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1.前世の記憶

お母さんが死んで宿屋で住み込みで働いていると私の父親だと名乗る貴族が私を迎えに来た。


「探したよ。さぁ一緒に行こう」


不安が無いと言えば嘘になるけど、お母さんが死んで独りぼっちだった私は、その人の手を取った。











あぁ急がないと…食事のマナーが悪いと言われてメイド長に厳しく指導されていたら遅くなってしまった。


ジンの休憩時間は短い。

急がないと間に合わなくなる。


良かった、まだ居た。

裏庭のベンチにジンの姿を見つけると嬉しくて心が軽くなる。


「ジンッッ!!」


「また、そんなに走ってメイド長に叱られるぞ」


「あの人は私を叱るのが趣味なのよ」


何をしても叱られるのだから、もう諦めた。


「お嬢は逞しいな」


「下町育ちだからね」


威張って胸を張るとジンは笑って私の頭を撫でた。


私はジンの大きな手が大好き。

もっと撫でて欲しくてジンにすり寄るとジンは、すぐに私から離れた。


「もう休憩時間が終わるから。また明日な」


頭をポンポンと軽く撫でてジンは屋敷の方へ歩いて行った。


私が必要以上に近づくとジンは離れる。

いつもの事なのに胸が痛い。



私も、そろそろ部屋に戻ろう。

遅くなると、またメイド長に叱られてしまう。


自室へ戻る為に階段を上がっていると前からメイドが二人歩いてきた。

本来なら私が上がるまで降りてきてはいけないのだけど、この屋敷の使用人は私をお嬢様と認めていないので気にせず降りてくる。

階段ですれ違うだけなら別に気にしないのだけどわざとぶつかってきたりするので注意しないといけない。


メイドの足がスッと延びてきて私を転ばせるつもりなのだと思い避けると避けた方で、もう一人のメイドが私にぶつかってきた。


「あっっ」


バランスを崩した私はそのまま階段から転がり落ちた。

大きな音と共に転がり落ちた私は、激しい痛みと共に意識を手離した…。







『主人公の義妹ムカつく!!』


これは誰だろう?


『シャルロットが可哀想、ミリア早く『ざまぁ』されれば良いのに!!』


ミリア……私…?



「ミリア…?」


ゆっくり目蓋を開けるとお父様とシャルロットお義姉様の姿があった。


「良かった…ミリアが階段から足を滑らせたと聞いた時は心臓が止まるかと思ったわ」


足を滑らせた…。

あのメイドが、そう証言したのね。

本当の事を言っても誰も信じてくれないだろうから黙ってる。


「今日は、ゆっくり休みなさい」


小さく頷くとお父様は私の頭を撫でてお義姉様と一緒に部屋から出て行った。




目蓋をゆっくり閉じて、さっきの夢を思い出す。


主人公シャルロットの義妹、悪役令嬢ミリア。


ここは私が前世で読んでいた小説の世界なのかもしれない。


ミリアは、お義姉様の全てを欲しがり優しいお義姉様はミリアに全てを差し出す…。

愛しい婚約者まで……。


このままだと私は家族を不幸にしてしまう。


私を探して引き取ってくれたお父様も受け入れてくれたお義姉様も不幸にするだけなんて嫌だ。



ミリアがシャルロットの婚約者と出逢うのはミリアの16歳の誕生日パーティー。



私の誕生日は半年後…。

それまでに、この屋敷を出ていかないと。



私は14歳まで下町で暮らして来たのだから、またその生活に戻るだけ。


また住み込みで働ける場所を探そう。

大丈夫、今まで一人で生きてきたのだから平気。


ただ、ジンの事だけが心残りだった……。


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