105. エリとサユ
エリザは王城の別邸に、世話係のサユリと穏やかに過ごしている。
エリザは、王城内への立ち入りを禁止されている。王国の法律に反した行動が原因でお腹を痛めて産んだ息子による裁定で今の別邸で過ごしている。
エリザ自身、自身の失態でレンに心苦しい思いをさせたことを申し訳なく思っている。
エリザが去った後の、王国の情勢は逐一報告されているし、自分と入れ替わりで政治家としてはダメな部類に入る父親と王国を動かすことになったレンの動向も世話係のサユリの娘がレンの専属メイドとして働いているので、逐一報告されている。
「ねぇ~サユ?レンどうしてるかな?」
サユとは、エリザがプライベートモードの時に、サユリを呼ぶ時に使うあだ名だ。エリザとサユリは、お互いが同い年で、トクヤの所に嫁に来る時も実家から付いて来てもらった程の長い付き合いだ。
「でも、レンがコノハを専属メイドに選ぶとは思わなかったよ。まさか。親子で付き合いが出来るとは思わなかった!」
「私もです。レン様は、長男ですので歴代で王家に仕えているメイド一家の中から選ばれると思ってました」
「よくよく考えれば、レンの身分や歴史に囚われない人選は幼少期から変わらないなぁ~~。それに気づけないなんて母親失格かなぁ~~」
「そんなことないですよ!今のレン様の躍進があるのは、レン様が幼少期にエリの政務を間近で見ていたからですよ!」
「優しい事言ってくれるねぇ~~」
サユリもエリザがプライベートモードだと確認すると、エリザのことをエリと呼ぶ。
二人は気が付いていないが、レンの理想とする政治家像はエリザだ。しかし、部下との接し方や関わり方に関しては二人の関係性が響いている。
エリザとサユリは、レンとコノハの関係に関して話していく。
「なぁ、サユ。コノハからレンのこと何か聞いてる?」
「あぁ~~色々聞いてますよ。………楽しそうに愚痴ってます!」
「楽しそうに愚痴るってどゆこと!」
二人は何だかんだで、十年近い付き合いになる。
小さい頃から活発なレンに振り回され続けられているコノハに、エリザは少なからず息子に振り回される親友の娘に申し訳なく思っている。
街にお忍びで出かける度に、隠蔽工作に協力させられること多数に、トクヤの見習い時代には、公務での訪問先にて無断外出をして度肝を冷やされたりしたそうだ。
特に、後半の訪問先での無断外出は余程度肝を冷やされたのだろう。発覚後に王城のエリザの基に緊急通信を入れてきた程だ。
エリザの考えとは、逆にサユリは平然としている。
「いやぁ~~レン様の基で働きだしたコノハは、凄く楽しそうにしているから!……レン様に振り回されて、大変なんだろうけど、それが楽しいんだと思う。レン様に仕える前と後のコノハの笑顔は、大きく変わったから!」
「なら、いいんだけど。」
二人のお話は、政局に移っていく。
現在の王国内だけでなく周辺国を含めて大きな波乱が起こっていると言ってもおかしくない状態だ。それは主にレンが主導してそうなっているんだが。
「サユ。どうなると思う?今後の政局は?」
「私は政治に関しては、無知の人間ですのであんまり言えないですけどかなり難しい舵取りになりそうですね」
「そうだね。これまで、大陸内で国力一位・二位を争う王国と公国の間にあって緩衝地帯の役目を担っていた帝国が滅んだからね。周辺国間の力関係は大きく変わるね」
「どうなるんですか?もしかして、周辺国周辺で大戦になったりはしなしですか?」
「可能性は無いとは言えないなぁ~~。大陸内のナンバー三的だった帝国が滅亡した以上周辺国内で国家内での序列争いが起こる可能性はある」
サユリは、右手の親指と人差し指で顎を掴んで考える。
「それって……王国も巻き込まれる可能性ありませんか?」
「大分あるよ。これまでは対立していた両国とは帝国を関して関係を維持していた以上、今後両国と関わるためには、直接関わらないといけない。……少しでもいい貿易条件を引き出すためにも……」
「帝国に変わるナンバー三の座を狙いにくる」
二人の危惧することは現実的に起こり得る。
ここで、別邸の部屋の扉がノックされた。
エリザとサユリは、プライベートモードから仕事モードに切り替えて訪問主をサユリが出迎える。この別邸に訪問してくる人物として可能性があるのは二人。
息子のシオンとレン。
レンは、公務もあり来ることは稀だがレンとの政治の話は本当に楽しいと感じる。レンの政治力の高さにはいつも驚かされるばかりだ。
エリザが考えていた、王国復興案の上を行く改革をどんどん行っていることに感心をいだいている。
良く来るのは、シオンだ。
エリザは、シオンのことが心配で仕方ない。息子と話すのは楽しいが、シオンの話は、彼の将来を心配させる。レンは能力のある人物を優先的に登用する傾向がある。
妹のマホをシオンより先に王政の業務に関わらせたこと・第一秘書官をマナにしたこと・専属メイドを代々王家に仕えた家以外から選んだこと。
だからこそ、心配なんだ。
今の政治に関して全く努力しないシオンはレンに見捨てられる可能性が高い。
すると、サユリは別邸に訪れてきた人物を中へ案内した。
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