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異世界の地、七光りの冒険  作者: 三笠 珠
ロステマ帝国編
61/69

52.異世界文化人類学

 学生の身である怜央・コバート・アリータ・テミスは必修とされている異世界文化人類学という講義を受けていた。


 教鞭を執るのは青肌の魔族、ノネミ先生だ。

さばさばとした人柄で生徒からの人気も高い。

単に講義が面白いということもあるが、生徒に寄り添い個別にも指導してくれるという教師の鑑でもあったからだ。


 今回の講義は『文化とは何か』という哲学チックな内容であった。

 ノミネ先生はマイク片手に経験談を語っている。


「私は過去に1万を超える世界でフィールドワークを行なっていましたけど、一つとして同じ文化の世界はありませんでしたね。なぜならその土地の生活様式、価値観、信仰、歴史など、複雑な要素から成るためです。今この場にいる生徒も色々な所からきていることでしょう。寮に入ってて、『えっ? こいつこんなことすんの?』とか、『この国のこんなところが珍しい』とかあったと思います。というわけで、スマホの専用アプリからそう言った異文化を感じた事件を書いて送ってください。送ってくれたものはスクリーンに表示されますからね。それじゃーはじめ〜」


 ノネミ先生の講義スタイルはプロジェクターを用いて映像を表示し、それを見ながら解説、意見を募るというもの。

 学園には講義用のアプリも用意されていて、学習には万全の体制が整っていた。


 生徒から送られた意見はタイムラグもなく表示され、順次画面を埋め尽くしていく。


「僕の国では慎重2メートルあるのが普通なんだけど、ここの人達は小さすぎる」

「カタツムリを食べている人が居て驚いた。よくあんなもの食えるなと思ったよ」

「物が高い。だけど同じくらい貰えるお金も多い」

「自動販売機が見当たらない。治安が悪いから?」

「生魚を食べようとしてたからはたき落として止めてやったのに怒られた。普通食べる? 生魚」

「奴隷が見当たらなくて変な感じ」



 などなど、其々(それぞれ)の思うことが流れていった。

 生魚のくだりを発見した怜央は隣のコバートを小突いた。


「おい、あの生魚ってお前だろ?」

「あ、わかった? テヘペロ!」

「いや可愛くないから」


――そう、日本で暮らしてた怜央は生魚を食べることに抵抗は無かった。

刺身が恋しくなった怜央はリヴィアに頼んで生食できる魚を調達して貰ったのだ。

あとはコバートの意見通りである。


 ある程度意見が出揃ったところでノネミ先生はマイクを構えた。


「そうね。毎年色々出るけど興味深いのも多いよね。食べ物に関する意見てのは鉄板でよく出るのよ。あと奴隷が居ない? てのは実は間違いで、少し前までは普通に居たしね。最近の法改正で取引出来なくなって、姿変えてるだけだったりします。他ので言うと『ハイテクすぎてついていけない』って意見も毎年多いんだけど、人によっては逆に『ローテクすぎ〜』って人もいるんだよね。価値観が違うってのはこういうことなんですねー。他には――」


 ノミネ先生は生徒からの意見をピックアップして、刺激的なものには解説を加えて返していった。

 一通り済むと総括に入っていった。


「まあ沢山意見出たけど、これだけ見ても自分のいた世界と違うところが多かったってのは皆あったんだと思います。ただ単に異文化と接して驚いた〜ってだけならいいんですけど、時としては命取りになるわけ。もし君達がお近づきの印として、敵意のないことを表そうとして握手しようとしたとする。だけどその世界ではその行為が最大級の侮辱行為だったなんてことも普通にあります。そういった場合相手側に理解を求めるのはまず難しい。だから広い世界を知る我々が合わせる必要があるって訳なんですよー。――だけどね、こういうのってやっぱ経験するのが一番なんだよね。だから皆には急だけど、来週のこの時間までにフィールドワークをやって貰おうと思います!」


 ノミネのその言葉に、教室はざわめきたった。

コバートもノミネの言いたいことを理解して、愚痴を零す。


「うーわ、まじか。こりゃ特別課題だぜ?」

「特別課題ってーと?」

「金にもならんつまらん依頼のことだよ。しかも先生(ひと)によってはレポート提出もある」

「あー(察し)」


 生徒間で憶測が飛び交う中、ノネミはマイクを叩いて注目を集めさせた。


「はいはい、うるさくならないよー。これから詳細を伝えるからよく聞いてくださーい。今回は初期割り班――つまり、寮で一緒になったメンバー毎にそれぞれ向かう世界を指定してあります。もし異能学部でこの講義取ってないって人がいたらその人抜きでも、協力を仰いでもいいです。そんで現地に行って『異文化を感じた出来事』について、2000字以上のレポートにして提出してください」


 この時怜央が横を向くと、コバートは顔を押さえて絶望の様を表していた。

どうやらコバートは、心底レポートという物が嫌いであるようだ。


 そんなコバートなど歯牙にも掛けないノネミは、レポートの例や書式設定などが載ったプリントをそれぞれに配布し、説明することでその日の講義は終わった。

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