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銀色の髪のエルフ

「ショーユですか!ずいぶんと癖のあるものをお探しですね。やはり銀色の髪の一族にとっては、懐かしいものですか」


商人ギルドの受付嬢は、俺の髪を見ながらニコニコとして答える。

周囲の人々も、俺の銀の髪と銀の瞳に釘付けだ。


「ええと、銀色の髪……って何かな。今までの街でそんなこと言われたことがないけど……」

「あら、あなたも銀の髪なのにご存知ないですか?ショーユは『銀色の髪』の一族が作っているんですよ。今の当主は銀髪のドワーフと聞いています」

「はあ、俺はど田舎から来たもんで……勉強になります」


そう、俺はエルフの里を出たばかりのひよっこ商人だ。

エルフの森の品々を売りさばき、なんとか隣の国にたどり着いた。

初めての買付けとして目をつけた商品は、この街の特産品と聞いた。馬車を急かして、やっと今日、この日暮れ前に到着したのだ。


「俺は見ての通りエルフでして、生まれてからずっと人の少ない森の中で暮らしてきたんです。この国に来て()()を初めて知ったくらいで。その、エルフには好まれる味でした。銀髪の一族にはぜひお会いして、仕入れルートにしたいもんです。それでこの街まで」

「ええ、ぜひ!私どもも輸出が増えるのは嬉しゅうございます!領主の国策事業の一つではあるのですが、あれは好みが分かれますからね。輸出量も限られていまして。増産できれば工房主も喜びます」


菜食主義の多いエルフには、塩と豆と麹とで作られるシンプルながら味わい深い醤油は、好まれる味だと感じた。うまく売り出せば爆発的な人気となるだろう。が、あまり交易ルートは発展していないようだった。

エルフはその秘密主義ゆえ、俺がこの街まで出てくるのも、思い出したくないほど苦難の連続だった。うん、忘れよう。俺は今度こそ前向きに生きると決めたんだ。

ただ幼馴染のダークエルフには、醤油をプレゼントしたいから、仕入れたら一度帰ろうと思う。醤油は間違いなく彼女の好きな味だ、喜んでくれるだろう。


「工房のある場所までは、ここから馬車で鐘1つ分かかります。そこからは徒歩で、北へ歩いて鐘1つ。ちょうど、明日の朝は品物の受け渡しでギルドから人が出ます。商人へ商品の紹介をするならば案内してもよい、と事前に話がついていますので、もしよければ、ご同行なされますか?」

「え、そんな都合のいいこと」

「ありますよ。ただし、気に食わないことがあるとお客を追い返しちゃう偏屈ものでして、お客があまりつかないんです。ギルドも困っていまして、このような契約になっているんです。あ、ひとつだけ。入場前にあなたの身元が確かかどうか、悪意がないか、鑑定魔法を使用して確認します。それでもよろしいですか?」


随分と都合の良い話だと思ったが、鑑定魔法によるセキュリティの話を聞いて安心した。人物鑑定は俺も使える魔法だが、あれは相手の能力から犯罪歴、その時感じている好意から悪意までつまびらかにするヤバい代物だ。

そのセキュリティを通す、という話なら、こちらとしても余程のことがない限り大丈夫だろう。


「ずいぶん厳重なんだな。分かりました、もちろん構いません。あとは……偏屈ということは、俺という人物が気に入らなければ、商品を売ってもらえないということですね」

「あー、そうなりますね。まあもし当主と合わなければ、手数料はかかりますが当ギルドから卸しますから、心配なさらないでください。けれど、あなたは『銀の髪』ですから、問題ないと思いますよ」


俺の髪を見つめてニコニコと微笑む受付嬢から明日の集合時間を聞いて、その場を去った。

早速出発に向けて、宿で休養を取ろう。明日は初めての訪問商談になるんだ。


……


さて、お気づきかと思うが、俺は転生者だ。

前世で死んだ時はただ辛くて、こんな風に記憶を持ったまま、次の人生が歩めるだなんて思っていなかった。異世界転生とかラノベかよ、ありがとう、と、いないに決まっている神様に向かって祈ってしまった。

生まれた姿は見目麗しい銀髪のエルフ。初めて川の水を鏡にして自分の顔を見た時は、あまりに整いすぎていて見惚れ、そのまま溺れそうになった。文字通りのナルシストになるところだった。


「銀髪のエルフ、か。やっぱり珍しいんだな」


銀の髪、とりわけ銀の目と揃った者は、この街で顔パスのような働きをするらしい。

随分と不思議なものだ。

村の中でも自分の珍しさは分かっていた。村でも銀髪は俺ともうひとりしかおらず、俺たちが生まれたときはその珍しさに、ちょっとした厄介事が起きたほどだった。瞳まで銀色の俺は特に、神童として祀られそうになったほどだ。

まあ、村を出た今はもう関係がないが。


前世ではレストランのバイトで厨房に立っていた。その頃、さまざまな輸入食材や変わった食材を見たり、それをアレンジして新しい料理を生み出す料理長の腕に目を輝かせていた。

これから醤油が手に入る。醤油があれば、この世界の食材と合わせてどんな料理ができるだろうか。

明日の商談はしっかり成功させなければ。


「ステータス」


ブォン、と機械音が鳴る。これは俺にしか聞こえず、俺にしか見えないらしい。

さあ、明日の商談のために、まずは俺『フェル』のステータス偽装を始めよう。


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フェリシアーノ(須藤(スドウ) (ショウ)

年 齢:15歳

種 族:エルフ

職 業:商人見習い/手品師/詐欺師

スキル:鑑定眼(人)/アイテムボックス/転移魔法/調理/毒作成/毒耐性/詐欺/偽装工作

魔 法:探知/窃盗/麻痺

称 号:異世界からの迷人 商業神の加護 神童 詐欺師

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不穏なパラメータですが、ちゃんと正統派主人公する予定です。


別連載の息抜きに投稿しようと思います。よろしくお願いします。

先に書いた最終回を、なんとか表に出せるように頑張ります。

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