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drug ROCK someday  作者: みなみくん
3/3

後編

「まだやってんの?」


アルコールを傾けてカウンターに並んで座るそいつはあたしに聞いた


「変わらずね」


自傷気味に笑った



「出よっか」


「え?」



少し強引に外に連れ出された


「どっちも冷ました方がいい」


あたしの手を取り、目的地も伝えず歩き出す


「善悪どーこー話すつもりは無いから、ただ、、」


優しい瞳で、少し悲しそうに


「別に悪いもんじゃない。無くたってやっていける」


こいつはもう辞めたんだ


理解した


夜風にあたり、しばらく歩くとマンションに着いた


1度寝た男だ


別に気にするほどでもない


あたしはそのまま、そいつの部屋へと上がった


軽くだけど


と、手料理を振舞ってくれて


あれからの事や他愛のない話をした


首に傷をつくった女とは離れ、街を離れ昼間の仕事をしてまたこの街に戻ってきた


BARで働きながら、DJやモデルも少しやってるらしい


まともが偉い訳じゃない


でも、やってみて、踏み込んでみて合うならそれはそれでいいんじゃないか



今度はあたしが抱きしめられて眠った



深く眠ってしまったようで、起きたら昼をすぎていてテーブルに食事と書置きがあってそいつはいなかった


それと、鍵



これたら16時に、東口

鍵は持ってて


短くそれだけ書かれていた


偶然か、自宅は近い


作っておいてくれた食事を済ませ自宅に戻りシャワーを浴び着替えて東口へ向かった



「ごめんね。撮影あったから先でちゃって」


どう見ても、そっち側になったそいつは小さく手を振り小走りであたしにかけよった


そいつに連れられ、心療内科に向かった


色々聞かれ、いくつか薬を出されクリニックを後にした


「少しだけでいい、こっちを試してみて欲しい」



そういって、あたしに手のひらを向けた


あたしは残った普段のドラッグをそいつに渡した


それはゴミ箱へ消えていった


「今日仕事?」


「うん」


「何時くらい?」


「2時くらい」


「俺もそれくらいに上がるよ、家で待ってて」


それから、そんな日が続いた


仕事が終わるとそいつの家で食事を取り


出かけても散歩がてらドン・キホーテや


そいつが落ち着くって言うのんびりとしたBARくらい


あたしの物が日に日にそいつの家に増えていった



病院で出された薬を飲み抱きしめられて眠る


段々と心の中でなにかが変わっていった





時折そいつに頼まれて大したものでは無いけどモデルの撮影を手伝った


仕事でネットに顔晒してるから、特に抵抗はない


軽い気持ちだったけど、予想外に雑誌で見たと夜の仕事の客が増えた



気づけば、ドラッグからもロックからも遠ざかり


ごく普通のこの街の住人になっていた


病院の薬も稀にしか必要なくなった




20歳になった


もう、随分と昔のことのように感じて、自分の事じゃないみたいだった



昼間の撮影や配信の仕事も増え


夜の仕事も成績が伸び


仕事が終わればそいつと穏やかな時間を過ごす



全てがいつの日かの遠い出来事になった



「悪いもんでもないだろ?こういうのも」


手を繋いで抱きしめられるベッドの中


嬉しそうにそいつは言う




そうだね


満更でもないかもね



あたしは微笑みながら返した






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