117. 移動
馬車には、マホ・レン・マナとその向かいに、リーナ・トクヤ・コノハが座っている。
馬車は、オレジアナ公国に向けて走らせている。現在は、アクア国軍基地の近くを走っている。
「レン。アクア国軍基地に寄って、護衛の兵士を増やそう!」
「ダメです。戦争では無く話し合いをしに行くんですから必要最低限以上の兵士を連れて行けません」
トクヤの要望をレンは、あっさりと拒否した。
レンが、乗っている馬車の護衛はレン専属兵士であるスバルが率いる部隊が行っている。
「……そうだ!私は王城に帰ろう!誰か、一人政治の代表者がいるだろ!」
「それなら安心して下さい。サヨ法相に副首相も兼任させて、僕と父上不在の間の舵取りを任せています。ですので王国内のことがご安心下さい」
トクヤは、出発しても尚公国に行く事が怖いようで子ども二人の前でみっともない醜態を晒している。
「はぁ……父上、一国の王位に就いているんですから他国との重要な式典・会議には出席してください。重要な式典・会議に怖いからとかいうしょうもない理由で欠席なんて認めませんよ!!」
「だっだが、これはレンが王位継承を拒否したから!!」
「あの時、王位を継承していても、僕は独身です。どの道父上が、赴くことになっていましたよ。……それに、みっともない。十歳の娘の前でいつまで醜態晒すんですか!」
レンにマホの存在を示されて、トクヤはやっと大人しくなった。そして、トクヤはマホが同行している事が気になるようだ。
「レン。重要な式典・会議に出席するのに何で、継承順位が上のシオンでなく下のマホが同行しているのだ?」
(やっぱり、この質問が来たか。)
「いや、何か問題でも?継承順位二位のマホを同行させることに何か不手際がありますか?」
トクヤは、レンの発した言葉の意味が理解出来ないと言った表情だ。もちろん、マホも意味を理解出来す顔をチョこんと傾けている。
「えっ……いや、王位継承権二位はシオンだろ?」
「僕の後継者という意味では、現状マホが一番ですよ」
「レンお兄様、どういうことでしょうか?」
マホもレンの考えている事を知りたいようで、質問してきた。
「父上が言ってるのは、『王位』の継承順位。それなら確かにシオンだけど僕が言ってるのは、王位継承権第一位の僕が正式に王位に就く際に、空席になる『首相』という大臣職の継承順位ではマホが一位なんです。なので、今回はマホが同行です」
レンが、この前マホに説明した時は、かなり内容は省略して説明していた。
要するに、現状のラインブルー王国はトクヤが王位に就いているが、政治を行う権利は『首相』であるレンが有している。
そのため、王位継承権そのものが宙ぶらりん状態なのだ。
この先、レンが正式に王位に即位したさいに『首相』という大臣職を廃止すれば以前のような王政に戻るし、レンが王位継承権を破棄して『首相』に継続して王位にシオンが即位すれば、現状と同じ状態となる。
馬車は、王国と旧帝国領の国境線だった所を通過した。
現状、国境線未確定領なので、先の取り決めで国境線確定までは両国兵での共同統治となっている。
「実際に起こったこととは言え、この場を検査なしで通過するのには違和感を覚えます」
コノハは、やはり違和感を覚えたようだ。
「確か、王国周辺の国の中で、国境線が変わるのが二十五年振りで、一国が消滅するのは八十九年振りだそうです」
(マホ!博識!レンお兄ちゃん感激だよ!)
「ハックション!」
レンが、心の中でマホの成長に感心しているとマホは何か寒気を感じたのか、クシャミをした。
「公国に行って、国境線を確定させに行くんだけど、王国領になる土地の民には幸せな生活を送ってほしいな」
レンの言葉にマナも同調して窓の外に移る街並みを眺める。
「でも、問題は旧帝国の国民に受け入れて貰えるかですよね」
「そうだね。国民の不満が爆発してしまえば内戦に発展しいかないからね。内戦だけは阻止したい所」
レンとマナは、政治に関する相談しているとマホは疑問に思う事があったようでメモを取り出して、質問を投げかけた。
「レンお兄様、質問があります!……今、いいですか?」
「大丈夫だよ。質問の内容聞いてもいい?」
「はい。レンお兄様が言っている『内戦は防ぎたい』の意味を教えて頂きたいと思いました」
馬車は、旧帝国と戦争を行っていた場所に近づいた。そこには、オレジアナ公国の兵士代表オーバとラインブルー王国の兵士代表マテオが、共同で警備している総本部になっている場所なのだ。
「丁度いい所に、来たしお昼ご飯にしようか」
レンは馬車を止めて馬車から降りて、レンとマナはマホを連れてマテオとオーバに話しかける。
マテオとオーバは、王国の馬車を認識した瞬間に出迎えの準備をしていた。
「マテオ!お久しぶり!業務は順調ですか?」
「はい!オーバ殿と順調に遂行出来ています。……マホ様。お初にお目にかかりますマテオと申します……」
マテオは、初対面であるマホに自己紹介をしていた。
「レン様。お久しぶりです。」
「オーバ殿も元気そうで何よりです」
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