただけど??」
「……私は、政治家としての話だと思ってた……でも、政治と王位は一緒じゃない?」
「いや、政治家と王位は、別物でしょ??……政治家と王位を一緒にしたら、政治家は誰でも王位に就けることになっちゃうでしょ??」
レンのツッコミに、スズカは「やらかしたぁ~~」と言った表情になり、レンに降参の意を示してくる。
「……降参……ここからは、王位について話そ!」
「やったぁ~~勝ったぁ~~」
レンは、両手掲げてガッツポーズをした。
「……話を戻すけど、レンは王位に就くときに泥沼化するってどういうこと??」
「詳しくは、言えないよ??……けどね、僕は、政治家としての能力はさぁ~~父上よりあると思うけど……王位を務めあげるだけの能力は無いよ」
「そうなのかなぁ~~??私もレンと同じく今年から公国の政治に関わりだしたけど……一国のトップに立つってどういうことなのかな?」
「本当に、難しいよね。でもさぁ、僕には王位は務まらないだろうなぁ~~って、直感で思うよ」
レンとスズカの話は、王族ならではの会話になって行った。
「王位ってのはさぁ……国民の象徴になれる人間がなるべき者だと思うんだよね。オレジアナ公国の大公、レイノス様みたいにね」
「王国のトクヤ様は、どうなの……」
「……スズカ……そのこと、言わせる?……あんなの、先祖からの血の繋がりが無ければ、王位を剥奪している所だよ」
「ハハハ……あれは、私も父上もドン引きしたよ……トクヤ様の醜態」
「ホントにね!……一国の恥も恥!……あんなのが、王国国民の象徴とか恥ずかしくて、国民に土下座して謝りたいよ……」
「なら、レンなら国民の象徴としての能力持ってんじゃないの??」
スズカは、真面目な表情でレンに問い掛けるので、スポットでレンとスズカを照らしている僅かな光でも解る位レンは頬を赤らめる。
「そうかなぁ~~国民の象徴になれる器を持つ人物は、僕の近くに居るんだよなぁ~~」
「マナ?」
「正解!マナは、僕と違って国王として一国を引っ張って行くだけの能力を持っているよ」
「レン自身の考えは??」
レンは、少し考えた。
「僕が、王位に就いて国を動かすことは……出来るとは、思うよ。けどね、適材適所って観点で見るとマナの方が国王には相応しい」
「となると、惜しい所は、血筋だね」
「そうなんだよなぁ~~血筋が整っていれば、マナを女王様に出来るのにぃ~~~~」
「それは、仕方がない」
「適材適所なら、間違いなく国王は、マナの方が適任。僕は、政治家が向いていると思う。僕のような人間は、一国のトップが務まるとは思わないね」
「また屁理屈言う~~マナが聞いたら怒ると思うよ」
「……間違いなく」
二人は、話し出して既に一時間以上が経過しようとしている。
「それでぇ~~マナとの関係は、どうなぁんだ?」
「関係って??」
「何か、特別な関係にでも??」
スズカのニヤニヤ笑顔を見て、スズカが何を聞こうとしているのか解ったレンは釘を刺しに行く。
「マナとそういう関係になることは、僕が王国の王族である間は、絶対に無いよ」
「マナ……可哀そう……」
「……何が??」
「気づいてないの??……マナ……レンのこと好きだよ??」
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