VTuber転生~異世界から高天原に配信してます~
このシリーズは設定厨が思い付いた設定を元に第一話分だけでっちあげてみた、というシリーズです。
設定だけなので続きとか考えていません。
もし、続きが読みたいという奇特な人が居たら、適当にパクって自分で書いてみてください。コメントに作品URL張っていただければ読みに行きます。
「おい、危ねぇな、前の車。あれ煽り運転だろ……ってうわぁぁぁっ!?」
それが、俺たちが現世で聞いた最後の声だった。
3D配信を売りにした弱小VTuberグループLive3Dプロダクション(略称L3Dプロ)の所属VTuberを乗せたマイクロバスは、そのとき高速道路を走行していた。
L3Dプロとして活動開始して2年弱、念願のリアルライブイベントがようやく実現し、現地入りするためにメンバー全員と3Dキャプチャ機材を積んだマイクロバスでライブ会場へ向かう道すがらの出来事だった。
前のトラックが煽り運転の車と接触して横転、それを避けるためマイクロバスは急ハンドルを切って、中央分離帯につっこんだとところで俺たちの意識は途切れた。
『聞こえますか、L3Dのみなさん? 今、あなたちの心に直接呼びかけています』
気がつくと、俺たちは乗っていたマイクロバスごと白い部屋の中にいて、女神の声が直接脳内に聞こえてきた。
思わず、(こいつ、直接脳内に……)とつぶやいてしまいそうになるが、すぐにそれどころではないことに気がついた。ライブは、悲願の1stライブはどうなったんだ?
『残念ながら、演者スタッフ全員が死亡してしまったため、ライブは中止になりました。状況説明なしにライブが中止になった後、事故情報がドラレコ映像付きで拡散して、5chのL3D板が凄いことになってます』
ドラレコ映像ってなんだよ……。
『後ろを走っていてギリギリ難を逃れた車のドラレコ映像です。マイクロバスが中央分離帯に乗り上げて、反動でリアルにマグナムトルネード決めて高架下に転落する様子がばっちり映ってます。見ますか?』
いや、見ますか、じゃねえよ。それじゃあここに居る俺らはなんで、あんたは誰なんだ。
『あ、申し遅れました。私、天照大御神といいます。日本の女神やらせてもらってます。実は私、L3Dプロの大ファンで、1stライブも凄い楽しみにしたんです。でもでも、こんなことになって残念で残念で……。
で、ちょうど異世界の女神から転生に回せる魂見繕ってくれって頼まれてたの思いだして、L3Dの皆さんに転生して配信続けてもえばつづきみれるって思い付いて、イザナミさんに頼み込んで事故直前の魂をコピーしてもらったんですよ。それでそれで……』
異世界転生……だと!?
その後、急に饒舌になった天照大御神が、ヲタク特有の早口でいろいろまくし立てたのだが、めちゃめちゃとっ散らかってたので要点をまとめる。曰く……
・ナーロッパ風異世界に転生し、冒険の様子を配信してほしい
・配信された映像は高天原で暇してる八百万の神々の貴重な娯楽となる
・視聴してる神様の託宣(という名のスパチャ)のポイントで冒険者のスキルとか新衣装とかが買える
・体は各自のVTuberとしてのアバターを再現、スキルやジョブはアバターイメージに合わせて設定してあるはず
・2名いたスタッフはL3Dメンバーにしか見えない式神になって配信やスキル購入とかの窓口になる
……ちょっとかんべん欲しい。特にVTuberのアバターが転生先の体になるってやつ。
俺のVTuberとしての設定は、ブラック客先に派遣された主任インフラ技術者で、見た目は徹夜明けのくたびれたサラリーマン、どう考えても、ナーロッパじゃあなんの役にも立たねぇ穀潰しだ。
仲間にはナーロッパファンタジー世界で強そうなアバターがそろってるが、一人だけ役立たず感が半端ない。
L3Dの所属VTuberは俺含めて全部で7名。
L3D立ち上げ時にデビューした1期生がJK巫女の朝霧舞子、JK侍の別所ひめじ、JKくノ一の鷹取摩耶の3名。
幕末JKバンドという名前で和ロックを中心とした音楽活動もしている。というか、ガールズバンドとしてインディーズ活動していたところをL3Dの社長が目を付けてVTuberとしてデビューさせたらしい。
巫女、侍、くノ一、どれも和風テイストのRPGなら普通に冒険者のジョブとしてありそうで、しかもパーティーバランスが良い。
そして、2期生は自称大物の女小悪魔ピンキー・ピクシー、陽気な美少女ピエロ(奇術師)のトリー・楠田、爆乳カウガールの松坂近江の3名。
2期生は公募で集めた中からオーディションで選ばれたメンツで、採用基準は音楽ができてキャラが濃いことだっため、こんなバラエティ豊かすぎる組み合わせになったそうだ。
統一感のないキャラ付けだが、魅了とか魔術とかテイムとかのファンタジー世界で有用なスキルを持ってそうだ。
ちなみに、俺は1期生デビュー後、2期生がデビューするちょっと前にデビューした。
もともとは2期生募集にあたって事務所の配信設備を強化するのに派遣された外注インフラエンジニアだったんだが、俺が学生時代にニコ生でゲーム実況をやっていたのを社長が見ていたらしく、その場でスカウトされて、派遣終了の翌日にVTuberデビューした。
アバターは素の自分に近い形がいいだろうということでインフラエンジニアなんて誰得な設定に落ち着いた。当然名前もやっつけで、徹夜現場をもじって玄葉哲也になった。
社長曰く、ゲームとしゃべりが上手くてイベントでMCもやってくれるスタッフ兼任のVTuberを探していたそうで、渡りに船だったらしい。
ジョブも有望で人気も高い1期生、2期生の6名がいれば、大体の冒険は何とかなるだろう。ただなぁ、全員が10代の美少女ってのが不安材料なんだよな。人生経験的なものもあるけど、ゲスに付け狙われそうで怖い。
唯一の大人の男である俺が役立たずでなければ、保護者として引率出来たし、なんならハーレム展開だと喜んでいられたんだろうけどなぁ……。
かくして、元VTuberによる異世界での配信生活が幕を開けたのだった。
VTuberをアバターの設定のまま異世界に転生させたら面白いんじゃないかなと思い付いて、設定回りをちょっとこねくり回してみました。
ナーロッパ転生では、変なスキル持ってたりするのがお約束ですが、どうしてそんなスキルとか持ってたりするのかってところの理由付けが大変ですよね。VTuberのアバターならどんな突飛な設定でもOK、一見使えないけど実は応用すると凄かった、みたいな都合の良いスキルを持っててもまったく違和感ありません。実に使い勝手の良い設定かと思います。
ちなみに、主人公が一人だけおっさんで、残りのメンバーがみんな女性でぱっと見ハーレムパーティーというのも、VTuberは女性キャラが圧倒的に多いんだから全然不自然じゃないですよね。
これだけお膳立てされていれば、良い感じの転生ファンタジーラブコメが出来るんじゃないかと思います。