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短編集  作者: ゆーろ
5/10

諦観性林檎病

登場人物


霧谷:きりや 高校生


青ヶ屋:あおがや。高校生


嶺原:みねはら。高校生



0:諦観性林檎病

霧谷:「はぁ…ねみぃ。」


青ヶ屋:「おっは。今日も眠そうだな、キリちん」


霧谷:「毎朝毎朝こんな眠くちゃな。児童虐待だ、多分これ」


青ヶ屋:「児童相談所にでも訴え出るか」


霧谷:「いい。それよか下駄箱にラブレターでも入っててくれた方が嬉しい」


青ヶ屋:「あっそ。あぁ〜眠い。」


霧谷:(N)俺は霧谷。どこにでもいる極々普通の高校生だ


青ヶ屋:「教頭、今日も禿げてる。はは、ウケる」


霧谷:(N)ウケてねぇだろ。こいつは青ヶ屋 。中学の頃からの友人だ


青ヶ屋:「お。ミネちんだ」


嶺原:「ん。おー、霧谷に青ヶ屋じゃん、おは。」


霧谷:「おはよう、相変わらず朝はブサイクだな」


嶺原:「うるさいな。つーか暑い、暑すぎるって、最近とか特にさぁ」


霧谷:「今日は最高気温38度らしいぞ、今年の夏、本気出しすぎ」


嶺原:「わかるわぁ。毎年最高気温が更新されてる気する」


霧谷:「それ」


青ヶ屋:「あぁ〜眠い。」


霧谷:「お前そればっかりな」


嶺原:「昨日何時に寝たの」


青ヶ屋:「寝てない自慢大会始まりそ?」


嶺原:「はい俺、深夜三時に寝ましたぁ〜、もうどうしようもなく眠いですぅ、寝てねぇ〜。まじで、全然、まったく、二時間しか、寝てねぇ〜。」


霧谷:(N)こいつは嶺原。青ヶ屋と同じく、中学からの仲だ。これ以上語ることもないような、そんな奴。


嶺原:「そんな全然寝てない可哀想な俺に何か言うことあるくない?」


青ヶ屋:「ウケる」


嶺原:「乗ってこいよクソヶ屋」


青ヶ屋:「霧谷とやれよカス原」


嶺原:「は??何だこいつ可愛くない。霧谷とやっちまったら俺が勝つやろがい」


霧谷:「は?俺が勝つが?午前10時まで肌の調子最悪最低の嶺原なら小指で勝つが?」


嶺原:「はいもうずっと顔いじり、グレます。グレました。釘バットで学校中の窓カチ割るからな、責任取れよ」


霧谷:「じゃ、教室こっちだから。」


青ヶ屋:「お〜そんじゃな〜」


嶺原:「覚えとけよボケナス〜」


霧谷:(N)こうして教室に逃げ込み、授業が始まるのを待つ。

霧谷:授業が始まれば真面目な高校生だ。ちゃんと先生の話を聞き、ノートをとる。偉い。

霧谷:一限の後、何やらモノごっつい音がしたが、その後二限、三限、四限と授業をこなし、待望の昼休みが来た。


0:食堂


青ヶ屋:「みっけ。何食ってんのキリちん」


霧谷:「おぉ青ヶ屋。俺はハンバーグ定食。お前は?」


青ヶ屋:「うどん」


霧谷:「うどん。トッピングは?」


青ヶ屋:「いらないいらない、天かすとネギだけで充分美味しいんだって」


霧谷:「えび天とか欲しいだろ」


青ヶ屋:「いらねぇって。お前あれか、うどん初心者か」


霧谷:「でた。通はこうして食べるんだよ。ってやつ。かぁ〜キモい」


青ヶ屋:「そういやあれ、聞いたか」


霧谷:「ん。なにを」


青ヶ屋:「一限の後の休憩、すげぇ音したろ」


霧谷:「あー。なんかしてたな。なんかあったのあれ」


青ヶ屋:「ミネちんが怪我したんだってさ」


霧谷:「嶺原が?」


青ヶ屋:「うん」


霧谷:「保健室行き?」


青ヶ屋:「らしいぞ、ウケる」


霧谷:「ウケねぇだろ」


青ヶ屋:「見舞い行く?」


霧谷:「おぉ、飯食ったら行くか」


青ヶ屋:「はいよ〜」


0:保健室


霧谷:「お邪魔しま〜、嶺原、居るか?」


嶺原:「いる〜、野次馬か」


青ヶ屋:「そゆこと。どしたのその怪我」


霧谷:「頭包帯ぐるぐる巻きとか、ベタだなお前」


嶺原:「いじるないじるな、ちょっと転んだだけだから」


青ヶ屋:「ドジくせぇ〜」


霧谷:「くっせ」


嶺原:「うるさい」


霧谷:「あんま騒いじゃ悪いし戻るわ」


嶺原:「お〜、失せろ失せろ」


青ヶ屋:「…」


霧谷:「青ヶ屋?行かねぇの?」


青ヶ屋:「あぁ、ちょっと次のテストの事で話があってさ」


嶺原:「?」


霧谷:「おっけ〜、そんじゃまた後でな」


青ヶ屋:「おう」


0:教室


霧谷:(N)昼休みの学校、その辺を徘徊しながら時間を潰す。

霧谷:どこのクラスとも知れない奴らの内緒話が、すれ違いざま耳に入ってきた。の前に

霧谷:この学校には四不思議よつふしぎがある

霧谷:なぜ七不思議じゃないのか、とか、それ以前の不思議が色々と多いが、どれも世迷言じみたものだ

霧谷:ひとつは毎日内容が勝手に変わる新聞記事、日替わり新聞。

霧谷:ふたつめは特に胡散臭くて、この学校は生徒が忽然と現れたり、消えたりする、らしい

霧谷:みっつはよくある開かずの教室、的なやつだ。どこの階の、どの教室かは一切明言されていないけど

霧谷:よっつは、赤いマントをつけた人物が生徒を誘拐し、殺すというもの。赤マント、これもよく聞く

霧谷:そして肝心のすれ違いざまに聞いた内緒話

霧谷:「赤マントに会いに行く」

霧谷:馬鹿らしい。もういっそそのままその辺の変質者に誘拐でもされればいい。等と思っていると


青ヶ屋:予鈴のベルが鳴った。

0:間

霧谷:「はぁ…ねみぃ。」


青ヶ屋:「おっは。今日も眠そうだな、キリちん」


霧谷:「毎朝毎朝こんな眠くちゃな。児童虐待だ、多分これ」


青ヶ屋:「児童相談所にでも訴え出るか」


霧谷:「いい。それよか下駄箱にラブレターでも入っててくれた方が嬉し…この話もうしたっけ」


青ヶ屋:「してない。あぁ〜眠い。教頭、今日も禿げてる」


霧谷:「あぁ。今日も禿げてるな」


青ヶ屋:「お。ミネちんだ」


嶺原:「ん。おー、霧谷に青ヶ屋じゃん、おは。」


霧谷:「おはよう、相変わらず朝はブサイクだな」


嶺原:「うるさいな。つーか暑い、暑すぎるって、最近とか特にさぁ」


霧谷:「今日は最高気温38度らしい。今年の夏、本気出しすぎ」


嶺原:「毎年最高気温が更新されてる気する」


青ヶ屋:「あぁ〜眠い。」


霧谷:「お前ほんとそればっかりな」


嶺原:「昨日何時に寝たの」


青ヶ屋:「寝てない自慢大会始まりそ?」


嶺原:「はい俺、深夜三時に寝ましたぁ〜、もうどうしようもなく眠いですぅ、寝てねぇ〜。まじで、全然、まったく、二時間しか、寝てねぇ〜。そんな全然寝てない可哀想な俺に何か言うことあるくない?」


