6.出世払いにしてやるよ
ジンと一緒に近くの公園で朝の残りでお昼御飯にした。
「残り物でごめんな」
ジンは申し訳なさそうに言うけど充分おごちそうです。
「私、パン大好きだよ」
それに…何て言うか、ジンと一緒だと何でも美味しい。
恥ずかしいから絶対に言わないけど。
「お嬢は美味しそうに食うな、すげー可愛い」
「ゲホッッ!!」
ジンが変な事を言うからむせた。
「大丈夫か、お嬢!!」
ジンに背中を擦ってもらって水が入ったカップを渡された。
「う、うん大丈夫…」
「落ち着いて食べろよ」
「このお水どうしたの?冷たくて美味しい」
「今朝、宿を出るときに貰っておいたんだ。カップ買っておいて良かったろ?」
「うん、ありがとう」
冷たくて美味しいお水が飲めるのは、このカップのおかげなのだけど、平民育ちの私はやはりお金を気にしてしまう。
それに…昨夜の宿代も馬車の料金も全てジンが払ってくれてる。
このパンも……。
「そろそろ今夜の宿を探しとくか…」
お金の話は宿に着いてからの方が良いかな…。
外でする話では無いし。
ジンに手を引かれて歩くと綺麗な宿に着いた。
高そうな所……。
ジンは中に入るとさっさと部屋を決めてしまった。
昨夜より綺麗で広い部屋。
ベッドは、ちゃんと二つある…良かった。
「荷物を置いたら少し買い物をしに行こうか?」
そ、その前に。
「ジン待って!!」
大きな声を出してしまった。
「あの…お金の事なんだけど……」
「俺は金持ちだからお嬢は気にしなくて良いって言ったろ?」
「でも……」
ジンにお金を出してもらう理由が私には無い。
「それなら出世払いにしてやるよ」
「出世払い?」
「まぁ払えなくても許してやるから安心しな」
な、何よ!!バカにして!!
ジンは私の頭を撫でて笑ってる。
「一生かけてでも返すもん!!」
思わず向きになって言うと…。
「一生って…お嬢…意味分かってて言ってるのかよ…」
ジンが赤い顔してブツブツ呟いてる。
「絶対、返すからねっっ!!」
「分かったよ、約束な」
それからジンと一緒に商店街に行った。
少し遠くの町に来ただけなのに珍しい物が沢山あって楽しい。
「フード付きマントか…」
ジンがマントを見ながら悩んでいる。
ジンは格好良いから何でも似合いそう。
「ねぇ羽織ってみてよ」
私に言われてジンがマントを羽織ると、とても似合っていた。
「ジン、格好良い」
思わず心の声が出てしまった。
「本当?お嬢が、そう言うなら買っちゃおうかな…」
ジンは少し照れている様で可愛い。
ジンは背が高くて少し近寄り硬いイメージがあって、よく誤解されているけど本当は優しくて時々、可愛い所があるんだよね。
私は、そういう所が大好き。
ジンはマントを購入した様でニコニコして戻って来た。
「お嬢の分」
ジンは私に薄いピンク色のマントを掛けてくれた。
ん?んん?
涼しいんだけど…?
「ねぇ、これって…」
「体温調節してくれるから快適な旅ができるぞ!!」
また魔道具じゃん!!
節約旅の予定だったのに……。
本当に一生かけて返す事になるかもしれない。