おてんば令嬢オーレリアの華麗なる推理~名探偵は人の話を聞かない~
日曜日の午後昼下がり、オーレリア嬢は祖母の家で依頼者である近所の幼い男の子と会っていた。
「最近飼い始めた子犬がいなくなっちゃったんだ……」
その男の子は泣きそうな顔をしている。
「いなくなったということは誘拐……密売組織が関わってるわね!」
探偵ごっこに付き合わされている、この家の下宿人である大学生レヴァンは、子犬ならたまたま開いていたドアから外に出て行っただけでは、と思ったが面白そうなので突っ込むのはやめておいた。その代わりに、少年に必要な事を尋ねた。
「その子犬の特徴は?」
「えっと、茶色で首に青色の首輪をしてて、大きさはこのくらいで、好奇心旺盛だけど臆病なところもあって……」
男の子は身振り手振りを交えて説明する。
「分かったわ。さぁ、行くわよ、Mr.レヴァン」
こうして2人は捜索を開始した。
「誘拐なら、きっと人目のつかないところにいるはずよ」
「子犬の性格なら、最初は通りに出て興味深々に歩いてたけど、何かに驚いて逃げた可能性がありそうです」
2人はてんでバラバラな事を呟きながら、家と家の間の細い路地に入る。しばらく進むと、一軒の怪しい屋敷に辿り着いた。屋敷の周囲は乱雑に木や植物が生い茂り薄暗く、如何にも人の住んでいなさそうな雰囲気が漂っている。
「怪しいわ……ここにきっと密売組織のアジトがあるわね!」
そう言ってオーレリアは走り出した。
「え? 勝手に入ったら駄目ですよ」
レヴァンが慌てて後を追う。鬱蒼と生える植物をかき分け敷地へ入ると、傍でがさがさと音がした。2人がびっくりして振り向くと、白髪に白髭のもじゃもじゃな老人がぬっと現れた。よく見ると老人は両手で茶色い子犬を抱いている。彼女は気を取り直し、びしっとその老人を指さす。
「出たわね誘拐犯! 子犬を盗んで売り捌こうとしてるのはお見通しなんだから」
唐突な言葉に老人はキョトンとしている。
「あのー、すみません……」
レヴァンがその老人から話を聞いた。庭師である彼はここが荒れているのは、だたの家主の趣味で、庭の整備をしていたら子犬が泣いていたので拾い、ミルクをあげようかと思っていた事を教えてくれた。優しい人だ。
「テリー!」
2人は老人から子犬を預かり、依頼主の少年に渡す。子犬も少年に再会できて嬉しそうだ。
「今回も見事に事件解決したわね!」
ドヤ顔のオーレリアの横で、レヴァンは、まぁ密売組織は存在しませんでしたけどね、と心の中で突っ込んだ。