青ヶ屋:「ウケる」


嶺原:「乗ってこいよクソヶ屋」


青ヶ屋:「霧谷とやれよカス原」


嶺原:「は??何だこいつ可愛くない。霧谷とやっちまったら俺が勝つやろがい」


霧谷:「は?俺が勝つが?午前10時まで肌の調子最悪最低の嶺原なら小指で勝つが?」


嶺原:「はいもうずっと顔いじり、グレます。グレました。釘バットで学校中の窓カチ割るから(な、責任取れよ)」


霧谷:「責任取らねぇよ。じゃ、教室こっちだから。」


青ヶ屋:「また後でな、ミネちん」


嶺原:「はいよぉ」


霧谷:「?お前クラスあっちだろ?」


青ヶ屋:「え?俺ら同じクラスでしょうが、どういうギャグ?」


霧谷:「…あ、あぁ、そっか、そうだったな」


0:食堂


青ヶ屋:「〜〜、やっと昼休みか。腹減った。何食う?キリちん」


霧谷:「俺は鮭定食。お前は?」


青ヶ屋:「うどん」


霧谷:「うどん。トッピングは無しか」


青ヶ屋:「まぁなぁ、うどんは天かすとネギだけで充分美味しいんだって」


霧谷:「お前っていっつも素うどんだよな」


青ヶ屋:「お前の前でうどん食ったのは今日が初めてだっての。あぁそういやあれ、聞いた?」


霧谷:「一限の後のすげぇ音か?」


青ヶ屋:「そうそう、何とミネちんが怪我したんだと」


霧谷:「保健室行きか」


青ヶ屋:「うん、飯食ったら見舞い行く?」


霧谷:「おう」


0:保健室


霧谷:「お邪魔しま〜、嶺原、居るか?」


嶺原:「いる〜、野次馬か」


青ヶ屋:「そゆこと。どしたのその怪我」


霧谷:「頭包帯ぐるぐる巻きとか、ベタだなお前」


嶺原:「いじるないじるな、ちょっと転んだだけだから」


青ヶ屋:「ドジくせぇ〜」


霧谷:「くっせ」


嶺原:「うるさい」


霧谷:「あんま騒いじゃ悪いし戻るわ」


嶺原:「お〜、失せろ失せろ」


青ヶ屋:「…」


霧谷:「青ヶ屋?行かねぇの?」


青ヶ屋:「あぁ、ちょっと次のテストの事で話があってさ」


嶺原:「?」


霧谷:「おっけ〜、そんじゃまた後でな」


青ヶ屋:「おう」

0:廊下

霧谷:「…今日の会話全部聞き覚えあるぞ。あいつらこんなボキャ貧だったか。」


霧谷:(N)そう、で。この次は、学校の四不思議を話してる奴らがいて…


霧谷:「…あのさ、赤マントに会いに行くって、マジで言ってるんですか。そんなの存在しないと思う(けど)」


青ヶ屋:(食い気味に)「キリちん?」


霧谷:「…ん?」


青ヶ屋:「なんで下駄箱見てポケ〜っとしてんの。何回みてもラブレターは入ってないよ」


霧谷:「あれ。青ヶ屋?嶺原はもういいのか?」


青ヶ屋:「へ?ミネちんならまだ来てないと思うけど」


嶺原:「おはっす、お前ら」


霧谷:「嶺原、保健室はどうしたんだよ」


嶺原:「…?青ヶ屋、こいつどうしたの」


青ヶ屋:「さぁ。下駄箱に熱烈な視線向けるくらいにはイカれてる」


嶺原:「なになに霧谷、もしかして寝不足?」


霧谷:「…あ、あぁ。多分そうかもしんねぇ。寝てない自慢でもやるか」


嶺原:「おぉいいぞ。じゃあ俺から」


霧谷:「あ、待って待って、当てていい?」


嶺原:「あ?いいけど」


霧谷:「昨日寝たのは深夜の三時!二時間くらいしか寝てない!」


嶺原:「おぉ…いや、まぁ昨日はちゃんと11時には寝てたんだけどな」


霧谷:「あぁ、そう」


青ヶ屋:「なんでお前そんなデッキで寝てない自慢しようとしたんだ」


嶺原:「嘘つき八兵衛って言うだろ」


青ヶ屋:「は?」


霧谷:「…」


0:食堂


青ヶ屋:「やっと昼休み〜、腹減った。キリちんは〜、と」


霧谷:「おう青ヶ屋、今から飯か」


青ヶ屋:「おう、キリちんも今からっぽいな。何食う?」


霧谷:「うどん」


青ヶ屋:「キリちんもうどん?俺も今月小遣いピンチでさ、うどんにしようと思ってた」


霧谷:「ってことは素うどんか」


青ヶ屋:「エスパーかよ、きも。おばちゃん、俺うどん。トッピング無しね」


霧谷:「俺も同じので」


青ヶ屋:「そういやキリちん、聞いた?」


霧谷:「嶺原が保健室行ったんだろ、飯食ったら見舞い行こうぜ」


青ヶ屋:「耳早いなぁ、おっけ」


0:保健室


霧谷:「お邪魔しま〜、嶺原、無事か」


嶺原:「無事っちゃ、まぁ無事だな」


青ヶ屋:「いや無事じゃねぇだろ。どしたのその怪我」


嶺原:「ちょっと転んだだけだ」


青ヶ屋:「ドジくせぇ」


嶺原:「うるさい」


霧谷:「まぁ無事そうで良かったわ、あんま騒いじゃ悪いし戻るな」


嶺原:「お〜、失せろ失せろ」


青ヶ屋:「…」


霧谷:「青ヶ屋、行くぞ、ちょっと話したいことがあるんだ」


青ヶ屋:「あぁ、後でいいか?俺もミネちんに話があってさ」


嶺原:「?」


霧谷:「わかった。そんじゃまた後でな」


青ヶ屋:「おう」


0:廊下


霧谷:「いや。いやいやいや。どう考えてもおかしい。夢で見たのかってくらいハッキリ分かる、どういう話振ってくるのか、とか。

