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第19話 

「ところで徐晃さんはどうしてここで流民と一緒に居るんですか?礼舞ライブを見に来られたのですか?」

 一刀は董衣の引き綱を引きながら尋ねる。董衣や花相は勝手についてきてくれる確信はあるが、人が多い所を歩く上でのマナーだ。

「大体そんな感じ……シャンは元々、都で役人をしてた。でも、朝廷の腐敗に嫌気がさして辞めた。礼舞を聴くと空を飛んでるような気分になれるから付いてきてる。あと、お金が無いから警備隊として働いて貯金してる」

「気分が高揚してフワフワするんですね。だったらお酒は呑む方ですか?」

「お酒は……二日酔いになるからそんなに。でも、本当はちゃんと自分自身で空を飛びたい」

「空を……ですか」

「フクロウみたいに空を滑り落ちたらどうだ?大きな翼のような物を付けて高い所から落ちれば結構飛べそうな気がするぞ」

「李梅ったら……強い風が途切れたら、きっと重すぎてすぐに落ちてしまうわ」

「……お兄ちゃん達は笑はないの?空なんか飛べやしないって」

「区星は笑はない。鳥に出来るのだから、真似をして学んでいけば人はいずれ飛べるようになると思う」

(李梅って炎帝とか蚩尤の末裔っていうだけあって、学者肌?発明家っぽいところがあるのかな?)

 区連の昔話では先祖が中原に来た時、蚕の養殖や農具の発明をしたりしていたと言っていたのを思い出す一刀。

「飛行機……は無理にしても、もしかしたら気球なら作れるかもしれないな」

「シャン、飛べるようになるの?」

「安全性とかどんな設計かとか色々課題がりますが、小さいのを作ったら、飛べるっていうのをお見せできるかもしれません」

 この時一刀が想像したのはタイの天燈上げの祭りだった。底部に火を灯し、紙製の袋で熱せられた空気を受け止めるシンプルな構造なら作れそうな気がすると言う程度の気持ちの軽い発言だったが、

「シャン、それ見たい!材料集めるから、作って、お兄ちゃん!」

 案内の脚を止めて一刀にしがみつく徐晃。徐晃は感情が薄いのかと一刀は思っていたが、そうではないようだ。

「は、はい……徐晃さんのご期待に沿えるよう頑張ります」

「ありがとうお兄ちゃん。あと、他の人たちも、シャンのことはシャンでもシャンフーでも好きなように呼んで。あんまり丁寧な言葉を使われると、役人だったときを思い出しちゃう」

「それは徐晃さん……徐晃の真名じゃないの?」

「真名とかそういうの、特に気にしないし」

「じゃあ改めて、俺は北郷一刀。真名の無い土地の出身だから、交換しようにもできないから好きに呼んでくれ」

「私は区連、真名は桜桃です。これからよろしくね、シャンフーさん」

「区星は区星。桜桃の妹で、真名は李梅だ」

「よろしく。お兄ちゃん、桜桃、李梅」

 上機嫌になった徐晃が案内を再開する。諸葛亮達の天幕はそこからすぐの所だった。




 一刀達は外で待ち、徐晃が諸葛亮達に挨拶して知恵を借りたい旨を伝えて一刀達を天幕に入れて良いか尋ねる。

 士官を求められる訳ではないのなら、と諸葛亮達からの了承を得てから天幕に入る一刀。中に居たのはやはりと言うべきか、二人の小柄な少女だった。

「わ、私が、諸葛、亮でしゅ!です……うぅ噛んだ……」

「私が、龐統です……」

 諸葛亮は緊張の為か名乗りを噛み、龐統はこれも緊張してか消え入りそうな声だ。

「私は姓が北郷、名は一刀と申します。日本という、こちらでは蓬莱の島と呼ばれる島国の産まれです。帰るための方策を探しているところを零陵の細梔……呂強様に保護していただきました。今は零陵から洛陽への納税のための軍に同行させて頂き、洛陽に向かっているところです。こちらは零陵の士官の区連と区星です。」

 徐晃は呂強の名が出てきたことに驚いたようだ。

(シャン、都で役人をしてたから細梔様と面識あるのかな?)

