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弱小球団が追い詰められてろくに実績もない第三捕手を監督にする話

このシリーズは設定厨が思い付いた設定を元に第一話分だけでっちあげてみた、というシリーズです。

設定だけなので続きとか考えていません。

もし、続きが読みたいという奇特な人が居たら、適当にパクって自分で書いてみてください。コメントに作品URL張っていただければ読みに行きます。

 昨年のプロ野球ジャパンオーシャンズリーグにおいて、静岡ユグドラシルズの成績はダントツの最下位であった。

 生え抜き主力選手が相次いでFAで抜けたのに加え、頼みの外国人助っ人がドーピング疑惑でシーズンのほとんどを出場停止処分を受けて帰国。さらにシーズン半ばに親会社が不正会計が発覚して経営陣が総入れ替えとなり、フロントが大混乱に陥ったせいで補強も難航。もともと強いチームではなかったが、逆風に逆風が吹き荒れまくった結果、44勝94敗6分という球団ワースト勝率をマーク。

 そんな中、チーム最年長だった白川もひっそりと現役引退を決める。


 白川のポジションは捕手、それも第三捕手と呼ばれる存在だった。第一捕手、第二捕手に続く予備の捕手としてベンチに控えて、ケガなどの不測の事態に備える役割である。その性質上、試合出場は極めて少なく、10年以上ほぼ通年で一軍ベンチ入りしていたにもかかわらず、出場試合数は通算でたったの22試合だった。

 筋金入りのユグドラシルズファンでなければ、名前すら知らない存在である。


 当人は引退後はブルペン捕手かスコアラーを希望していたのだが、球団フロントが提示した職種はなんと監督、それもいきなりの1軍監督であった。


 昨シーズン終盤での経営陣刷掃で急遽オーナーとなった木下は、白川にこういった。

「実は、昨年監督だった稲山くんからの推薦でね。

 現状、外部から有名監督を招へいするのは無理だし、来年度は球団のコネが及ぶ範囲内で監督を探さねばならない。その中で一番有望なのはだれか、という話を昨年度チーム首脳陣に相談したところ、稲山君をはじめとしたほぼ全員が白川くんを推薦すると言ってきてね……」


 親会社が不祥事で巨額の特別損失を計上したため、あおりを受けて球団予算も大幅減。昨年のシーズン結果も響いて首脳陣の年俸も大幅削減とならざるをえず、それを不満に思った現役首脳陣は軒並み球団成績の悪化を理由に契約を辞退したというのが実情なのだという。このため、ポストシーズンでの大型補強も絶望的だと木下は告げる。


「……わかりました。引き受けさせていただきます」

 白川の回答は一発OKだった。報酬額としては何の問題もない。一流選手のそれに比べればたいしたことない年俸だが、万年第三捕手だった白川にしてみれば大幅年俸アップである。

 しかし、ろくに選手実績のない白川に果たして選手が付いてくるだろうか……。最終決定下した急造の球団フロントですら、不安しかない苦渋の選択であった。


 スポーツ紙は無名選手の監督就任を、悪い意味の驚きを持って紙面を飾り立てた。ネット掲示板では『【悲報】追い詰められた静岡ユグド、置物を監督にしてしまう』などとはやし立てられた。


 翌年、シーズンが明けての2ヶ月、静岡ユグドラシルズは前評判通りの低空飛行で最下位争いを余儀なくされていた。

 ただ、6月を過ぎると一部のコアな野球ファンから、白川采配を評価する意見が出始める。

『圧倒的な戦力不足の中、むしろよくやっている。故障者もいないし大型連敗もない。昨年の今頃はもっと壊滅的な状況だった』

 そして、夏場が過ぎて各チーム疲労が見え始める頃、静岡ユグドラシルズは徐々に勝率を上げていった。特に、Aクラスの順位が実質決定してしまった後の9月の躍進は目を張るものがあった。最終的なリーグ順位は4位。惜しくも勝ち越しは逃したが、下馬評を大いに覆す大躍進と言っても良い結果となった。


 その年、ユグドラシルズの選手会長を務め、首位打者となった海老沢は白川監督についてこう語る。

「あの人は選手を引っ張って指導することはほとんどなかった。ただ、選手を影から支えてベストコンディションを維持することにかけてはトレーナーよりも有能だった。だから、故障者も出さず常にベストに近いコンディションをシーズン通して維持できたし、夏を過ぎても誰もバテてなかった。終盤の追い込みは、うちの選手だけ誰も疲れてなかったからできたことだ」


 チームのエースとして通年ローテーションを守り、リーグ3位の12勝を挙げた篠村は、監督について聞かれてこう答える

「監督の座右の銘を聞いたらなんてかえってきたと思う? 『無事是名馬』だってさ。なるほどと思ったね。シーズン序盤は余力があってもさっさと換えられてちょっと不満だったけど、終わってみたらそれが正解だったってわかるよ」


 白川を次期監督に推薦した稲山前監督はその理由についてこう語る。

「身体的には恵まれない、プロ野球選手としては最底辺だったが、野球センスは超一流だった。体調管理がいつでも万全でベストコンディション維持してるから、いつも突然の起用だったのにそこそこ良い結果も残してるんだよ。あいつの通算出塁率知ってるかい? 実は6割超えてるんだよ。まあ、足が遅くてそれだけじゃ役には立たなかったけどな。

 人に教えるのも上手かった。ここ5年でユグドラで大成してFAで出てった連中はだいたい白川と仲が良くて、駆け出しの頃はもちろん、スランプに陥ったら熱心にアドバイスを受けていたよ。一軍ベンチにずっと残してたのだって、兼任コーチの仕事をやってくれてたからだしな」


 これは、シーズン終盤に猛烈に追い上げての逆転優勝を何度も演じ、差し脚の魔術師の異名を持つ、名監督誕生の物語である。


第三捕手から名監督に成り上がる話って、野球好きに受けるんじゃないかと思ってこんな感じの話を考えてみた。

それまで無名だった選手が指導者として才能開花させるパターンって、ざまぁものにも出来るし、成長ものにも出来るし、けっこうな万能設定だと思う。

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