霧谷:で、この後学校の四不思議を噂してる奴が来て、予鈴のベルが鳴って…」

霧谷:(N)少し嫌な予感がして、直ぐに保健室に戻った


0:保健室


霧谷:「青ヶ屋、嶺原、ちょっと話…が」


青ヶ屋:(N)霧谷の視界に、彼は居なかった。その代わりに、よく見知った顔が、床に転がってた


霧谷:「…ちょ…っと、待て。嶺原?おい、首、お前、なんで」


霧谷:「死んでる?」


青ヶ屋:(N)予鈴のベルが鳴った


0:間


青ヶ屋:「キリちん?なにポケ〜っとしてんの」


霧谷:「うわぁあっ!」


青ヶ屋:「わっ。ビックリした。なんだよ急に、ラブレターでも入ってたか」


霧谷:「青ヶ屋…?青ヶ屋!!よかった、その、なんか、よくわかんねぇんだけど、嶺原が死んでて!だから、まず、救急車呼んでくれ!先生も、あと、それから」


青ヶ屋:「おいおい何言ってんのキリちん、どういうギャグ?」


霧谷:「ギャグじゃねぇんだって!!本当に、嶺原の首が、床に落っこちてて、それで」


嶺原:「おはーす、今日あちぃな」


霧谷:「嶺原!聞いてくれ嶺原、大変なんだよ、嶺原が死んでるんだ!いや、死んでるかは分かんねぇけど、多分、首が!」


嶺原:「ちょちょちょ、待て待て待て。なんで俺が死んでる事を俺に報告してんだ」


霧谷:「…嶺原?」


嶺原:「なんだよ」


霧谷:「…あれ…?なんだったんだ、さっきの」


青ヶ屋:「いつまで寝ぼけてんだよキリちん、教室行こうぜ」


嶺原:「玄関で寝るとかどんだけ睡眠に貪欲なんだお前は」


霧谷:「…あ、うん、そうだな…うっ。」


青ヶ屋:「キリちん?どうした」


霧谷:「おえぇぇええっ…ごほっ…!」


青ヶ屋:「ぉおいおいおい!キリちん!?」


嶺原:「ちょちょ、なんでいきなり吐いてんの!?あー、俺とりあえず先生呼んでくる!」


青ヶ屋:「おう、頼んだ、キリちん?大丈夫?」


霧谷:「おっ、え。だ、いじょ、ぶ、うっ。」


青ヶ屋:「大丈夫ねぇな、どうしたんだよ今日本当に」


霧谷:「今日…?ていうか、昨日、っていうか、その昨日も、あれ、あっ」


青ヶ屋:「キリちん?キリちん!おいおい!まじで大丈夫かって、おい!」


0:時間経過、保健室


霧谷:「……ここ、どこだ」


青ヶ屋:「保健室だよ、急に発狂して倒れたから何事かと思ったわ」


霧谷:「…そっか」


青ヶ屋:「熱とかは無いみたいだけど、とりあえず安静にって先生が言ってた」


霧谷:「おう、わりいな」


青ヶ屋:「今日はもう早退しろよ、とりあえずキリちんが目覚めて安心したし飯食ってくるわ」


霧谷:「え、飯って、今昼休み?」


青ヶ屋:「そうだけど?」


霧谷:「まじか、ちょっと、たんま、行かないでくれ」


青ヶ屋:「え。なんで?俺腹減ったよ」


霧谷:「頼む」


青ヶ屋:「えぇ…」


霧谷:「頼むよ青ヶ屋!」


青ヶ屋:「わ、わかった、分かったから落ち着けって」


霧谷:「あ、あぁ、すまん」


青ヶ屋:「いーよ。なんなら俺も昼休み終わったら帰ろうかな」


霧谷:(N)もしあれが夢なら、それでいい。いや、それがいい。嶺原が…死んでたのは昼休みの予鈴前…。あれ?今日は嶺原保健室来てないのか


青ヶ屋:「保健室何もねぇから暇だなぁ」


霧谷:「嶺原は!あいつどこ行ったんだ!」


青ヶ屋:「お?ミネちんなら今向かってるってよ。キリちんの見舞いする為に交代で飯食おうって言ってたのよ」


霧谷:「そ、そっか。」


青ヶ屋:「しっかしミネちん遅いな。これじゃどの道俺飯食えねぇじゃん」


霧谷:「え?」


青ヶ屋:「ほら、もうそろ予鈴鳴るもん。あと5分くらいしかない、まぁ五分あれば俺は食えるけどな」


霧谷:「あと、五分」


霧谷:(N)この五分で何も起こらなかったらあれは夢だったって事になる、なるよな?なってくれ。じゃないと困る


霧谷:「あと四分」


青ヶ屋:「やたらと時計気にしてんな、どしたの」


霧谷:「いや、別に」


青ヶ屋:「そうだ、帰りコンビニ寄ってこーぜ。ジャンプの新刊今日だ」


霧谷:「あぁ、今日月曜か」


霧谷:(N)あと三分


嶺原:「お邪魔しま〜。悪いなぁ青ヶ屋、先生に補習の連絡で捕まっちまってさ」


青ヶ屋:「ほんとだよ、せめて連絡よこせっての」


霧谷:「嶺原…。よかった、無事だったか」


嶺原:「おー、起きたか霧谷」


青ヶ屋:「つーかキリちんが無事だったか。って、逆でしょ普通」


霧谷:「あ、あぁ、そうだな、悪い」


霧谷:(N)なんだ、良かった。嶺原は死んでない、夢だった、本当に馬鹿らしい。そうだ、早退して三人でカラオケでも行こう、うん、なんか今日は、そういう気分だ


青ヶ屋:「ミネちん来たし俺トイレ行くわ」


嶺原:「お〜いってら」


青ヶ屋:「あ、そうだ、ミネちん、俺らこの後早退するけど。ミネちんも、な?」


嶺原:「強制かよ、了解」


霧谷:「カラオケ行こうぜ」


青ヶ屋:「キリちんさては仮病だな。まぁいいや、そんじゃまた後でな」


