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7.母親の記憶(side シャルロット)

私のお母様は私を産んですぐに亡くなったらしい。


だから私にはお母様の記憶が無い。

お母様の顔も肖像画でしか知らない。


だけど、ときどき夢を見る。

幼い私を抱き締めて微笑む女性。

絵本を読んでくれて庭で花冠を作ってくれて…優しいぬくもりをくれた人。


あれは…誰だったんだろう?


私にとって母親は肖像画で見る人より夢の中で微笑むあの人だった。





ある日、お父様が私の義母妹だと連れてきた子を見てすぐに分かった。

「貴女のお姉さまよ」と微笑むと恥ずかしそうに微笑んだミリアは夢の中のあの人ととても良く似ていた。



その日の夜、お父様は全てを打ち明けてくれた。

お母様が亡くなってから数年後、心を通わせたメイドが居たと。

だけどその人は突然、姿を消してしまい、やっと居場所が分かった時には亡くなった後で幼いミリアは住み込みで働いていたらしい。


「どうしても放っておけなかったんだ…もしシャルロットが反対するなら……」


「お父様、ミリアは私の妹です。これからは私達が、あの子を守っていきましょう」


「ありがとう…シャルロット…」



あんな小さな子が一人で生きていたなんて……。

きっと素敵な家族になれる…そう思っていたのにミリアは突然、姿を消した……。






「ミリアが居ないってどういう事なの!?」


昼過ぎにミリアが部屋に居ないと知らせが入った。


「あの…昼食をお持ちしたら…居なくて…屋敷中を探したのですが……」


時計は15時を過ぎている…。


「最後にミリアを見たのは何時なの!!」


メイド達は顔を見合わせて青い顔をしている。


「ミリアの世話をしていたのは誰だ?」


お父様が静かに聞くと二人のメイドが前に出た。


「朝食の時は、どんな様子だった?」


「……」


怒ってはダメ、冷静にならないと…。



「あの…お取り込み中、申し訳ないのですが…ミリアお嬢様の事でお耳に入れておきたい事が…」


料理長が申し訳なさそうに間に入ってきた。


「かまわないよ、話してくれ」


「お恥ずかしい話なのですが…ジンも朝から姿が見えなくて…たぶん、お嬢様と一緒に居るのではと…」


どうしてジンとミリアが?

お父様も不思議に思ったのか料理長に詳しく話を聞いている。


「ミリアお嬢様はジンに、とても懐いていて…」


料理長は急に言いにくそうにメイド達を見た。


「ジンが、お嬢様は虐められているのでは…と話していて…もしかしたら見かねたジンが連れ出したのかも……」


虐めですって?


「ミリアを虐めていたのは誰っっ!!」


「シャルロット、落ち着きなさい」


落ち着いてなど居られるものか!!

私の大事な妹を…。


「メイド長、ミリアの教育は貴女に任せていた。貴女はミリアの様子がおかしいとは思わなかったのだろうか?」


「そ、それは……」


メイド長は、しどろもどろで要領を得ない。


「はぁ…」


思わず、ため息を吐いてしまった。


「貴女、ミリアには『はっきり喋りなさい!!』と言っていたのに御自分は出来ないのね?」


ミリアは丁寧な言葉遣いを意識して言葉が詰まる時がある。

慣れてくれば自然と話せる様になるだろうから気にしていなかったけど一度、メイド長がミリアを厳しく叱っているのを見て、すぐに注意したけど私が見ていない所では日常的に叱っていたのかもしれない……。


「今は、ミリアを探す事を優先しよう…」


お父様が静かに言うとメイド達はホッとした表情を見せた。


「最後に一つだけ答えてくれないか、お前達はジュリアにも何かしていたのか?」


ジュリア…?

お父様はメイド長をじっと見ている。

メイド長は真っ青な顔をしてガタガタと震え出した。


「お前達の処分は後だ」


お父様が部屋を出ていったので後を付いていくと、お父様は私を優しく抱き締めた。


「かならずミリアを見つけるから安心しなさい」


ミリア……どうか無事で居て……。

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