「区連です。苗族の出身で、区星は私の妹です」

「区星だ……です。丁寧な言葉はまだ苦手、です」

 諸葛亮と龐統は区姉妹の肌の色の違いについては何も尋ねなかった。気にしていない、というよりは下手に藪蛇を突きたくないといったところか。

「苗族の話は荊州でよく聞いております。歴史を見れば炎帝の時代から続くとか」

「清忠奉公とうたわれた呂強様の客人でしたら、信用に足るお方ですね……」

(細梔様の客人ってだけで信用される……これ、俺の振る舞い一つで細梔様の名を辱めることにもなるってことか。気を付けないと)

「諸葛先生、お兄ちゃん、ちょっと割り込んじゃってごめんなさい。呂強様、まだ生きておられるの?」

「袁紹様、曹操様達の取り成しで零陵の太守の代官という形でなんとか。処刑される寸前だったらしいんだけど、一族皆を連れて零陵に避難できたんだって」

「良かった。道理でお家が空っぽだった訳だ。趙忠に全部奪われたんだと思ってた」

「零陵で身分を証明するものがほとんどない俺を信じてくださった上に、食事と軒も貸してくれたんだ。もし呂強様と出会われなければと思うとぞっとするよ」

「文字もあまり読めなかったのを、区星と一緒に千字文を書いて勉強したな」

「そうそう。なんだか懐かしく感じるけど、まだ春から夏に変わるかどうかってくらいしか経ってないんだよな。中身の濃い時間だよ」

「都落ちしても呂強様は呂強様で安心した。お金が貯まったら、シャンも一度呂強様の所に行ってみるね」

「趙忠の刺客が来ないか警戒されてるから気をつけて」

「うん。そこはシャンもわきまえてる」

 徐晃の質問が終わると、それまで黙って聞いていた諸葛亮に尋ねられた。

「北郷様は東の島国の出身とのことですが、そうなら港で船を都合しようとか、文字も読めない状態で内陸に移動したのは何故ですか?」

 詰問ではなく純粋な興味の色が強い口調だ。一刀ははぐらかすべきか迷ったが、これも龐統に退路を断たれる。

「東の島国と言えば台湾か蓬莱の島。或いは南東の諸島部族です。台湾か諸島部族の出身とは思えない程、北郷様の立ち居振る舞いは洗練されています。蓬莱の島の徐福が中原風に教化した地域の出身とみるのが妥当だと思います。もしそうなら、遼東か青州の方が近いのではありませんか?」

 消え入りそうだった最初の挨拶と違い、聞き取りやすい声量でハキハキと喋る龐統。確定していることや純粋な興味の前には緊張せずに話すことが出来るのだろう。

「さすが知恵者で知られる諸葛亮先生と龐統先生です……全て話しましょう。不審なところはあるかもしれませんが、誓って嘘は言いません」

 自分がまるで違う世界から来ているということを一刀は話した。

 徐晃、諸葛亮、龐統は口を挟まず聞き入っている。自分なりに解釈しているのだろう。

「……何かの悪神や妖術使いの所為せいにしたくなる程、不思議な状況ですね」

「ですが、情報を集めるという点では洛陽や外来語を話す人を探すというのは有効だと思います。一つ気になるのが……」

「士燮様が何を考えているか、だよね雛里ちゃん」

「うん。士燮様の風評を考えれば悪いことはしないと思うんだけど……」

「士燮様の風評は今まで一貫して苗族や越南の人達寄りの政事まつりごとだったから、何か自治権を高めるような事だとは思うの。ただ情報が足りな過ぎて読み切れないな。水鏡先生なら会って話してみろ、っていうんだろうけど……」

 思考に詰まる諸葛亮達に徐晃が語る。

「士燮様と言えば、弟君の士壱しいつ様が司徒の丁宮ていきゅう様に招聘されて都で働いてるよ。到着した頃には丁宮様はもう退宮されていたんだけど、今でも後任の黄琬こうえん様に重く用いられてる。シャンが下野する前にも悪い噂も聞かなかった」

「丁宮様と言えば、一族の丁夫人が曹操様に見初められて寵愛を受けているとも聞きます。その仲介をしたとすれば、これからの中央への影響力も計り知れないものとなりますね……一体、どこまで時世を読んで絵図面を描いているか分かりません……」