嶺原:「おう」


霧谷:(N)あと、二分


嶺原:「ったく、割と俺成績ピンチなのにあの野郎」


霧谷:「早退してもしなくてもテストの点数変わんねぇよ」


嶺原:「まぁ、そうな。そうだ、霧谷は青ヶ屋から例のアレ聞いた?」


霧谷:「例のアレ?」


嶺原:「あ、言ってねぇのか。じゃあいいや」


霧谷:「なんだよ隠し事か」


嶺原:「いやちげぇよ、そんな大した事じゃねぇし」


霧谷:「…え」


嶺原:「つーか保健室の椅子やたらと硬ぇのな」


霧谷:「嶺原、お前」


嶺原:「ん?ってあれ、霧谷どこ行ったの」


霧谷:「首」


嶺原:「首?」


霧谷:「それ、どうなってんだよ」


嶺原:(N)どういう意味だろう、と思い視界を探る、霧谷の声がする方向とは、真反対にある筈の窓に、俺の顔が映っていた


霧谷:(N)あと、一分


嶺原:「あれ、おい?霧谷?どこだよ、なあ?」


霧谷:「おい、おいおいおい、首、それ以上曲げたら」


嶺原:(N)窓の外に、誰かいる。あれは


霧谷:「嶺原!!」


嶺原:―――あ、霧谷、そこに居たか


青ヶ屋:(N)何かがちぎれる音が部屋に響いた。そしてそれは、床に落ちた


霧谷:「あ、あああっ、あああああ!!」


嶺原:(N)予鈴のベルが鳴った

0:間

青ヶ屋:「おーい、キリちん?聞いてる?」


霧谷:「…あれ」


青ヶ屋:「キリちん?キリキリちんちん?」


霧谷:「青ヶ屋」


青ヶ屋:「なに?」


霧谷:「昨日のジャンプ、どうだった」


青ヶ屋:「ジャンプの新刊は今日なんだなぁ〜。学生の月曜において唯一の楽しみだ」


霧谷:「…今日、月曜日なのか」


青ヶ屋:「そうだけど?水曜とか木曜は分かるけど、月曜日は間違えねぇだろ普通」


霧谷:「あーー、もう。訳、わっかんねぇ」


0:倒れる霧谷


青ヶ屋:「キリちん!?」


嶺原:「おはーっす…って、霧谷?どうした!?」


青ヶ屋:「なんか急に倒れた!」


嶺原:「はぁ!?熱中症か?とりあえず先生呼んでくる!」


青ヶ屋:「頼んだ!おい!キリちん!キリちん!!大丈夫かよ!」


霧谷:(N)ショックからなのだろうか、薄れゆく意識の中で、聞こえた


嶺原:(?)「おはよう。」


霧谷:確かに、あいつは、そう言った。ったく、今から気を失うんだっての

青ヶ屋:「おっすキリちん、おは」


霧谷:「…え?」


青ヶ屋:「ん?どしたの」


霧谷:「今、登校したところか?」


青ヶ屋:「そーだけど。待ち伏せするほど早い時間に登校できねぇよ俺」


霧谷:「今日、月曜か」


青ヶ屋:「おー。だりぃなぁ。月曜、まぁジャンプ出るからまだマシだけどな」


霧谷:「そうだな、はは」


嶺原:「おはーっすお前ら」


青ヶ屋:「よぉミネちん」


霧谷:「おはよう」


霧谷:(N)間違いない。俺達はこの月曜日を繰り返している。共通しているのは、今日の昼休み、予鈴のベルと共にこの時間に戻ってくる事。

霧谷:俺が今玄関に居る、って事は前回気絶した時そのまま昼休みが終わったんだろう。

霧谷:そして予鈴前に、必ず、嶺原が死ぬ。思い出したくもないが…


嶺原:「でさぁ〜。」


青ヶ屋:「なになに、寝てない自慢始まりそ?」


嶺原:「はい、俺深夜三時に寝ました〜!もうどうしようもなく眠い(です〜)」


霧谷:「嶺原」


嶺原:「ん、なんだよ、人が喋ってんのに」


霧谷:「首、大丈夫か」


嶺原:「はい?」


霧谷:「いや、大丈夫ならいいんだわ」


嶺原:「青ヶ屋、どうしたのこいつ」


青ヶ屋:「さあ?」


霧谷:(N)そしてどういう訳かは分からないが、俺以外は繰り返しの記憶を引き継げない。と言うより、月曜日が繰り返されているのを自覚していない

霧谷:…とにかくまずは、嶺原を助ける。休ま時間はずっと一緒に居て、異変が無いように見張ろう


嶺原:「おい霧谷、聞いてる?」


霧谷:「おう。そんじゃ、教室こっちだからな」


青ヶ屋:「また後でなぁ」


霧谷:(N)一限目が終わり、すぐに嶺原の居る教室に向かう


霧谷:「嶺原、居るか?」


青ヶ屋:「キリちん?ミネちんならトイレ行ったよ」


霧谷:「青ヶ屋?なんでお前ここにいるんだよ」


青ヶ屋:「え?そりゃあ、ミネちんと同じクラスだし」


霧谷:(N)どういう事だ…?2回目の時は俺と青ヶ屋が同じクラスだったのに…いや、それは置いとこう。まずは嶺原を探さないと。

霧谷:と思い立った瞬間、廊下からモノごっつい音が聞こえた


青ヶ屋:「うおっ、なんの音?」


霧谷:「…!しまった、霧谷はいつもこの時間に怪我して…あー、忘れてた、くそっ!」


青ヶ屋:「キリちん!?どこ行くの!」


0:廊下


霧谷:「嶺原ぁ!大丈夫かよ!」


嶺原:「…お、おぉ、霧谷か、ちょっと、階段で転けちまった」


霧谷:(N)できれば保健室には連れて行きたくない…!そういえば前々回は嶺原は怪我してなかったのか…。んん、考えててもしょうがない!


