4.守りたい存在 (side ジン)
とりあえず荷物を取りに戻るか…。
あの抜け穴があれば見つからずに出入りできるし問題は無いだろう。
しかし、お嬢が家出か…。
階段から足を滑らせたと聞いた時は、いつものお転婆で転んだのかと思っていたけど久しぶりに裏庭で会った時、お嬢の様子が少しだけおかしかった。
メイド長を始め他のメイド達からも嫌がらせを受けているのではないかと思っていたが…まさか突き落とされた…?
嫌がらせで階段から突き落とされたのでは洒落にならない。
打ち所が悪ければ最悪、死んでいてもおかしくない。
殆どの時間を厨房で過ごす俺にはメイド達からお嬢を守ってやる事は不可能に近い。憶測だけでは旦那様に報告する事も出来ない。
どうした物かと思っていたら大きなバッグを抱えたお嬢が庭を歩いているのに気が付いた。
さすがにこんな時間に大きなバッグを抱えて散歩って事は無いだろう……。
気づかれない様に後をつけると、お嬢は植え込みの中に姿を消した。
え?えー?
お嬢、何処に行った?
まさか隠しドアがあるとは…。
まぁお陰様で、こうしてバレずに屋敷に戻ってこれたわけだけど…。
着替えは3日分くらいあれば良いだろう。
後は俺の相棒。
厨房に取りに行くか…。
見回りに見付からないように行かないとな。
まぁ見つかっても適当に言い訳して謝れば許してくれるだろう。
厨房には誰にも見付からずにたどり着けた。
「お世話になりました」
誰も居ない厨房に頭を下げた。
居心地の良い職場だったけど、お嬢を一人で行かせる訳にはいかないからな。
さて宿に戻るか。
お嬢、大人しく寝てるよな…。
少し不安になって急いで宿に戻ると、お嬢は毛布にくるまってソファで眠っていた。
ベッドを使えば良いのに。
眠っているお嬢を抱き上げると想像以上に軽かった。
こんなに小さな身体で色んな物を背負い込んで……。
お嬢をベッドに寝かせると頭を撫でた。
お嬢は頭を撫でられるのが好きみたいでよくすり寄ってきていた。
「これからは俺が守ってやるからな」
俺も少し眠ろう。
さっきまで、お嬢が寝ていたソファに横になると疲れていたのか、すぐに眠りに落ちた。
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