「朱里ちゃんでも読み切れないなんて……」

(士燮様が噂だけで不気味な何かになっていく……でも、確かに俺に肩入れするメリットってなんだろう?三國志ではまったく出てこないんだけど、ここはもう俺の知る三國志じゃないだろうし……)

「でも朱里ちゃん、情報が足りずに見えない何かに怯えるのは良くないことだよ」

「そうだよね、雛里ちゃん」

「ところで私の故郷の日本にも伝わっている徐福なのですが、水鏡女学園にも徐福という方がいらっしゃると聞いたのですが……」

「徐福ちゃんですか?今は徐庶と名乗っています。確かに昔から身長が変わらないですが、それは私達もですし……」

「それだけで徐庶ちゃんが徐福と関係があるとは言えませんね」

「そうですか……まあ、いずれはお話を聞きに行こうかとは思いますが……」

「それなら私達からも紹介状を書いて……」

「朱里ちゃん。多分、私も同じことを考えているからいいよ」

「うん……ありがとう雛里ちゃん。もし、よろしければなのですが、私達も北郷様の旅程に加えては頂けませんか?」

「え、お二人が、私と一緒に洛陽へ?」

「はい。元々洛陽は見に行く予定でしたし、その後にまた荊州の水鏡女学園を尋ねるのなら一緒に行くのが良いかと思います。それに、私達だけでは会うことも出来ないような方々とまみえることも出来るでしょうから」

「女の二人旅だと心細いのもあるんでしゅ……あるんです」

「私としてはむしろ歓迎したいところですが、李梅と桜桃はどう思う?」

「私は良いと思います。李梅は?」

「何人か増えたところで補給計画に支障は無い。代わりに、区星に勉強を教えてくれるとありがたい」

「ねえおにいちゃん。それってシャンも付いて行ってもいい?呂強様の所に帰るんだったら、一緒に行けば路銀にも困らないかなって。もちろん、ちゃんと護衛として働くよ」

 一刀は区星が自分の役割を脅かす新参者を許容するか心配になったが、区星は徐晃を歓迎した。

「姉と区星だけだと一刀を守り切るには手が足りないかもしれない。シャンが来てくれるのは助かる」

「でしたら、私の真名を皆様に預けます。私は姓は諸葛、名は亮、字は孔明。真名は朱里です」

「私は姓は龐、名は統、字は士元。真名は雛里です」

「私は北郷一刀。字も真名も無い土地の出身ですのでお好きなようにお呼び下さい。朱里先生、雛里先生」

「私は桜桃です」

「李梅です」

「シャンフーでもシャンでも好きなように呼んで」

(今日だけであの徐晃、諸葛亮、龐統と真名を預けられることになるなんて……細梔様の信用あってのことなんだろうけど、責任の重さを痛感するな)

「あの、一刀様。よければ先生はやめて頂けませんか?まだ水鏡女学園の学生みたいなものですし、ちょっとこそばゆいです。それと、もっと皆さまと同じように気楽に話してください」

「わかったよ。雛里」

「へうっ……」

 名を呼ばれた龐統が赤面してモジモジする。

「雛里ちゃん、私以上に男の人に慣れてないから気にしないで下さい」

「あー、了解……」

 頼もしい味方が増えたと喜ぶ一刀だったが、

(見事に低身長の女の子ばかり集まったな……黄祖さんに言われた童女趣味、否定する材料が無くなって来たぞ……)

 StoryEditorで書いているのですが、龐統の龐が文字化けするので今後の地の文での名前を、真名を預かった時点で真名表記にするようにしようかと思いますが、どうなるかは分かりません。

 革命の魏の体験版を見たのですが、一刀さん馬に乗れなかったんですね。まあここの一刀さんは北郷氏の末裔として育ちは本貫の宮崎で、いきなり妻50人を連れてきても平気な家柄の出身という事で想像していましたので……

 次話投稿に合わせてオリキャラ一覧表を投稿しようと思います。あくまで筆者用に初期に考えていた事をベースにするので齟齬があるかもしれません。

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