青ヶ屋:「キリちーん!」


霧谷:「青ヶ屋か、ちょうど良かった、嶺原が階段から落ちて死にかけてる!先生呼んでくれ!」


青ヶ屋:「えっ、ミネちんだっせぇ。わかった、すぐ呼んでくる!」


嶺原:「あいつ、多分俺の葬式でもああいうこと言うぞ、まじで」


霧谷:「笑えねーよ、先生来るまで喋んな」


嶺原:「お、おう」


霧谷:(N)その後、駆け付けた先生が保健室まで連れていってくれた。幸い、命に別状は全くないようだ

霧谷:そのご、二限目、三限目の休憩時間も嶺原を見張り続けた


嶺原:「あの、そのさ」


霧谷:「なに?」


嶺原:「いや、別に大した怪我じゃねぇんだから休憩の度に来なくてもいいんだぞ」


霧谷:「一応頭打ってんだぞ、見舞いくらいさせろ」


嶺原:「母ちゃんかお前は」


霧谷:「今だけはそんな気分だよ」


嶺原:「…今のは笑うところだぞ…」


霧谷:(N)そして問題の昼休み。


青ヶ屋:「やっと昼休み〜。腹減った」


霧谷:「青ヶ屋、居るか」


青ヶ屋:「いるいる、キリちん、食堂行こうぜ」


霧谷:「駄目だ、保健室に来い」


青ヶ屋:「えぇ、なんで…」


霧谷:(N)嶺原は前々回、誰も、何も触れていないのに死んだ。それを力づくで止めるなら俺一人では心もとない


青ヶ屋:「やだよー、俺腹減ったよキリちん。見舞いなんて飯食ってからで」


霧谷:「ダメだ、こい」


青ヶ屋:「じゃあ一人で行けって、そんなにミネちんが心配ならさ」


霧谷:「来ないなら引っ張ってでも連れていくからな」


青ヶ屋:「ちょちょ、痛いって、キリちん!どうしたのさ、なんでそんな熱くなってんの!」


霧谷:「青ヶ屋、頼む」


青ヶ屋:「…わかったよ、その代わり今度奢れよ」


霧谷:「いいよ、素うどんな」


青ヶ屋:「せめてえび天くらいはくれよ」


霧谷:「本当は欲しかったのかよ…まぁいいや、ありがとな」


青ヶ屋:「ん?おー。いいって事よ」


0:保健室


嶺原:「で。二人して飯も食わずに見舞いに来た、と」


青ヶ屋:「そうなんだよ、今日のキリちん何か怖くてさぁ、ミネちんからも何か言ってやってよ」


嶺原:「まぁ確かにな、霧谷、俺は本当に大丈夫なんだぞ」


霧谷:(N)ちげぇよ。お前の怪我を心配してんじゃねぇんだよボケ。お前が死ぬからだ


嶺原:「霧谷?」


霧谷:「あぁ、ま、打ちどころが悪かったりするかもしれねぇだろ。頭の怪我は怖いからな」


青ヶ屋:「キリちんはミネちんの母ちゃんになったの?」


嶺原:「もうそのボケやった、ウケなかった」


青ヶ屋:「ありゃりゃ」


霧谷:(N)それから暫く三人で他愛ない話をして、時間を過ごした。そして予鈴の五分前


青ヶ屋:「キリちん、そろそろ戻ろーぜ、予鈴鳴るよ」


霧谷:「…青ヶ屋、今日早退しよう」


青ヶ屋:「え?」


嶺原:「おいおい霧谷、お前なぁ」


霧谷:「一応嶺原も病院行った方がいいと思わないか?」


嶺原:「そのつもりだけど、お前らまで付き合う事ねぇよ、まじで」


青ヶ屋:「キリちん、今日おかしいぞ。本当にどうしたの」


霧谷:「いいじゃん、嶺原に何も無かったら三人でカラオケでも行こうぜ」


嶺原:「いや、だから」


霧谷:「青ヶ屋、頼むよ。一生のお願いだ」


嶺原:「霧谷、一体なんでそんな拘るんだよ、そもそも」


青ヶ屋:「まぁ、たまにはサボってもいいかもな」


霧谷:「青ヶ屋…!」


青ヶ屋:「そこまで言うってことはキリちんの奢りだろうし」


霧谷:「あ、あぁ、奢ってやる!任せろ!」


霧谷:(N)本当は俺が奢って欲しいくらいだが、まぁいいか


嶺原:「青ヶ屋がそれでいいなら、いいんだけどよ」


青ヶ屋:「テストの点さえ落とさなきゃ問題ないっしょ。ミネちんはどうかしらないけど」


嶺原:「うるせ」


霧谷:「あ、そうだ、時間は…!」


青ヶ屋:「時間?」


霧谷:(N)思い出した様に時計を見ると、それと同時に予鈴のベルが鳴り響いた。


青ヶ屋:「…?」


霧谷:「…鳴ったよな、予鈴」


青ヶ屋:「鳴ったけど?」


霧谷:「今、昼だよな」


嶺原:「昼だな」


霧谷:「朝じゃ、ないよな」


青ヶ屋:「あーあ、こりゃミネちんよりキリちんの方が頭やばいかもな」


嶺原:「あぁ、ついでにお前も病院で見てもらえよ」


霧谷:「は、はは、いや、大丈夫だ」


青ヶ屋:「じゃあ早退届出してくるか」


霧谷:「あ、あぁ、その、青ヶ屋」


青ヶ屋:「わかってるって、キリちんのも一緒に出しとくよ」


霧谷:「ありがとう、ほんと、何から何まで」


青ヶ屋:「そんな感謝される事でもないと思うけどよ…そんじゃ、また後でな」


霧谷:「おう。はぁ〜、なんかどっと疲れた」


霧谷:「あ。そういやさ、嶺原が言ってた例のアレってなんだったの?

霧谷:ほら、あれだよ。お前ら2人だけで話してるっていう…あ。これ前の時の会話か、悪い、忘れてくれ」


霧谷:「…嶺原、聞いてんのか?」


霧谷:「おい、無視すんなよ嶺、原…」


霧谷:「………は?」

青ヶ屋:「おはっすキリちん。キリちん?聞いてる?なんでポケ〜っと下駄箱見てんの?いくら確認してもラブレターは入って(ないよ)」


霧谷:(無視して)「ああああああああああああああああああああああああああああ!!」


青ヶ屋:「うっっわ!!ちょ、キリちん!?なに、どうしたの急に!」


霧谷:「嶺原がっ!なんで、俺、ちゃんとあいつ、見張ってて、なのに、なんで、首」


青ヶ屋:「ミネちんが?え、なに?どういうこと?」


霧谷:「なんでっ!なんでなんでなんで!なんで死んでるんだよ!!」


青ヶ屋:「キリちん!落ち着けって!」


霧谷:「…え」


青ヶ屋:「もう、なんだよ朝っぱらから」


霧谷:「…朝か?」


青ヶ屋:「朝に決まってんでしょ、何寝ぼけてんの」


霧谷:「…嶺原は?」


青ヶ屋:「え?まだ来てないと思うけど」


嶺原:「おはーっすお前ら、何かすげぇ声してたけど何?もしかして喧嘩?」


青ヶ屋:「いや、なんかキリちんがさ」


霧谷:「嶺原!お前、なんで!」


嶺原:「え。なに?」


霧谷:(N)…違う、これは、また一周したんだ、また失敗したんだ。また駄目だった


嶺原:「…霧谷?」


霧谷:「二人に、言いたい事があるんだ」


青ヶ屋:「ん?なに、真剣な顔して」


霧谷:「俺は、もう何回も何回も、この月曜日を繰り返してる」


嶺原:「…」


霧谷:「もう、覚えてる限りでは五回も繰り返してる、その度に、嶺原が、死んでるんだ」


青ヶ屋:「…キリちん、あのさ」


霧谷:「だから、二人に協力して欲しいんだ。もう、繰り返したくない。嶺原の頭が、毎回、毎回毎回、落っこちたり、訳が分からない方向に曲がってたりして、もう、三回も、その光景を…おっえ……だから…」


嶺原:「はぁ〜。俺が?もう三回も死んでると」


青ヶ屋:「みたいだな。えーっと、どういうギャグ?」


霧谷:「嘘じゃない!信じてくれ、本当に今日、昼休みにお前が死ぬんだよ!」


嶺原:「おいおい、あんま玄関で」


霧谷:「もう見たくない!知ってる奴が死ぬを見るのって、すっげぇ怖いんだよ、気持ち悪いし、ドラマとか、映画で見るのと全然違うんだ!嶺原だってもう死にたくねぇだろ!?」


青ヶ屋:「キリちん!縁起でもない事大声で騒いでんじゃねえよ!」


霧谷:「あ。…青ヶ屋、信じてくれよ、本当に、今日、嶺原が…」


嶺原:「…」


霧谷:「嶺原は、信じてくれるだろ、お前の身の危険を言ってやってるんだぞ…」


嶺原:「すまん、信じられる話じゃねぇわ。それに朝っぱらから何回も死ぬ死ぬって言われると、流石に気分悪ぃよ。」


霧谷:「…」


青ヶ屋:「落ち着いたらちゃんとミネちんに謝りなよ、キリちん」


嶺原:「とりあえずもう教室行こうぜ、な?」


霧谷:「し、でも、んだな」


嶺原:「え?なに?」


霧谷:「じゃあ…死んでもいいんだな!?俺、お前の為に言ってやってんのに、それでいいのかよ!そういう態度取るのかよ!」


嶺原:「おい霧谷、落ち着けって、まじで」


霧谷:「そうやって俺がおかしいみたいな目で見てんじゃねぇって、あー、もういいよ、勝手にしろ!そんで死ねよ!今日の昼にさぁ!死ねよ!」


青ヶ屋:「霧谷!」


0:霧谷を殴りつける青ヶ屋


霧谷:「っ…!なにすんだよ!てめぇは嶺原が死んでも良いって言うのか!!いいんだろうな!お前はそういう奴だ!」


青ヶ屋:「もういいって。」


霧谷:「…は?」


青ヶ屋:「笑えねぇよ。それ」


霧谷:「…あぁ、分かった。」


青ヶ屋:「なにが」


霧谷:「お前だろ、嶺原殺してるの」


青ヶ屋:「キリちん、いい加減にしろって」


霧谷:「思えば最初っから怪しかったよ、お前は。嶺原の見舞いに行った時に「テストで話がある」っつってよぉ。んなわけねぇだろ嶺原の馬鹿がテストの話するわけねぇだろ、馬鹿だぞ!?」


青ヶ屋:「何言ってんだ?何の話だよ」


霧谷:「そんで二人きりになったあと、嶺原を殺したんだ、そうだよ、それ以外にも怪しい事ばっかりだ!嶺原が死んだ時、お前は毎回俺の前から姿を消してやがった!どうやって殺したかはしらねぇけど、なんかトリックがあるんだろ!言えよ!」


青ヶ屋:「っ!痛いって、キリちん…!」


嶺原:「おい!やめろって!シャレになってねぇぞ!」


霧谷:「冗談なもんかよ!こいつのせいで、何回も、何回も嶺原が死んだんだ!てめぇのせいだぞ、青ヶ屋!言え!どうやったんだ!」


青ヶ屋:「わっけわかんねぇっ…!離せって!」


霧谷:「っ…!あぁ、もう、邪魔くさいな。もうこれでいいわ」


嶺原:「霧谷…?お前それ、野球部のバットだろ、戻せって」


青ヶ屋:「あー、そう。まじでどうかしちゃったわけ」


霧谷:「うるせぇなぁ!黙ってろよ人殺しが!」


嶺原:「霧谷ぁ!!」


青ヶ屋:(N)鈍い音と、鋭い痛みが通り抜けて、頭から何かが飛び散ったのが分かった。それしか、分からなかった

霧谷:(N)…やっちまった。気が動転していた。何も信じられなくなった。それだけでやっていい事じゃない。俺は、自分の手で、青ヶ屋の頭をカチ割った。最低だ、最低だ、最悪だ。人を、殺したんだ

霧谷:もう感覚的に分かる。また戻ってきたんだ。そしていつもみたいに青ヶ屋が俺に話しかけてきて、俺は下駄箱を見つめていて、ラブレターが無いことに落胆していて

霧谷:…もう、どんな顔して会えばいいか、わかんねぇ

0:間

嶺原:「おはっす、霧谷」


霧谷:「…え」


嶺原:「お?どした、霧谷。下駄箱にラブレターでも入ってたかよ」


霧谷:「…嶺原?」


嶺原:「え?うん、そうだけど?」


霧谷:「…そっか、青ヶ屋は…まだか?」


嶺原:「あおがや?誰だそれ」


霧谷:「…は?」


嶺原:「?」


霧谷:「マジで言ってんのか、お前それ」


嶺原:「マジもなにも、そんな奴居たか?この学校に。あおがや、なんて珍しい苗字なら聞いたことくらいある筈だからな」


霧谷:(N)もう、意味が分からない、何もかも、どうでも、よくなってきた


嶺原:「霧谷?大丈夫かお前」


霧谷:「なぁ、ちょっと聞いてくれないか」


嶺原:「なんだよ真剣な顔して」


霧谷:「真剣な話なんだ」


嶺原:「…うし!場所移すか」


霧谷:「…いや、歩きながら話そう。なるべく早く、吐き出したい」


嶺原:「おう。で、なに?」


霧谷:「嶺原はさ、俺が殺人犯だ。って言ったらどうする」


嶺原:「えーっと、例え話だよな?」


霧谷:「…」


嶺原:「…おう。俺はな、まず一発ぶん殴るぞ」


霧谷:「…それから?」


嶺原:「なんでそいつを殺したのか聞く。」


霧谷:「…うん」


嶺原:「でー、まぁその後は…カラオケとか、映画とか、とにかく連れ回すな。って、これじゃ警察にバレるか」


霧谷:「なんで」


嶺原:「空元気でもないよりマシだろ。そんでまぁ、未成年だけど酒とか飲んでみたりしてよ、泣き酒させる」


霧谷:「…」


嶺原:「で、これからどうしたいかを最後に聞くかな」


霧谷:「…どうしたいか…」


嶺原:「お前は、どうしたい」


霧谷:(泣きながら)「…やり直したい。取り返しのつかない事をしたけど、俺は、出来るんだ、今は、何故か会えなかったけど、でも、何回もやれば、きっと。だから、会って、謝って、友達で居てくれたことに、感謝したい、精一杯、心から…

霧谷:…そんで、もう、全部、諦める」


嶺原:「…そうか。」


霧谷:「うん」


嶺原:「よーーし、そんじゃあ歯ァ食いしばれよ、霧谷」


霧谷:「え?」


嶺原:「言ったろ。まずぶん殴るって」


霧谷:「…あぁ。…ふぅ〜。頼む!思いっきり!」


嶺原:「任せろ!ちゃんと予鈴が過ぎるまで気絶する様に、全力で、本気でぶん殴ってやる!」


霧谷:「え…?お前、今」


嶺原:「おぉらぁ!」


霧谷:「ぶっご!」


0:間


嶺原:「…もう一度。もう一度、大切にな」

霧谷:「はぁ…ねみぃ。」


青ヶ屋:「おっは。今日も眠そうだな、キリちん」


霧谷:「毎朝毎朝こんな眠くちゃな。児童虐待だ、多分これ」


青ヶ屋:「児童相談所にでも訴え出るか」


霧谷:「いい。それよか下駄箱にラブレターでも入っててくれた方が嬉しい」


青ヶ屋:「あっそ。あぁ〜眠い。」


霧谷:(N)俺は霧谷。どこにでもいる極々普通の高校生だ


青ヶ屋:「教頭、今日も禿げてる。はは、ウケる」


霧谷:(N)ウケてねぇだろ。こいつは青ヶ屋 。中学の頃からの友人だ


青ヶ屋:「お。ミネちんだ」


嶺原:「ん。おー、霧谷に青ヶ屋じゃん、おは。」


霧谷:「おはよう、相変わらず朝はブサイクだな」


嶺原:「うるさいな。つーか暑い、暑すぎるって、最近とか特にさぁ」


霧谷:「今日は最高気温38度らしいぞ、今年の夏、本気出しすぎ」


嶺原:「わかるわぁ。毎年最高気温が更新されてる気する」


霧谷:「それ」


青ヶ屋:「あぁ〜眠い。」


霧谷:「お前そればっかりな」


嶺原:「昨日何時に寝たの」


青ヶ屋:「寝てない自慢大会始まりそ?」


嶺原:「はい俺、深夜三時に寝ましたぁ〜、もうどうしようもなく眠いですぅ、寝てねぇ〜。まじで、全然、まったく、二時間しか、寝てねぇ〜。」


霧谷:(N)こいつは嶺原。青ヶ屋と同じく、中学からの仲だ。これ以上語ることもないような、そんな奴。


嶺原:「そんな全然寝てない可哀想な俺に何か言うことあるくない?」


青ヶ屋:「ウケる」


嶺原:「乗ってこいよクソヶ屋」


青ヶ屋:「霧谷とやれよカス原」


嶺原:「は??何だこいつ可愛くない。霧谷とやっちまったら俺が勝つやろがい」


霧谷:「は?俺が勝つが?午前10時まで肌の調子最悪最低の嶺原なら小指で勝つが?」


嶺原:「はいもうずっと顔いじり、グレます。グレました。釘バットで学校中の窓カチ割るからな、責任取れよ」


霧谷:「あぁいいよやってやらぁ!骨ひとつ残らねぇと思えよてめぇ!」


青ヶ屋:「はいはい終わり終わり、俺ら教室こっちだから、また後でな。嶺原」


嶺原:「はいよ〜」


霧谷:(N)こうして教室に逃げ込み、授業が始まるのを待つ。

霧谷:授業が始まれば真面目な高校生だ。ちゃんと先生の話を聞き、ノートをとる。偉い。

霧谷:一限、二限、三限、四限と授業をこなし、待望の昼休みが来た。


0:食堂


青ヶ屋:「いやぁ〜腹減った。何食う?キリちん」


霧谷:「俺は生姜焼き定食。お前は?」


青ヶ屋:「うどん」


霧谷:「うどん。トッピングは?」


青ヶ屋:「いらないいらない、天かすとネギだけで充分美味しいんだって」


霧谷:「えび天とか欲しいだろ」


青ヶ屋:「いらねぇって。お前あれか、うどん初心者か」


霧谷:「遠慮すんな、奢ってやるよ」


青ヶ屋:「え!まじで!」


霧谷:「まじまじ、大マジ」


青ヶ屋:「太っ腹〜!あーそういやあれ、聞いたか」


霧谷:「ん。なにを」


青ヶ屋:「一限の後の休憩、すげぇ音したろ」


霧谷:「あー。嶺原が怪我したんだろ」


青ヶ屋:「そうそう、ウケる」


霧谷:「ウケねぇだろ」


青ヶ屋:「見舞い行く?」


霧谷:「おぉ、飯食ったら行くか」


青ヶ屋:「はいよ〜」


0:保健室


霧谷:「お邪魔しま〜、嶺原、居るか?」


嶺原:「いる〜、野次馬か」


青ヶ屋:「そゆこと。どしたのその怪我」


霧谷:「頭包帯ぐるぐる巻きとか、ベタだなお前」


嶺原:「いじるないじるな、ちょっと転んだだけだから」


青ヶ屋:「ドジくせぇ〜」


霧谷:「くっせ」


嶺原:「うるさい」


霧谷:「あんま騒いじゃ悪いし戻るわ」


嶺原:「お〜、失せろ失せろ」


青ヶ屋:「…」


霧谷:「冗談だよ、嶺原、次のテスト落としたらやばいんだろ?」


青ヶ屋:「え、知ってたのか」


霧谷:「結構有名だぞ、嶺原退学だ〜ってさ」


嶺原:「まじかよ!どこから漏れた」


霧谷:「水くせぇって。俺も勉強会付き合うよ、つっても青ヶ屋ほど賢くねぇからあんま力にはなれねぇだろうけど」


青ヶ屋:「んなことねぇだろ、嶺原、いいよな?」


嶺原:「おー、当然だ、逆に俺が感謝しなきゃな」


霧谷:「ちゃんと赤点回避したら奢れよ」


青ヶ屋:「ミネちん、ゴチ〜」


嶺原:「おー、任せろ任せろ。んで、ここで躓いてんだけど」


青ヶ屋:「…ミネちん、これ、掛け算だぞ…マジで言ってんの…?」


嶺原:「七の段って覚えづらいんだよなぁ」


青ヶ屋:「よく高校入れたな」


霧谷:(N)あれから、もう何百回とこの午前中を過ごしている。けど別に不満は無い。

霧谷:青ヶ屋は嶺原に勉強を教える為に保健室に残っていただけだし、今では犯人なんて居ないんじゃないかと思っている


嶺原:「そういや四不思議のひとつめ、日替わり新聞だっけか、その記事にさぁ」


青ヶ屋:「真面目にしろミネちん、今そんな与太話してる場合じゃないから」


霧谷:(N)繰り返す日々の中でわかった事もある

霧谷:一つ、高校の敷地内から出ると、強制的にリセットされる。

霧谷:二つ、学校内の誰かが死ぬと、その時点でリセットされる。誰も死なない場合、必ず嶺原が死ぬ

霧谷:三つ、各ループ毎で、存在しない生徒が現れたり、またその逆で存在が消える生徒も居る。名前が変わっていたり、クラスや学年が変わっていたり、今日が月曜日である事以外は様々なイレギュラーが発生する


嶺原:「お〜い、俺も腹減った。お前ら何食ったの?」


青ヶ屋:「キリちんは生姜焼き定食で、俺はうどん。しかもキリちんにえび天奢ってもらった」


嶺原:「生姜焼きいいなぁ、食いてぇ」


青ヶ屋:「ミネちんが転ぶからだろ」


霧谷:(N)最後に、四つめ。学校の四不思議は全て事実だった。


嶺原:「俺早退する、もう無理、授業受けれない」


青ヶ屋:「五限目はまぁいいけど、六限は出とけって。ミネちん自分の立場わかってる?」


霧谷:(N)毎日同じことの繰り返しだが、慣れてしまえば悪くない。嶺原には悪いが

霧谷:どうにもならないんだ。これしかないんだ、良い友人と変わらぬ日々を過ごせる。ただそれだけで十分だ


青ヶ屋:「だからぁ、何回言えば分かるんだよ、ここはAだって、数字にはならないの」


嶺原:「数字にしねぇと解けねぇだろ」


青ヶ屋:「ミネちんは中学校で何を習ったの?」


霧谷:「青ヶ屋、そろそろ予鈴が鳴る。戻ろう」


青ヶ屋:「え?まだ五分もあるじゃん、真面目だなキリちん」


嶺原:「いいよ、後は自習しとくから。さんきゅな、二人共」


青ヶ屋:「ん。そんじゃ、また後でな」


霧谷:「また、後で」


嶺原:「なぁ、霧谷」


霧谷:(N)出来れば、友人が死ぬ所は見たくない。予鈴さえなってしまえばまた会えるんだ

霧谷:だからもう、全部どうでもいい


嶺原:(?)「それも、一つの答えだと思う」


霧谷:(N)稀に嶺原が、俺と二人きりの時だけ意味ありげな事を呟くが

霧谷:俺はいつも、聞こえていない振りをする


嶺原:(?)「だから俺は、お前を責めない」


霧谷:予鈴のベルが鳴った。

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